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【2018年改正著作権法の施行】オンライン授業と著作権との関係

拾井央雄

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テーマ:法律アップデート

授業
従来から,学校教育の妨げとならないように,一定の基準を満たす場合には著作物のコピーが認められていました。
一方,著作物のデータを生徒や学生に送信することは著作権侵害となり,権利者の許諾を得る必要がありました。
ところが新型コロナウイルスの感染拡大で政府の一斉休校要請があり,オンライン授業に注目が集まるようになりました。
そこで,オンライン授業にあたって,個別に権利者の許諾を得ずに著作物を利用できる制度が急きょ施行されたことは,ニュースなどで知られているところです。
何がどのようになったのでしょうか。
【追記】2021-04-28:2021年4月1日から,「授業目的公衆送信補償金」が有料になりました。

2018年の改正と施行日

資料だとかドリルだとか、無断で著作物をコピーするのは原則として著作権侵害になります。
ただし、対面授業で使う資料としてコピーする場合は、これまでも無断かつ無償でコピーできるとされていました。
また、別会場へ同時配信して実施している授業のために送信することも、無断かつ無償でできることとされていました。
対面授業だけとされていたのは、対面授業だと、ある程度の人数制限がかかり、著作権者への打撃が大きいないと考えられたからです。

それ以外は著作権者の許諾が必要でした。
インターネットを使って授業をするというのが一般的ではなかった時代は、それでも大きな問題はなかったかもしれません。
しかし、時代は変わり、授業にもデジタル機器が導入されるようになりましたし,インターネットはほとんどライフラインになりました。
オンライン授業が現実になりましたが、資料を送信しようとすると許諾を得なければなりません。
しかし、個別に許諾を得るということになると、先生や学校はたいへんです。

それで2018年に著作権法が改正されました。
補償金制度を導入することにより、個別の許可をとらずにオンライン授業で著作物が利用できるような改正がされました。

この改正の施行日は公布日から3年を超えない範囲で定めることとされていたのですが、補償金額で合意が難航したため、制度開始のめどがたっていませんでした。
それが新型コロナによる休校要請があって、施行が前倒しされたということです。

難航していた補償金額については、とりあえず2020年度だけは0円としました。
それでひとまず論争を回避した、というところではないでしょうか。
そして2020年4月28日に、急きょ施行されることとなりました。

制度の中身としては,2018年改正著作権法を見ればいいということになります。

授業目的公衆送信補償金制度

改正の中身をできるだけひとことで言いますと、授業目的の場合に無許諾で認められていた行為を拡大した、拡大した部分については無償ではなく、教育機関から管理団体にまとめて補償金を支払うこととした、ということです。

いちいち許諾をとる必要はないが、無償ではなくて補償金の支払いが必要だということです。
そして、補償金はまとめて管理団体に支払っておけば、その管理団体が著作権者に分配してくれるというわけです。

行為が拡大されたこと以外は、従前と大きな変わりはありません。
対象施設は学校その他非営利の教育機関ですし、対象となる主体は教育を担当する先生と授業を受ける生徒や学生です。

利用目的の限度は、授業をするのに必要と認められる限度、ということになります。
著作権者の利益を不当に害しないこと、という要件も同様です。

対象行為

以前からできたのは、公表された著作物の複製と、著作物を利用して行う授業を遠隔地の会場へ同時中継するための公衆送信です。
このふたつは、無許可かつ無償でできます。

改正法により、個別の許可なく、授業で使用する資料や教材を生徒や学生に送信することや、生徒や学生がダウンロードできるようにサーバーにアップロードすることができます。
また、公衆送信された著作物を受信装置を使って生徒や学生に見せることもできます。

補償金は、公衆送信をする場合に必要になります。
公衆送信とは別に,モニターで生徒に見せる行為に補償金が必要になるわけではありません。

追記

2020年12月18日、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会の授業目的公衆送信補償金規程が認可され、2021年4月1日から補償金が有料になりました。
同規程によりますと、1人あたりの年額は、小学校120円、中学校180円、高校420円、大学720円などであり、5月1日の在籍者数を乗じて計算するとされています。
(2021-04-28)

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拾井央雄
専門家

拾井央雄(弁護士)

京都北山特許法律事務所

エンジニア15年〜弁理士5年と弁護士としては異例の経歴を持ち、技術系分野に精通。知的財産や技術系法務のエキスパートとして数多くの事業者を支援。また自身が住職である立場から宗教法人のサポートも手掛ける。

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