賃上げ後の経営戦略 ~人件費増を乗り越える中小企業の実践ガイド~
はじめに
第1部では、高校の教壇に立ったことをきっかけに、若年層への金融教育の必修化や政府が成長戦略として推進する「貯蓄から投資へ」の背景についてお話ししました。
第2部は、日本の投資環境と他の国との比較、そしてどのような課題があるかを整理します。
日米欧の資産構成にみる「環境と意識」の違い
日本の家計金融資産が「現預金偏重」であることはよく知られていますが、これをアメリカや欧州(ユーロ圏)と比較すると、資産の成長スピードに差が生じていることが分かります。
米国などでは、生活の中に金融経済教育が浸透しており、若いうちから資産の一部を株式や投資信託などの成長資産に振り分けることがごく自然に行われてきました。
結果として、経済成長の恩恵を家計がそのまま享受し、資産を何倍にも増やしています。
一方、日本は主な運用が現預金のため、見方によっては「成長機会を長年逃し続けて」きました。物価上昇(インフレ)が定着しつつある現在の日本においては、現預金のまま放置することは「購買力の実質的な低下(目減り)」というリスクに直面します。
日本の金融環境における課題と形骸化のリスク
政府はJ-FLEC(金融経済教育推進機構)を設立するなどして、いつでも中立的な学びや相談ができる環境(インフラ)の整備を進めています。これに伴い、民間企業においても「企業型DC(確定拠出年金)」を導入するケースが増えてきました。
しかし、多くの企業が「制度(箱)」を導入したものの、それを活用する「従業員への教育(中身)」が追いついていない、という状況です。
せっかく国が法改正や新制度で金融環境を整えても、従業員側の金融リテラシーが向上しないと、結局として「元本確保型(定期預金など)」の商品に主に資金が流れ、インフレによる目減りリスクは変わりません。
環境は整いつつあるのに、活かす知識がない―
これが、現在の日本の課題です。
【日本と諸外国の環境・課題比較】
| 項目 | 日本の現状と課題 | 諸外国(主に米国等) |
|---|---|---|
| 家計金融資産の構成 | 現預金が5割超、投資へ移行中 | 株式・投資信託が大きな割合を占める |
| 学校での教育環境 | 高校での義務化がスタート | 幼少期・学生時代からの体系的な教育が定着 |
| 企業内の環境 | 企業型DC等の導入は増えるも、教育は形骸化しがち | 従業員の生活設計(ウェルビーイング)支援が主流 |
| インフレなどへの意識 | 長年のデフレから資産防衛の意識が強め | 物価上昇に応じた資産アロケーション |
まとめ
第2部では、諸外国との比較を通じて、日本の現預金偏重がもたらしてきた機会損失と、環境が整備される一方で従業員の知識が追いついていないという課題について説明しました。
第3部では、これらの金融環境の変化や課題を踏まえ、どのような対策を講じるべきかを考察します。



