不登校の相談事

長谷川満

長谷川満

 僕はよく不登校の相談を受けます。
 お母さん方の相談内容は色々なのですが、相談の一つに「無理にでも学校に行くようにした方がいいのか、それとも今は無理をせずあたたかく見守ってやった方がいいのか。」というのがあります。
 まあ、無理にでも学校に行くようにすると言ったって、子どももある程度大きくなればそんなことは出来ないし、何らかの対策をとって学校に行けるようにしっかり働きかけた方がいいのか、といったことにはなるのですが・・。

 そういったご相談の際にはこんなふうにお尋ねすることがあります。

 「もし、あなたがお子さんの立場で何らかの事情で学校に行きたくないとして、そのとき親にどんなふうに接してほしいですか?」
 「うう・・ん、それはそっとしといてほしいというか・・、無理矢理学校に行かせられるのは嫌かもしれません。」
 「だったら、子どもさんも同じ気持ちかもしれませんね。」
 「でも、そのまま放っておいたら、どんどん行けなくなってしまいませんか?」
 「そのことが不安なんですね。そういう不安があるから、そっと見守ってやるってことが難しいのかもしれませんね。」
 「ええ、そうですね。不安ですね・・」
 「これ、不安っていうことであれば学校に行けてない当の本人が一番不安かもしれませんね。まず第一に学校に行く事に対して不安があるから学校に行けないわけだし・・」
 「え、ええ。それはあると思います。」
 「もし、いじめられているのであれば、そりゃあ不安だろうし・・、そうでなくても何らかの息苦しさは感じているのだと思います。また、学校に行くのが嫌やのに行かされるという不安も持っているかもしれません。」
 「ああ、それはあるかもしれませんね。」
 「僕、思うんですけど、この不安ってやつがどうも、こうした方がいいんやけどと思っていてもそうさせない働きをしているんだと思うんです。たとえば、お母さんは休むのを認めてしまうと子どもは安心してしまってそのままになっちゃうんじゃないかって思ってそれができないし、子どもの方は子どもの方で一回行ってしまうと行けるんじゃない、て思われて無理矢理行かされるハメになるって思ってるかもしれないし・・」
 「えーっ、そんなこと思いますか。」
 「いや、思わないかもしれません。でも、親は自分の気持ちよりも何とかして学校に行かせようとしているとは思っているでしょうね。行かされる・・、そう思うと、どうにかして行かなくてもいいように出来ひんかなあって、余計行かない方向に気持ちが向いてしまうのはあたり前のように思いませんか。」
 「そうですね・・」
 「結局、子どもが自分から学校に行こうとする気持ちが出てこなければ、どっちみち学校には行けるようにはならないのではないですか。」
 「では、子どもがそういう気持ちになるまで待てと・・。」
 「僕もどうしたらお子さんが学校に行けるようになるのかはわからないんです、正直なところ。そして、それは誰にもわからないんじゃないでしょうか。不登校は一人一人違います。こうすれば誰でも学校に行くようになるなんて方法はないんですね。」
 「そうですよね・・。どうしたらいいんでしょうね・・。」
 「どうしたらいいんでしょうね・・。ちょっと質問を変えてみましょう。
  どうしたいですか?」
 「どうしたい・・、う~ん、今はそっと見守ってやりたいです。でも、学校の先生は今が大事な時だから無理にでも校門まで連れてきて下さい、ておっしゃるし・・。」
 「学校の先生は学校の先生のお考えがあるでしょう。でも、あなたはどうしたいかです。」
 「しばらくはそっと見守ってやる方がいいと思いますし、私もそうしたいです。」
 「じゃあ、とりあえずそっと見守ってやりましょう。」
 「はい、そうします。なんか少しスッキリしました。来てよかったです。」
 「そうですか、それはよかった。またいつでも相談に来て下さい。」
 
 不登校の相談に対してマニュアルはありません。
 ですから、いつもこのように話が進むわけでもありませんし、僕も同じ話はしません。
 ただ、できるだけお母さんのことも生徒さんのことも両方とも尊重した話をするようにしています。お母さんがいくら子どもに学校に行ってほしくても子どもの気持ちもあるわけですから、一方的にお母さんの願いを叶えるにはどうしたらいいかって考えるのは片手落ちだと思います。
 その子は今どうしたいのか。
 その子のことですから、その子の気持ちは一番尊重すべきことです。
 その子にとって、どうすることが一番いいのか、そのご家庭にとってどうすることが一番いいのか、それは僕には見通せていない、僕にはわかっていないということを前提に一緒に考えていきます。
 そのうえで、どうしたらいいのかとか、どうすべきなのかではなく、
 「どうしたいですか」って尋ねることが多くあります。
 お母さんが何を感じ、どうされたいのか、それを一番に尊重したいと思っています。
 自分の考えを与えるのではなく、お母さん自身の直観とか思いをもう一度信じてもらう。
 その直観に従って行動してもらう。
 そういうことが大切だと思っています。

 自然に自分の中から湧いてくる思いや直観を信じて、それに賭けてみる。あとは自然の流れに委ねていく。
 良い方向に向かおうとする流れがある、それを信じてその流れを邪魔しないようにすることが大切だとも思っています。




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長谷川満
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長谷川満(家庭教師)

家庭教師システム学院

発達障がいや不登校の子の意欲を引き出すには自己肯定感を高める必要があります。その子のありのままを受容し、信頼関係を築き、成功体験と褒め言葉で自信と意欲を引き出します。

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