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笠中晴司

交通事故のトラブルを解決に導く法律のプロ

笠中晴司(かさなかせいじ) / 弁護士

丹波橋法律事務所

コラム

交通事故解決までの道のり~人身編(1)~

2013年5月8日 公開 / 2017年3月3日更新

テーマ:交通事故 実際の例など

コラムカテゴリ:法律関連

1 人身は特に初動が大切

 交通事故にあう。
 どちらに過失がある(多い,少ない)に限らず,「非日常的」かつ「あまり体験したことがないこと」なため,冷静な判断,そして対処は難しいです。

 しかし,最初に間違った対応をすると,その後が大変になることもありますので,冷静な対処をするよう,頑張るしかありません。


2 警察への通報が第一

 物損でも言いましたが,警察に通報しておかないと,後から,「事故の存在」自体を争われたり,怪我をしたのかどうかを争われたりします。

 警察に通報した場合,「交通事故証明書」というのを発行してもらえ,それがあれば,よほどのことがない限り,「事故の発生」と「当事者」は確定できます。

 逆に,「交通事故証明書」がない場合,たとえ,事故直後は,相手が「自分が悪い。」「責任を持つ」と言っていたとしても,その言葉を後日ひるがえして,「事故の存在」自体を争ったり,「事故の当事者ではない(私は関係ない)」というような主張をしてきた場合,「事故の存在」と「相手がその事故の当事者であること」を立証するのは,意外と難しいものです。

 よって,必ず,警察に通報して,後日「交通事故証明書」を発行してもらえるようにしておきましょう。

 あと,当然の話ですが,警察への通報は,交通事故現場からしてください。
 よく,「忙しいから,後から警察に行きたい」というような言い訳をする人もいますが,事故現場を一旦離れてしまうと,事故の存在自体の警察への説明も難しくなることがありますし,最悪,警察が事故の申告を受け付けてくれないこともありえます。

 いくら急いでいても,警察への通報は事故現場からしてください。


3 人身の届け出はできるだけ早く

 警察が事故現場に来たとき,警察がまず行うのは,「当事者の確認」と「怪我の有無の確認」です。
 
 警察は,交通事故を怪我人が出た「人身事故」と物損のみ発生した「物損事故」と2分類して処理しており,「怪我の有無の確認」は警察にとり,必須の仕事です。

 事故直後は,事故の興奮のため,痛みを感じないこともありますし,事故後,痛みが強くなることもあります。
 よって,そのような場合は,事故直後の警察への申告では,「怪我はない」と言ってしまうこともあります。

 ただ,その場合でも,痛みがある場合は,すぐに病院に行って,1回は診断を受けてください。

 そして,診断を受けて,怪我があるということになれば,できるだけ早く,警察に申告して,事故を「人身事故」に変更してもらってください。

 事故後,すぐに病院を受診していない場合,後日に病院で診断書をとっても,交通事故による怪我と認められないことがあります。

 その期間の限界は,事故後,2,3日(可能なら当日の受診がベスト)で,1週間も経過して,初めて病院に行くと,「交通事故による怪我」と認められない可能性が高くなります。

 また,警察への申告(申告には病院の診断書が必要です)も,遅くとも2週間以内くらいにしないと,警察は,「もう人身事故扱いにはできない」という態度をとることもあります。


4 「人身事故」となっていない場合のデメリット

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(1) 自賠責から治療費等が支払われない可能性がある。
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 原則的に,自賠責や相手方任意保険会社に対し,保険金を請求するには,「交通事故証明書」が必要です。
 そして,その「交通事故証明書」には,怪我のある「人身事故」か物損のみで怪我のない「物損事故」かの区別があり,それが,「物損事故」となっていると,自賠責は,被害者がその事故で怪我をしたことの立証を求めてきます。

 加害者側が協力して,被害者に怪我があったことを認めてくれればよいですが(その場合,加害者が自賠責に対し,所定の書式で書類を提出する必要があります),加害者と対立していたりする場合等,加害者の協力を得るのがムリな場合もあります。


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(2) 警察の実況見分がされない。
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 警察は,「物損事故」の場合,ごく簡単な確認しかせず,後日,警察に対し事故の状況や事故直後の当事者の話を確認しようとしても,「何も記録が残っていない。」ということになります。

 一方,「人身事故」となった場合,当日だけでなく,後日でも「実況見分」がされることがあり,その時の記録は,「実況見分調書」として後日,警察に照会して提出してもらうことが可能です。

 「実況見分調書」は事故直後の双方の主張(片側当事者のみの場合もあります)が記載されているはずですので,事故直後は,相手が非を認めていたにもかかわらず,後日,その発言を覆してきた時などは,「実況見分調書」で相手の主張が変わっていることを立証することも可能な場合もあります。

 ですので,警察の実況見分はぜひしてもらいましょう。

以下続編に続く。
    


  
  

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