人件費をどう予算化するか ~中小企業のための実践的ステップと連携のヒント~
はじめに
7月28日に開催された中央最低賃金審議会において、今年度の地域別最低賃金額の目安が全国加重平均で1,176円となる答申が取りまとめられました。
大企業や競合他社に人材を取られないため、あるいは法改正に対応するために「防衛的な賃上げ」を余儀なくされる企業も多いと思います。
しかし、業績の改善が追いつかないまま行う賃上げは、企業の体力を奪います。
今回は、公的データをもとに、中小企業が直面している課題と防衛的賃上げの現実について、財務と労務の双方の視点から解説します。
第1部は、最近の倒産の動向について説明します。
14年ぶりの高水準が示す倒産急増の現実
東京商工リサーチが発表した「2026年7月全国企業倒産状況」によると、同月の全国企業倒産件数は1,028件に達しました。月間の倒産件数が2カ月連続で1,000件を超えるのは約14年ぶりです。
なかでも深刻なのが「人手不足倒産」の増加です。
同月の「2026年7月人手不足倒産動向」によると、人手不足倒産は月次で過去最多となる63件(前年同月比40.0%増)を記録しました。
その要因を見ると、中小企業が抱える構造的な課題が浮き彫りになります。
【人手不足倒産の要因内訳と伸び率】
| 要因 | 件数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 人件費高騰 | 36件 | 111.7%増(約2.1倍) |
| 従業員退職 | 19件 | 72.7%増 |
| 求人難 | 8件 | 11.1%減 |
特筆すべきは、「人件費高騰」を理由とする倒産が前年同月から2倍以上に急増している点です。さらに、人手不足倒産全体の63.4%(40件)を資本金1,000万円未満の小規模企業が占めており、資金力に乏しい企業ほど人件費負担の影響を受けていることがわかります。
防衛的賃上げのリスク
業績改善を伴わない賃上げはキャッシュフローを圧迫します。
売上や利益が増えないまま人件費という固定費だけが増加すると利益率は悪化し、「収益償還年数」などの財務指標に影響を及ぼします。その結果、融資に影響を受ける可能性があります。
一方、労務の視点から見ると、単に給与を引き上げるだけでは「従業員退職」を防げないという現実があります。
今回のデータでも、従業員退職に起因する倒産が19件(前年同月比72.7%増)と大きく伸びています。業務の効率化や適切な評価制度がないまま賃金だけを上げても、現場の過重労働や不公平感は解消されず、結果として離職に歯止めがかかりません。人件費負担が増えたうえにキーマンが退職するという二重苦に陥ってしまう可能性があります。
まとめ
【今回のポイント】
- 2026/7月の全国企業倒産は1,028件、2カ月連続の1千件超えは約14年ぶりの高水準
- 人手不足倒産は過去最多の63件、うち「人件費高騰」が36件(約2.1倍増)と急増
- 資本金1千万円未満の企業が人手不足倒産の63.4%を占め、経営体力のない企業への影響が深刻
- 財務面での資金繰り計画と、労務面での評価・業務改善を伴わない防衛的賃上げは倒産リスクを高める
第2部では、見るべき財務指標や、原資なき賃上げが資金繰りや融資などに与える影響について解説します。
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