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【著作権】平成30年法改正:(3)

拾井央雄

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テーマ:法律アップデート

著作権
※2018年10月現在での記載内容となっています。「現行」との表記は、その時点での現行法を意味します。

電子計算機における著作物の利用に付随する利用(新47条の4)

改正法は、電子計算機における著作物の利用に付随する利用の場合の規定として、新47条の4を設けています。これは、新30条の4と同様、通常は権利者の利益を害さないと評価できる行為類型であるとして、柔軟性の高い規定とされています。

今回は、新47条の4について説明します。

新47条の4第1項の条文

新47条の4は、現行47条の4、47条の5、47条の8、47条の9を包括する規定で、1項と2項とが設けられています。

このうち新47条の4の1項本文柱書は、次のとおりです。

「電子計算機における利用に供される著作物は、
 次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を円滑又は効率的に行うために当該電子計算機における利用に付随する利用に供することを目的とする場合には、
 その必要と認められる限度において、
 いずれの方法によるかを問わず、
 利用することができる。」

そして「次に掲げる場合」として、

「電子計算機において、
  著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合
  又は
  無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合において、
 これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、
  当該情報処理を円滑又は効率的に行うために当該著作物を当該電子計算機の記録媒体に記録するとき。」
情報処理過程での記録(現行47条の8に相当)を1号に、

「自動公衆送信装置を他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、
  当該他人の自動公衆送信の遅滞若しくは障害を防止し、
  又は
  送信可能化された著作物の自動公衆送信を中継するための送信を効率的に行うために、
 これらの自動公衆送信のために送信可能化された著作物を記録媒体に記録する場合」
サーバー管理者によるミラーリング(現行47条の5第1項1号に相当)及びサーバー管理者による中継のためのキャッシング(同条2項に相当)を2号に、

「情報通信の技術を利用する方法により情報を提供する場合において、
  当該提供を円滑又は効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うことを目的として
  記録媒体への記録又は翻案を行うとき。」
インターネットサービスにおける事前の情報処理のための記録・翻案(現行47条の9に相当)を3号に、それぞれ規定しています。
    
新47条の4 1項1号  現行47条の8
       2号  現行47条の5 1項1号
         現行47条の5 2項
       3号  現行47条の9

ここでも利用の目的を「円滑又は効率的に行うため」と包括的な規定とし、また「いずれの方法によるかを問わず」利用できることとして、分散処理のように公衆送信を伴うものに対応できるようにしたと説明されています。

新47条の4第2項の条文

新47条の4の2項本文柱書は、次のとおりです。

「電子計算機における利用に供される著作物は、
 次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を行うことができる状態を維持し、又は当該状態に回復することを目的とする場合には、
 その必要と認められる限度において、
 いずれの方法によるかを問わず、
 利用することができる。」

「次に掲げる場合」として、

「記録媒体を内蔵する機器の保守又は修理を行うために
  当該機器に内蔵する記録媒体(内蔵記録媒体)に記録されている著作物を
  当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、
 及び当該保守又は修理の後に、
  当該内蔵記録媒体に記録する場合」
メモリー内蔵機器を保守・修理する際の一時的記録(現行47条の4第1項に相当)を1号に、

「記録媒体を内蔵する機器を
  これと同等の機能を有する機器と交換するために
 その内蔵記録媒体に記録されている著作物を
  当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、
  及び当該同様の機能を有する機器の内蔵記録媒体に記録する場合」
メモリー内蔵機器を交換する際の一時的記録(現行47条の4の2項に相当)を2号に、

「自動公衆送信装置を
  他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、
 当該自動公衆送信装置により送信可能化された著作物の複製物が滅失し、又は毀損した場合の復旧の用に供するために
 当該著作物を記録媒体に記録するとき」
サーバーのデータ滅失等に備えたバックアップのための記録(現行47条の5の1項2号に相当)を3号に、それぞれ規定しています。

ここでも利用の目的を、利用できる状態の「維持」「回復」と包括的な規定とし、また現行法で「記録」だけであったところを「いずれの方法によるかを問わず」利用できるとしています。
 
新47条の42項1号  現行47条の4 1項
      2号  現行47条の4 2項
      3号  現行47条の5 1項2号

なお、新47条の4においても、包括的な規定としたことに対応して、「ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」との但し書きが置かれています。

この新47条の4で、現行47条の8と47条の9とは削除されます。

実務的な影響

現行47条の5では、ミラーリング、バックアップ、キャッシングについて目的が限定されていました。
また、将来的に新たな付随利用のニーズが生じた場合、法改正がなければ対象になりませんでした。
今回、「これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を円滑又は効率的に行うために当該電子計算機における利用に付随する利用に供することを目的とする場合」と包括的な規定とすることにより、現行の限定に該当しない場合でも趣旨に合致する場合は対象とできるように改正されています。

また、現行47条の4の2項では「同種の機器と交換する場合」となっていましたが、これを「同等の機能を有する機種と交換」とすることにより、同等の機能を有する類似機種への交換の場合も対象となることを明らかにしました。

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拾井央雄
専門家

拾井央雄(弁護士)

京都北山特許法律事務所

エンジニア15年〜弁理士5年と弁護士としては異例の経歴を持ち、技術系分野に精通。知的財産や技術系法務のエキスパートとして数多くの事業者を支援。また自身が住職である立場から宗教法人のサポートも手掛ける。

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