自転車保険の義務化

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:自転車事故

新聞報道によると,京都市でも,他の近畿各府県に引き続いて条例を制定し,自転車に乗る場合に保険加入を義務付ける動きになっているようです。

「自転車の保険」と言われてもピンとこない方もいるかもしれませんので,少し説明します。

自転車に乗っていて,事故を起こした場合を考えます。

相手が自動車の事故の場合等,被害者になる場合ももちろん多いのですが,一方で,加害者として相手に損害を与えるケースもあります。

たとえば,歩行者とぶつかって怪我をさせた,物にぶつかって壊してしまった(自動車も「物」のひとつですので,自動車を傷つけた場合も同様です)等の場合,自転車側に非があれば,当然自転車の運転者には損害賠償義務が発生します。

なお,自転車の運転者が子ども(おおむね小学生まで)の場合は,子どもには責任がなく,親などの保護者に責任がある(親が子に代わって賠償しないといけないということです)とされます。

この損害賠償義務を保障(自動車に任意保険のように代わって支払うということです)するのが,自転車の保険です。

自転車に関する保険としては,自転車事故専用のものもあれば,「個人賠償責任保険」という名称で,自転車に限定せず,個人の生活の中で,損害賠償義務を負った場合全般に対応できる保険(但し,自分が自動車を運転している時の事故は,個人賠償責任保険の対象外です)とがあります。

今回京都市が検討している条例の中身が,「自転車専用の保険のみ」を指しているのか,「個人賠償責任保険も含めて自転車の保険」と言っているのか,詳細はわかりませんが,自転車の事故に対し損害賠償義務を保障してくれるという点では,どちらもほとんど変わりはありません(自転車の保険として販売していても,他の事故も含めて個人賠償責任に対応してくれる保険もあります)。

たとえ,自転車であっても,歩行者とぶつかれば,転倒などにより,骨折や,ひどい時には頭をうつ等して,最悪死亡や寝たきりなどの結果が発生しうるのです。

そうなると,賠償額は,下手をすると1億を超える可能性もあります。

そんなときに対応できるのが,自転車の保険なのです(但し,補償限度額が3000万円や5000万円等,低い場合もあります。その場合は,その金額を超える部分はご自身の負担となりますので,その点もご注意ください)。

そして,被害者にしても,自身に大きな損害が発生したにもかかわらず,加害者側に賠償する能力がなく,賠償を一切受けられないというのは,悲劇(悲惨な状況)というしかありません。

加害者にも被害者にもメリットがあるものということで,各地方自治体や大学・企業等が自転車を利用する場合は,自転車保険に加入することを義務付ける動きが加速しているのです。

私からも,自転車の保険の加入を,おすすめいたします。

なお,自転車の保険に対応するものとしては,自動車の保険や火災保険等に個人賠償責任にも対応できる特約を付与したもの,クレジットカードのサービスの一部として個人賠償責任保険があるものもありますので,それらについても補償される範囲を確認されるとよいと思います。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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