無期転換ルールと多様な正社員をどう対応するか 【第3部】中小企業が整備すべき労務管理

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
4月24日、政府は2026年版「中小企業白書」および「小規模企業白書」を閣議決定しました。
今回は中小企業白書を3部にわたり取り上げます。第1部では、2026年版中小企業白書の全体像を整理します。
はじめに
閣議決定した中小企業白書、小規模企業白書では「稼ぐ力」について触れています。
なぜ今、「稼ぐ力」の強化が強調されているのか。
その背景には、かつてないほどのスピードで進む「労働供給制約社会」への危機感があります。本白書は、中小企業が現状維持というリスクを回避し、持続可能な経営へと舵を切るための羅針盤といえる内容です。
白書の構成と主要テーマ
2026年版白書は、主に「労働生産性の状況」と「稼ぐ力の強化に向けた取組」の2つの軸で構成されています 。
特筆すべきは、単なる現状分析にとどまらず、「付加価値額の増加(アウトプットの増大)」と「労働投入量の最適化(インプットの効率化)」をセットで論じている点です 。
・中小企業白書 第2部
「強い中小企業」に向けた「稼ぐ力」の強化 。
成長投資、人材育成、価格転嫁、AI活用・デジタル化などを分析しています。
・小規模企業白書 第2部
小規模事業者の経営リテラシー向上と企業間連携 。
財務・会計や労務管理といった「経営の土台」の重要性を説いています 。
中小企業を取り巻く「3つの転換期」
白書では、現在の経営環境を「デフレ・ゼロ金利環境」から「インフレ・金利のある時代」への移行期と定義しています 。
| 転換の要素 | 過去の環境 | これからの環境(2026年〜) |
|---|---|---|
| 金融環境 | デフレ・ゼロ金利 | インフレ・金利のある時代 |
| 労働環境 | 労働力確保が比較的容易 | 労働供給制約社会(人手不足深刻化) |
| 賃金水準 | 抑制的・横ばい | 持続的な賃上げが必須 |
出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」をもとに作成
白書が示す5つの重点テーマ
2026年版白書では、中小企業経営の鍵として、主に次の5つのテーマが示されています。
1. 稼ぐ力の強化
付加価値額を増やし、労働生産性を高めること。
持続的な賃上げの原資確保の前提となります。
2. 投資の促進
設備投資だけでなく、人的資本投資、研究開発投資も重視されています。
将来の収益力をつくるための投資です。
3.デジタル化とAI変革(AX)
IT導入だけではなく、AIを活用して業務や価値創造そのものを変える発想が求められています。
4. 経営リテラシーの向上
財務・会計、組織・人材、運営管理、経営戦略の4分野で、経営者の基礎力を高める必要があります。
5. 構造変化への対応
人手不足、事業承継、M&A、組織再編など、経営の前提そのものが変わる中で、柔軟な再構築が必要だと示しています。
中小企業の労働生産性:大企業の労働生産性を上回る中小企業の存在
注目すべきデータとして、中小企業の中でも労働生産性が上位に位置する企業群は、既に大企業の中央値を超える水準に達しているという事実が示されました 。
これは、「企業規模が小さくても、戦略次第で高い生産性は実現可能」であることを証明しています 。
「稼ぐ力」とは、単なる売上の増大ではありません。短期的損益に一喜一憂せず、リスクを取って「成長投資」や「AIトランスフォーメーション(AX)」、そして「M&A」による組織構造の組み換えを決断できる経営力そのものを指しています 。
まとめ
第1部では、2026年版白書が示す「稼ぐ力」の重要性と、中小企業を取り巻く激変する環境について概観しました。
経営環境の転換期においては、現状維持は衰退と同義です。
第2部では、この新しい環境下で中小企業が直面している「賃上げと労働分配率のジレンマ」や「深刻化する人手不足」といった課題と、財務・労務への影響を整理します。


