自賠責での後遺障害認定に不満がある場合は弁護士に相談を!(2)

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

自賠責の後遺障害認定に不満がある場合の具体的手続きを説明します。

1 自賠責保険に対し,異議申立てを行う。

  一度自賠責保険で出た認定に対しては,自賠責保険に対し,再考を促す異議の手続きをとることができます。
  この手続きは,一度だけでなく,何回も繰り返しすることは可能です。

  ただ,実際には,自賠責保険が一度出した認定を自分で変更することはなかなかありません。

  特に,異議の申立てにつき,何も追加資料がない場合は,よほどのことがない限り,変更してくれません。

  ですので,弁護士がついた場合は,病院に対し,カルテの開示を求めたり,主治医の意見書を追加する等して,できるだけ認定が変更されるように努力します。

  それでも変更されない場合が,数的には多いというのが,日ごろの実感です。

  よって,ご本人がただ単に「先の認定は不当である」というだけの異議を出しても,変更されることがほとんどないのは当然のことと思われます。

2 裁判所の訴訟で争う。

  自賠責の判断はあくまで「自賠責という一組織」の判断であり,それが確定しているものではありません。

  ただ,一方で,自賠責の判断を覆すことができるのは,日本では,裁判所の判断だけと言ってよいです。

  そこで,最終的には裁判所の訴訟手続きで,後遺障害の等級を争うことになります。

  訴訟手続きでは,裁判所にはできる限りの証拠を提出して,こちらが思う後遺障害の等級が認定されるように努力します。

  具体的には,自賠責に対する異議と同様,病院のカルテや主治医の意見書等です。

  裁判所は,被害者側が出す証拠や加害者側が出す証拠(被害者側の主張に反論するような医師の意見書が提出されたりします),さらに,当事者の尋問の結果等,すべての状況を考慮して,判断します。

  この判断については,自賠責の判断とおりとなることもありますし,また,自賠責の認定を超えて,後遺障害を認定してくれることもあります。

  「自賠責の認定が変更される可能性が何パーセントか」と問われると,「それはケースバイケースです」というしかないです。
  
  ただ,私の経験では,「少なくとも,自賠責の異議手続きよりは,裁判所のほうが,後遺障害を認定してくれやすい」ということは言え,「それなりに証拠が提出できる事案では,そんなに悲観しなくてよい程度の確率で,自賠責の認定は変更される」という考えは持っています。

  ですので,私が言えることは,「後遺障害の認定については簡単にあきらめることなく,訴訟での決着も視野に入れて弁護士に相談されるのが良い」ということです。

  なお,(1)でも述べましたが,裁判所での訴訟も自賠責の異議も,弁護士に委任しなくても,本人だけでできるものですが,事実上は,やはり弁護士に委任されるほうが,結果は良いと思います。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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