【第1部】2026年度税制改正で賃上げ促進税制はどう変わるのか~見直しの全容とスケジュール~
はじめに
第4部では、人件費負担を吸収するための三位一体策として、客観的なデータに基づいた価格転嫁、IT導入による生産性向上、そして助成金などの公的支援の活用を解説しました。
最終回となる第5部では、これまでの内容を総括し、リスクを可視化する「セルフチェックリスト」について解説します。
自社の危険度を把握する人件費と資金繰りチェックリスト
人手不足と人件費高騰が同時に起きている現在の経営環境において、自社の財務と労務の状態を客観的に把握することが第一歩です。
財務と労務のチェックリスト例を作成してみました。
【財務・労務のセルフチェックシート】
- 過去1年間で利益が増加していないにもかかわらず賃上げを実施した
- 収益償還年数が10年を超えている、または試算していない
- 今後12カ月の月次資金繰り表を作成していない
- 過去1年間で中堅・キーマン層の離職が発生している
- 昇給や賞与の決定基準が曖昧で、社内に対する明確な説明ができていない
- 業務プロセスの見直しをしておらず、残業や負担感が増加している
- 業務改善助成金やキャリアアップ助成金などの公的支援を活用していない
チェックが3個以上つく場合は、財務または労務のどちらかで潜在的なリスクがあり、5個以上チェックがついた場合は、財務や労務に大きなリスクがある可能性があります。
財務と労務の課題を一体で考えることの重要性
多くの企業では、
「資金繰りや融資の相談は税理士や銀行へ」
「賃金改定や労働条件の相談は社労士へ」
というように、相談窓口が分かれています。しかし、人件費の管理や防衛的賃上げの問題は、財務と労務が密接に関係します。
例えば、税理士から「利益が出ているから賃上げしよう」と助言されても、労務環境や評価制度が改善されなければ離職を防ぐことができません。
また、社労士から「離職防止のためにベースアップしよう」と提案されても、資金繰りや損益分岐点売上高を把握していなければ今後の資金繰りに影響を及ぼします。
人件費は、「資金繰り(財務)」と「評価と労務改善(労務)」の双方を成立させるロジックで管理しなければなりません。財務から逆算した人件費予算の中で、社員のモチベーションと定着率を高める評価制度と労務管理を見直すことが、高水準となった倒産時代を生き抜くには必要です。
まとめ
【今回のポイント】
- 自社のリスクを可視化するため、セルフチェックリストを活用する
- チェックが多数つく企業は、財務と労務の悪化が同時に進んでいる可能性がある
- 財務と労務を個別に考えるのではなく、一体的な戦略を構築する
全5回にわたり、最近の倒産動向から防衛的賃上げのリスクと事業継続のための戦略について解説してきました。貴社の財務構造と労務環境の健全化の参考になれば幸いです。
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