【妄想コラム】もしもイチローがCEOだったら ~「打率」より「打席数」を重視する経営者の1日~
はじめに
第1部では、令和7年度年金法改正によって賃金要件が撤廃され、企業規模要件が段階的に引き下げられていくスケジュールを確認しました。
この改正は、単なる事務手続きの変更に留まらず、企業の「財務(キャッシュフロー)」と「労務(エンゲージメント)」の双方に影響をもたらします。
第2部では、その影響と課題について考察します。
財務の視点:法定福利費の増加とキャッシュフローの圧迫
社会保険の適用拡大は、企業にとって「法定福利費(会社負担分の社会保険料)」の増加となります。 短時間労働者が新たに加入する場合、会社は健康保険料・厚生年金保険料を労使折半で負担しなければなりません 。
仮に、週20時間労働で月給8万円のパート従業員が10名いる小規模企業を考えてみます。
これまでは月額8.8万円未満で適用外だったとしても、改正後は週20時間以上であれば全員が加入対象となります。社会保険料率を約15%(会社負担分)と仮定すると、1人あたり年間約14.4万円、10名で年間約144万円の法定福利費が毎年の固定費として増加することになります。
このコストを製品やサービスの付加価値向上で吸収できなければ利益を押し下げ、キャッシュフローを圧迫する要因となります。
特に利益率の低い業種や労働集約型の企業にとっては、死活問題になりかねないリスクです。
労務の視点:従業員の「手取り減少への懸念」と就業調整
労務面の課題は、従業員側の「手取りが減る」ことへの抵抗感と、それに伴う新たな就業調整(働き控え)です。
従業員も給与から保険料が天引きされるため、手取りが減少します。これによりパート従業員が、「社会保険に入りたくないから、働く時間を減らして週20時間未満にしてほしい」と申し出るケースが予想されます。
ただでさえ深刻な人手不足の中、既存のスタッフが労働時間を短縮すれば、現場のオペレーションは崩壊してしまいます。
「手取りを減らさないための働き控え」は、企業にとっても労働者自身にとっても「最大のパフォーマンスを発揮できない」状態であり、企業の成長を阻害する大きな壁となります 。
高齢者雇用への影響
支給停止基準額が65万円に引き上げられる在職老齢年金の基準緩和は、熟練のシニア人材に時間を気にせず活躍してもらう良い機会となります。
しかし、これも労務管理を誤れば「属人化の継続」に繋がる恐れがあります。
「年金が減らないからもっと働きたい」というベテランシニアの労働力に依存しすぎると、若手への技術承継や業務プロセスの見直しが先送りされ、企業の組織若返りやリニューアルを阻害するリスクを孕んでいます。
まとめ
第2部では、年金法改正がもたらす財務への影響と、手取り減少を恐れる従業員の就業調整という労務上の課題を整理しました。何も対策を講じなければ、企業は利益圧縮とマンパワー不足の両面で影響を受けます。
第3部では、これらの課題をチャンスに変えるための対策について考察します。



