モヤモヤ解消! 領収書に関する基本ルール【ケース別整理】
2027年4月から2年間の引下げ案と事業者への影響
政府は2026年9月15日、2027年(令和9年)4月1日から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品の消費税率を「1%」に引き下げることなどを盛り込んだ大綱を閣議決定しました。
◆国税庁のパンフレット
ただし、現時点ではまだ法律が成立したわけではありません。
この秋の臨時国会に提出され、成立した場合に実施される予定です。
本稿は、消費者だけでなく、飲食店や小売店などの事業者にとって特に重要なポイントを、
分かりやすく整理します。
●5つの改正ポイント
1.2027年(令和9年)4月から2年間、飲食料品の消費税率は「8%→1%」に。
2.課税期間の末日までに提出すれば「免税・簡易課税」から「本則課税」への移行が可能に。
3.「簡易課税」を継続しても、売上税額と同額の仕入税額控除とする特例が設けられる。
4.税率変更の前後2ヵ月は、価格表示のルールが柔軟に。
5.中間申告の計算について、「前年も1%」として再計算。
●「1%」になるのは、飲食料品とテイクアウトだけ
現在、酒類・外食を除く飲食料品には「8%の軽減税率」が適用されています。
これが、2027年(令和9年)4月1日から2029年(令和11年)3月31日までの2年間、
「1%」となる予定です。一方、次のものは1%にはなりません。
| 商品・サービス | 現在 | 2027年4月から(案) |
|---|---|---|
| 飲食料品 | 8% | 1% :引き下げ |
| テイクアウト | 8% | 1% :引き下げ |
| 店内飲食(外食) | 10% | 10% :変わらず |
| 酒類 | 10% | 10% :変わらず |
| 定期購読の新聞 | 8% | 8% :変わらず |
つまり、飲食店では、「店内飲食10%」と「テイクアウト1%」という大きな税率差が生じることになります。
●事業者にとって重要な5つのポイント
今回の改正案は、消費者にとっては朗報かもしれませんが、
飲食料品を扱う事業者には大きな負担を強いられることになります。
そこで、特に事業者が押さえておきたいのは、次の5点です。
① 本則課税へ変更しやすくなる
飲食料品の販売事業者では、売上にかかる消費税が1%になる一方、家賃や水道光熱費、設備投資などには10%の消費税がかかる場合があります。そのため、売上にかかる消費税より、仕入れや経費にかかる消費税の方が多くなり、還付が生じる可能性があります。
そこで改正案では、飲食料品を販売する免税事業者について、課税期間の途中から課税期間の
末日までに届出書を提出すれば、課税事業者を選択できる特例が設けられる予定です。
また、簡易課税を選択している事業者についても、課税期間の途中から課税期間の末日までに
届出書を提出すれば、本則課税へ変更できる特例が予定されています。いわゆる「2年縛り」の
適用もありません。
通常は事前(課税期間の前日まで)の届出が必要なため、これは事業者にとって大きなポイントです。
② 簡易課税にも特例が設けられる
簡易課税では、実際の仕入税額ではなく、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使って消費税を計算します。
今回の改正案では、1%となる飲食料品の販売について、売上にかかる消費税額と同額を仕入税額として計算する特例が設けられます。
例: 売上税額 100 - 特例による仕入税額 100 = 納付税額 0
つまり、簡易課税を選択している事業者でも、1%対象の飲食料品の販売については、
原則として消費税の納付額が生じない計算になります。
ただし、飲食料品以外の売上については、これまでどおり業種ごとのみなし仕入率を使います。
③ 中間申告にも特例
消費税の中間申告は、通常、前年の納税額などを基準として計算します。
しかし、飲食料品の税率が8%から1%へ大きく下がると、従来の税率を前提とした中間納付額は、実際の税負担に比べて大きくなる可能性があります。
そこで、2027年4月1日以後に開始する中間申告について、飲食料品に1%が適用されたものとして再計算した金額を基に、中間申告税額を算出できる特例が設けられる予定です。計算の結果、中間申告税額が生じない場合は「0円」とします。
④ レジ・会計ソフトなどの対応が必要
税率が「8%」から「1%」に変われば、
• POSレジ
• 会計ソフト
• 販売管理システム
• 請求書発行システム
• ECサイト
• 商品マスター
• メニュー・値札 ――など、さまざまな部分の見直しが必要になります。
インボイス(領収書等)や仕入明細書などについても、1%対象の飲食料品については、
適用税率や消費税額等を正しく記載できるよう対応する必要があります。
