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佐々木保幸

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佐々木保幸(ささきやすゆき) / 税理士

税理士法人 洛

コラム

キャッシュフローの判断基準②

2012年12月13日 公開 / 2014年12月29日更新

テーマ:会社の経営

コラムカテゴリ:ビジネス

自前で事業を展開できる体質であるかどうかを示す数値が、フリーキャッシュフロー(FCF)です。FCFは営業CF+投資CFで表わされます(FCFには様々な計算方法がありますが、最もシンプルなものとして営業CF+投資CFがよく使われています)。FCFがプラスの会社は、事業で稼いだお金で事業を維持するため、借金に頼る必要がありません。
FCFについて整理すると、次の2つのことがいえます。
①FCFがプラスの会社は、借金を減らし続け、いずれ無借金化する
②FCFがマイナスの会社は、借金を増やし続け、いずれ経営破綻する
キャッシュフロー計算書を用いたマネジネントでは、FCFをプラスにすることを第一の目標にすべきです。まずは、営業CFをプラスにすることに全力で取り組み、投資はその範囲で計画するようにします。
営業CFのマイナスはP/Lの赤字と同じように「悪い」と考えてください。そして、投資活動の内容が、翌期以降の売上と利益を増加させるものであるかに目を光らせるようにしましょう。
ただし、現実には、スケールメリットが少ない中小企業が投資CFのすべてを営業CFでカバーできるか、という問題があります。投資CFとして集計されるものには「スポット的な投資」「経常的な投資」の2つがありますが、「スポット的な投資」は、工場や店舗の取得、大型の機械装置の購入、事業会社の買収など、不定期で金額の大きい投資です。このような投資を単年度の営業CFで賄うのは困難なので、FCFから除外しても構わないでしょう(FCFとは別の観点で、大きな投資に対しては、無借金の状態で潤沢な資金を保有している場合を除き、必要資金を全額、金融機関から借り入れるのがセオリーです。借入不足を起こすと、投資対象に既存の短期借入が運用され、資金繰りが悪化する恐れがあるからです)。
「経常的な投資」は、設備の修理、改良等で資産に計上して支出する資金、関係会社等に対する貸付金や保険積立金の増加など、比較的少額で毎期一定の金額が支出される投資です。
これらは、P/Lに表示されないため見逃されがちですが、キャッシュフロー計算書では投資CFとしてマイナス表示されます。経常的な投資は、営業CFで賄うべきであり、FCFに含めるのが妥当です。すなわち、中小企業にとって適切なFCFは「営業CF+経常的投資CF」であるというのが筆者の見解です。
このようにFCFの状況を把握したうえで、各論を分析するようにします。たとえば、P/Lの利益よりも営業CFが少なくなっているのはなぜか、といった点です。具体的な分析においては、キャッシュフロー計算書とP/L、B/Sのつながり、いわゆる財務3表に対する理解がある程度は必要になります。

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