【2020年著作権法改正】ダウンロード違法化の拡大
2018年5月に成立した改正不正競争防止法が、平成31年7月1日に施行されます。
今回の改正では、取引等によって提供されるデータに関して「限定提供データ」を定義し、これの不正取得等を不正競争として規定しました。
「限定提供データ」とは
「限定提供データ」は、法第2条第7項で定義されています。条文を掲げると、次のとおりです。
「7 この法律において「限定提供データ」とは、
業として特定の者に提供する情報として
電磁的方法により
相当量蓄積され、
及び管理されている
技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)
をいう。」
「業として特定の者に提供する情報」
「限定提供データ」の最初の要件は、「業として特定の者に提供する情報」であることです。
経産省作成の指針では、商品として提供されるデータや、いわゆるコンソーシアムで共有されるデータのことを指すとされています。
特許法等と同様に、無償で提供される情報であっても「業として」の要件が否定されることはないと考えられます。
「電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている」
「電磁的方法により」
この「電磁的方法」については、「(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。)」とカッコ書で説明が付されています。
したがって、紙にプリントされたデータの山は・・・限定提供データに該当しません。
「相当量蓄積され」
「相当量」ってどれくらいを言うんだろうというのは難しいですが、何かの貴重なデータを個々に対象にするのではなく、蓄積されることで不正競争行為からの保護に値する経済的な価値を有するに至ったデータを対象とする趣旨であるという方向で考えた方がよさそうです。
「管理されている」
指針では、外部に対する管理意思を要件とすることで、予見可能性や経済活動の安定性を確保するためと説明されています。
ただ、これは「特定の者に提供する」の前提とも言えると思います。ID・パスワードでの管理すらされず、誰からもアクセス可能なデータであったとすると、「特定の者に提供するデータ」であると主張しても通らないのではないでしょうか。
「技術上又は営業上の情報」
「技術上又は営業上の情報」という言い回しは、法第2条第6項の「営業秘密」の定義にも用いられています。同じ法律内の同じ文言ですので、同じ意味に解釈されるべきです。
「営業秘密」の定義の方では「事業活動に有用な」という文言が付されていますが、「事業活動に有用」でなければ「相当量蓄積され」に該当しないと言えますので、結局は同じ意味だと考えられます。
したがって、この「技術上又は営業上の情報」のうち、「秘密として管理されている」情報が「営業秘密」だという関係になります。
「秘密として管理されているものを除く」
「技術上又は営業上の情報」には、「営業秘密」が含まれることになります。そこで、ここから「秘密として管理されているものを除く」こととして、「営業秘密」を「限定提供データ」から除外しています。
もっとも、ID・パスワードで管理され、利用者に対して秘密として管理する義務が課せられていたとしても、それが例えば対価を得るために「特定の者に提供する」ための措置であるような場合は、「限定提供データ」そのものと言えます。このような情報は「秘密として管理されているもの」には該当しないことになります。
適用除外となる情報
「限定提供データ」については以上のような定義がされていますが、法第19条第1項第18号ロに、「無償で公衆に利用可能となっている情報と同一の限定提供データ」について、適用除外規定が設けられています。
「無償で公衆に利用可能となっている情報」
指針では、データの利用にあたって委縮効果が生じることに配慮したものとされています。
いわゆるオープンなデータを想定していますので、取得や利用に見返りが伴わない情報で、誰でもがアクセス可能な情報のことであり、その見返りは金銭の支払いに限らないとされています。
また、ここでは単に「情報」とだけ規定されていますので、電磁的データだけでなく、紙にプリントされたデータも該当すると考えられます。
「同一の限定提供データ」
ここでわざわざ「同一の」と入れているのは、実質的に同一な情報も含まれるとする趣旨であると考えられます。
指針では、統計データの一部を機械的に並び替えた情報や、オープンなデータを機械的に組み合わせた情報などが例として挙げられています。