政府も、中小企業等のスマートレジ導入やPOSレジ改修などを支援するため、
2026年9月29日に予備費の使用を決定しています。
「まだ先の話」と考えず、早めにシステム会社などへ確認しておくことが大切です。
⑤ 価格表示にも注意
商品等の価格表示は、総額表示(税込表示)が義務付けられております。そこで、税率変更直後にすべての値札等を変更することが難しい場合等には、一定の条件のもと、旧税率の「8%」を
前提とした税込価格を表示することが認められます。
具体的には、
・2027年2月1日~3月31日:「1%」に基づく税込価格の表示が可能
・2027年4月1日~5月31日:「8%」に基づく税込価格の表示が可能 ――という特例です。
そのため、税率変更の前後2ヵ月は、「表示価格と実際のレジでの支払額が異なる」というケースも考えられます。
事業者は、消費者が誤解しないよう、税率変更について分かりやすく表示することが重要です。
例えば、店頭などに「この棚の商品は旧税率(8%)の税込価格で表示してますが、レジにて新税率(1%)に基づき清算します」などと案内し、正しく「1%」の税率で清算する方法が考えられます。
◆飲食店は特に注意
今回、特に影響が大きいと考えられるのが飲食店です。
現在は、「店内飲食 → 10%」・「テイクアウト → 8%」ですが、
改正案では、「店内飲食 → 10%」・「テイクアウト → 1%」となります。
そのため、レジでの税率判定や従業員への周知など、現在以上に正確な対応が必要になります。
また、テイクアウトと店内飲食の価格設定や、商品の品揃え、販売・厨房・店内レイアウト等をどうするのかについても、経営上の重要な検討事項となるでしょう。
●「1%」は2年間だけ
今回の消費税率引下げは、恒久的な減税ではありません。
予定されている期間は、2027年(令和9年)4月1日~2029年(令和11年)3月31日の2年間です。
そのため事業者は、
8% → 1% → 8% という2度の税率変更への対応を考える必要があります。
2027年4月の変更だけでなく、2029年4月に8%へ戻る場合のシステムや価格表示についても、
あらかじめ確認しておくことが重要です。
●「就業者負担軽減支援金」も予定
今回の大綱では、消費税率の引下げと合わせて、「就業者負担軽減支援金」を導入することも
示されています。
この支援金は、中低所得の就業者について、税金や社会保険料の負担を軽減し、手取りを増やすと共に、いわゆる「年収の壁」などによる働き控えを緩和することを目的とするのです。
原則として個人を単位に支給されますが、所得に応じて給付を行う仕組みで、2027年度・2028年度に実施し、その後の「給付付き税額控除」につなげることが想定されています。
ただし、支援額や所得基準など、今後さらに具体化される部分もあります。
そのため、現時点では「いくらもらえるのか」などを確定的に考えるのではなく、
今後の制度の詳細を確認する必要があります。
●中小企業は今から何を確認すればいい?
今回の改正案は、単に「消費税が8%から1%になる」というだけではありません。
飲食料品を扱う事業者は、今のうちから次の点を確認しておくとよいでしょう。
① 現在の課税方式を確認する
免税・簡易課税・本則課税のどの方式を選択しているかを確認します。
② 本則課税に変更した場合の税額を試算する
1%の売上と10%の仕入・経費を考慮して、納付になるのか、還付になるのかを確認します。
③ レジ・会計システムを確認する
1%への変更だけでなく、2029年の8%への復帰にも対応できるか確認します。
④ 価格表示を確認する
値札、メニュー、ホームページ、ECサイト、カタログなどの対応を検討します。
⑤ インボイスへの対応を確認する
請求書・レシート等について、1%の税率を正しく表示・計算できるよう準備します。
●まとめ
飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる今回の制度は、消費者だけでなく、
飲食店や小売店、食品関連事業者などにも大きな影響を与える可能性があります。
特に事業者にとっては、
• 本則課税への変更
• 簡易課税の特例
• 中間申告
• インボイス
• レジ・会計システム
• 価格表示 ――など、税務と経理の両面で準備が必要です。
この制度改正は、現時点では法案成立前の段階です。
今後、国会審議や政省令、国税庁のQ&A等によって、具体的な取扱いが明らかになることが
見込まれます。
当事務所でも、今後の制度の詳細を確認しながら、飲食店・小売業などのお客様について、
「本則課税に変更した方がよいのか」「現在の簡易課税を続けた方がよいのか」など、
個々の事業者に応じた影響を確認していきます。
※本稿は2026年10月現在の政府・国税庁等の公表資料に基づいて作成しています。
今後の法案審議等により内容が変更される場合があります。


