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はじめに
近年、企業の経営環境は目まぐるしく変化しています。
特に人手不足は深刻であり、「いかにして労働力を確保し、生産性を向上させるか」が経営の最優先課題となっています。このような中、国会で成立したのが「令和7年度年金法改正」です。そして、改正は今後も段階的に行われます。
年金法改正は、これまで何度か取り上げてきたテーマですが、改めてこれからの企業経営に影響する年金法改正のおさらいと改正の背景などについて考察します 。
令和7年度年金法改正の背景と「ねらい」
今回の改正の背景にあるのは、共働き世帯の増加、シニア層の就労拡大などといったライフスタイルや社会経済の構造変化です。
改正の主なねらいは以下です。
- 支給停止基準額の引き上げなど、働きながら年金が受けられる方を増やす
- 社会保険適用を拡大し、多様な働き方でも恩恵を受けられるようにする
- 人口減少下の事業所の人材確保に資する取り組みを支援する
いわゆる「年収の壁」を意識して働く時間を抑えるような歪みをなくし、労働者のパフォーマンスと生産性が向上する環境を整えようとしています。
主な改正項目と施行スケジュール
今回の法改正は、短時間労働者への適用拡大から標準報酬月額の上限引上げなど、多岐にわたります。
今後の主な改正項目と施行時期を以下の表にまとめます。
| 改正項目 | 改正の概要 | 主な施行時期 |
|---|---|---|
| 在職老齢年金の見直し | 支給停止基準額を現行の50万円から65万円に引き上げ | 2026年4月 |
| 私的年金制度の見直し(iDeCo) | 加入可能年齢上限を70歳未満に引き上げ、加入要件を拡充 | 2026年12月 |
| 標準報酬月額の上限引き上げ | 厚生年金等の上限を65万円から75万円へ段階的に引上げ | 2027年9月より順次 |
| 短時間労働者の適用拡大 | 賃金要件の撤廃、および企業規模要件の段階的撤廃(最終的に全員適用へ) | 賃金要件:公布から3年以内、規模要件:2027年10月より順次 |
| 個人事業所の適用業種拡大 | 常時5人以上の個人事業の非適用業種(飲食・宿泊・農業等)を解消 | 2029年10月 |
2026年度以降の主な2つの改正
1.(2026年4月施行済)シニア層の就業調整を解消する「在職老齢年金」の緩和
在職老齢年金の支給停止基準額が65万円まで引上げられました。
内閣府の調査(2024年)によると、60代後半の厚生年金受給者の29.0%が「年金額が減らないよう時間を調整して働いている」と回答しています。
厚生労働省の試算では、この緩和により約20万人が新たに年金を全額受給しながら働けるようになり、シニア人材の「働き控え」が解消されると期待されています 。
2.(2027年10月以降順次)パート・アルバイトの社会保険適用拡大
これまで「月額8.8万円以上(年収約106万円相当)」などの壁があった短時間労働者の社会保険適用ですが、最低賃金の上昇を見極めた上で、この「賃金要件」が撤廃されます。
さらに、企業規模(常勤の従業員数)の要件も以下のように段階的に引き下げられ、令和17年(2035年)に向けて完全に撤廃される予定です 。
35人超への拡大:2027年10月
20人超への拡大:2029年10月
10人超への拡大:2032年10月
これにより、これまでは対象外だった小規模な企業や、2029年10月からは常時5人以上の個人経営の飲食店・宿泊業なども原則適用となり、ほぼ全ての中小企業が「短時間労働者の社会保険加入」の対象となります。
まとめ
第1部では、年金法改正についておさらいしました。
国は、短時間労働者やシニア層の「働き方の壁」を取り払い、誰もが労働市場で活躍できる社会への移行を加速させています 。
第2部では、この改正が中小企業の「財務」と「労務」にどのような影響を与えるか、具体的な数値を用いて考察します。



