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笠中晴司

交通事故のトラブルを解決に導く法律のプロ

笠中晴司(かさなかせいじ) / 弁護士

丹波橋法律事務所

コラム

交通事故解決までの道のり~人身編(3)~

2013年5月24日 公開 / 2017年3月3日更新

テーマ:交通事故 実際の例など

コラムカテゴリ:法律関連

「症状固定」時点で何が決まるか。

 「後遺障害」の有無とその等級が決まります。

 「事故による後遺症」という言葉が一般的にはよく使われますが,損害賠償の実務では,「後遺症」という言葉は使うことはなく,「後遺障害」という言葉を使います。
   
 簡単に説明してしまうと,「後遺障害」とは,「事故による後遺症」のうち,「症状固定」した時点以降に発生する損害(大きなものは「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」,詳しくは次回)の賠償請求をできるだけの基準を満たしたものということになります。

 その基準は,事細かに決められていて,さらに,1級(一番重い後遺障害)から14級(「後遺障害」が認められるものの中では一番軽いもの,むち打ちなどで,痛みが残る場合は,後遺障害が認められるとしても,ほとんどは14級に止まる)まで,14段階に分かれています。

 そして,その等級により,慰謝料の金額と逸失利益の金額が決まってきますので,「後遺障害」の有無と,その等級の決定は,損害賠償の金額を決定するうえで,非常に大きな要素となります。

 その「後遺障害」の有無とその等級を決定するのが,「症状固定」の時点なのです。

 つまり,「症状固定」の時点での症状を検討し,その症状が「後遺障害」に該当するのか否か,該当する場合は,何級となるのかが,決せられるということです。

症状固定と損害額の算定

 損害額の算定は,「症状固定」した時点を基準に,その前の損害とその後の損害と分けて,算定していきます。

「症状固定」した時点を基準に,各項目の金額を決定するという意味は,「症状固定」の前に発生した損害と「症状固定」の後に発生する損害(将来分も含めて)と分けて,各項目を算定するということです。

 では,事例を挙げて,各項目につき,簡単に説明していきたいと思います。


  <設定事例> ====================
    事故日    平成23年1月1日
    症状固定日  平成23年10月1日
    症状固定までの入院日数 1か月 通院回数 60回
    後遺障害等級 12級
   ===========================

-------------------------------------
ア.症状固定日までに発生した損害
-------------------------------------
  症状固定日までに発生する損害の主なものは次のとおりです。

 ア. 治療費
     前記事例だと,入院および通院にかかった費用実費
 イ. 入院雑費
     入院する場合,いろいろな日用品を購入する必要があるかと思います。
     その費用を1日いくら(裁判だと1日あたり1500円認められるケースが多い)と概算して請求する
     ことができます。
 ウ. 入・通院慰謝料
     症状固定までの入院や通院の苦労,さらに,傷の痛みに対する精神的苦痛を慰謝するものとし 
     て,慰謝料が認められます。
     上記事例だと,裁判になると,160~170万円程度の慰謝料が認めらるケースが多いです。
 エ. 休業損害
     入院・通院のため,あるいは,怪我のため,仕事ができなくなった部分の休業損害につき,
     補償が受けられます。
     休業損害の算出には,その基礎となる収入と休業が必要だった期間とその程度が問題にな
     りますので,収入などにより,その金額は,大きく異なってきます。
 オ  その他
     通院などに要した交通費,付添看護が必要だった場合の費用等が認められるケースもあります。


----------------------------------------
イ 「症状固定」した後に発生する損害
----------------------------------------
 「症状固定」した後の損害とは,「後遺障害」があることにより,その後の生活や仕事の上でも不利益が残ることが予想それ,その予想に従って,発生する不利益を損害と認定して,賠償することです。

 ですので,いくら自身が「事故による後遺症がある」と考えていても,「後遺障害」の基準に満たない場合は,「後遺障害」があることを前提とした,損害賠償は受けられません。

 また,認定される等級により,その損害賠償の金額は大きく変わってきます。

ですので,交通事故の人身の損害賠償請求で,最も大きな問題となりやすいのは,「後遺障害の有無」と「その等級」と言ってもよいでしょう。

 極端な話,「後遺障害」がない場合はゼロとなるものが,14級と認定されただけで,慰謝料だけで,100万円以上損害が認められるのですから(これが12級なら280万円程度となります),その違いが大きいことは,すぐにご理解いただけると思います。

 さらに,逸失利益も加えれば,その影響は,さらに大きくなります。

 以下,簡単に説明します。

 ア. 後遺障害の慰謝料
     症状固定した後に,「後遺障害」が残るということは,その後,痛みや不自由さを背負っ
     た状態で生活していかないといけないということです。
     その痛みや不自由さに対し,慰謝料が認められます。
     
     12級だと,裁判では,280万円程度の慰謝料が認められることが多いです。

 イ. 逸失利益
     「後遺障害」があると,健康な時(事故の前)に比べて,100%の状態では働くことはできませ
     ん。
     ということで,その状態が,健康時(事故の前)に比して,「何%の状態」であるかということ
     を考え,その減額された部分を,「本来得られるべきであった利益」が「得られなくなった部
     分」=「逸失利益」として,補償されます。

     この「何%」を決めるのが,後遺障害の等級で,1~3級が「0%」(=働くことができない
     状態)とされ,100%の逸失利益が認められます。
     以下,4級で92%,5級で79%,(中略),12級で14%,13級で9%,14級で5%の逸失利益が認
     められるのが,原則です。

     ただ,事案に即して,最も適切な解決を求めるのが裁判ですので,上のような解決とならない
     ケースもあります。

 ウ. その他
     1~3級等の重い症状では,将来の介護費や家を改造しないといけなくなった場合の費用
     等が認められる場合もあります。

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