【民法・不動産登記法】の改正要綱案
はじめに
相続があっても、魅力的な不動産でない場合、きちんと相続登記をしないで放置されることがあります。
そのような不動産では、登記から真の所有者が分からなかったり、分かったとしても連絡先が分からないということが起こります。
国土交通省の調査によりますと、登記簿の記録のみで所有者が判明しなかった土地の規模は、なんと九州の土地面積を上回るものだったそうです。
このような土地は、公共事業のための用地取得、森林などの管理、隣地所有者が雑草の繁茂などの迷惑を受けるなど、さまざまな問題を起こす原因となっています。
この問題は所有者不明土地問題とも言われ、政府で取り組むべき課題と位置づけられて、解決のために法制度が見直されることになりました。
法改正の二つの方向
法制度の見直しは、二つの方向から行われることになっています。
その一つは、所有者不明不動産の発生を予防することです。
そのため、現所有者が登記簿にきちんと記載されるように不動産登記法が改正され、一定の場合に土地の所有権を放棄して国に帰属させることができる法律が制定されました。
もう一つは、所有者不明不動産をスムーズに利用できるようにするための民法の改正です。
ただし民法の改正ですので、所有者不明不動産に限らず、不動産一般あるいは財産の全体が対象になります。
相続登記の義務化
不動産登記法が改正され、相続登記の申請が義務化されることになりました。
相続で不動産を取得した場合、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けられます。
正当な理由なく申請しなかった場合は、10万円以下の過料となります。
国庫帰属制度の新設
土地は値上がりするものという時代は去り、今では土地所有の負担が利益を上回ることも珍しくありません。
誰かもらってくれる人がいなければ、土地を一方的に放棄することはできません。
そこで、相続により取得した土地を手放して国に帰属させることのできる制度が新設されることになりました。
ただし、10年分の管理費に相当する負担金が必要である他、一定の条件について審査がされることになっています。
新たな不動産管理制度
所有者の分からない土地や建物は、適切な管理や利用がされず放置されがちです。
そのような土地や建物について、利害関係人の請求によって管理人を選任する制度が新設されます。
管理人は、裁判所の許可を得て不動産を売却することもできます。
遺産分割の時間的制限
現在、遺産分割について時間的な制限はありません。
そのため、亡くなった人の名義のまま不動産登記が放置される事態が生じます。
そこで、相続開始から10年を経過すると、遺産分割において特別受益や寄与分を主張できないこととされました。
このような主張をしたい相続人が主導して、遺産分割が促進されることを狙っています。
施行日
施行日は、相続登記の義務化については令和6年4月1日、相続土地の国庫帰属制度は令和5年4月27日、それ以外は令和5年4月1日からとなっています。