過去の不良対策書が「次の判断」に生きる! NotebookLMで始める製造業の知識データベースづくり― 判断カードと元資料をつなぎ、現場の知恵を会社の資産に ―

濱田金男

濱田金男

テーマ:濱田式AI品質スタンダード

「以前にも似た不良があったはず。でも、対策書が見つからない」
「手順書には作業の順番が書いてあるが、なぜ必要なのかはベテランしか知らない」

製造現場には、たくさんの記録と経験が蓄積されています。しかし、必要なときに使えなければ、同じ失敗を繰り返してしまいます。

そこで今回は、GoogleのGemini Notebook(旧NotebookLM)を使い、過去の対策書や熟練者の判断を、質問して引き出せる形にする方法をご紹介します。

大切なのは、資料を大量に入れることよりも、「どんな条件で、どう判断し、なぜそうしたか」を根拠と一緒に残すことです。これは、濱田式AI品質スタンダードの「匠ナレッジコア」を、小さく始める方法の一つです。

1.NotebookLMを使うと、何ができるのか?
NotebookLMは、自分で登録した資料をもとに質問でき、回答の引用から元資料の該当箇所を確認できるAIツールです。例えば、過去の対策書や設計基準を登録し、「この部品を変更するとき、過去の教訓として何を確認すべきか」と尋ねる使い方ができます。Google公式:チャットと引用の使い方

共有フォルダーでは、ファイル名や保管場所を手がかりに探す場面が多いでしょう。NotebookLMでは、知りたいことを文章で質問し、関連資料に書かれた内容を整理する手助けを得られます。

ただし、ここでいう「データベース化」は、資料を登録し、質問して参照できる知識の仕組みをつくることです。正式な文書管理や承認の仕組みは、別に維持します。

NotebookLMは匠ナレッジコアを実現するための道具の一つ。その中身となるのは、人が確認した判断と根拠資料です。

2.登録するのは「判断カード+元資料」
対策書には「部品形状を変更した」と書かれていても、「なぜその形状か」「他の製品にも使えるか」が読み取れない場合があります。

そこで、次の四つを「判断カード」にまとめます。
 項目:残しておく内容
 条件:どのようなときに適用するか
 判断:何をする、何を確認するか
 理由:なぜ、その判断が必要か
 例外:どのような場合は適用できず、再検討が必要か

カードにはさらに、カードID、確認者・確認日、版、根拠資料名、検索キーワードを付けます。そして、根拠となる対策書、図面、試験結果、標準書なども一緒に登録します。

カードは判断の要点、元資料はそれを確かめる根拠です。 両方がそろうことで、要約だけでは見えない条件や経緯を確認できます。

また、ベテランの頭の中にしかない知恵は、資料の登録だけでは取り出せません。AI品質ナビゲーターとの対話や熟練者への聞き取りで整理し、本人や関係部門が確認してからカードにします。理由が分からない部分をAIの推測で埋めず、「未確認」として残すことも必要です。

3.まずは「1テーマ・判断カード10枚」から始める
最初から工場全体の資料を集める必要はありません。「板金可動部品の設計判断」「ねじ締結の不良対策」「成形品の割れ対策」など、困りごとに近いテーマを一つ選びます。

NotebookLMには無料で利用できる範囲があり、小規模な試行に使えます。利用上限や対応形式は変更されるため、開始時に公式ヘルプを確認してください。Google公式:資料の追加と利用上限

手順① 判断カードと元資料を準備する
まずは、社内で内容を確認できる事例を10件程度選びます。カードは項目名をそろえ、1枚ごとに区切ります。関連するカードを一つのGoogleドキュメントやPDFにまとめる方法もあります。

元資料には資料名、文書番号、版、日付を付け、カードの「根拠資料」欄と対応させます。スキャンした資料は、文字や図が正しく読み取られているか、登録後に確認しましょう。

手順② テーマ別のノートブックを作る
NotebookLMで新しいノートブックを作り、「板金可動部品の設計判断」など、用途が分かる名前を付けます。

資料を入れる前に、自社のAI利用ルールと契約条件を確認します。社内承認のある環境を使い、入力が認められない機密情報や個人情報は含めません。名前を伏せても、図面や数値から機密が分かる場合があるため、資料全体で確認します。

手順③ カード集と元資料を追加する
「ソースを追加」から、準備した判断カード集と元資料を登録します。「ソース」とは、AIが参照する資料のことです。

PDFやGoogleドキュメントなどを利用できます。登録後は、資料名や内容を確認し、今回の質問で参照させる資料をソース一覧で選択します。Google公式:ソースの追加方法

手順④ 回答のルールを指定する
チャットの設定でカスタム指示を使い、例えば次のように指定します。設定場所が分からない場合は、質問するときにこの指示を添える方法から試せます。Google公式:チャット設定

登録した判断カードと資料を根拠に回答してください。カードID・資料名と、確認できる引用を示してください。回答は「条件・判断・理由・例外」の順に整理してください。
資料に記載がないことは「資料内で確認できません」とし、推測で補わないでください。今回の条件と過去の条件が違う点や、不明な点は「要確認」として挙げてください。

これは回答を整えるための指示であり、誤りを完全に防ぐものではありません。人による出典確認を組み合わせて使います。

4.具体例:可動レバーの設計変更で、過去の教訓を探す
ここからは、仕組みを説明するための例です。特定部品に対する設計上の結論を示すものではありません。

過去の対策書を確認し、次のようなカードを登録していたとします。
 項目:登録内容の例
 カードID:KATANA-SM-001
 カード名:板金曲げ部の逃げ溝設計と疲労対策
 条件:曲げ加工を伴う可動部品で、繰返し荷重を受ける場合
 判断:逃げ溝の形状・寸法、加工時の亀裂、使用時の応力集中と疲労強度を関係部門で評価する
 理由:加工時の初期亀裂と繰返し応力が重なると、破損につながるおそれがあるため
 例外:材料・板厚・加工方法・荷重条件が違う場合は、適用の可否を個別に評価する
 確認・根拠:確認者・確認日・版、該当する対策書と耐久試験報告書の文書番号を記載

若手設計者は、例えば次のように質問します。
板金レバーを固定式から可動式に変更します。逃げ溝に関する過去の判断と、今回確認すべき事項を、カードIDと出典付きで整理してください。材質はSUS304ですが、板厚と使用時の荷重条件はまだ確定していません。

期待するのは、関連カードの要点と根拠が示され、板厚や荷重条件の未確定部分が「要確認」として挙がることです。

設計者は引用を開き、元資料を確かめます。そのうえで、製造・品質部門と今回の条件を比較し、必要なレビューや試験を決めます。DRBFM、つまり設計の変更点・新規点に着目して懸念を話し合う活動の、準備資料としても活用できます。

過去の対策をそのまま採用するのではなく、今回にも使えるかを人が確かめることが大切です。

5.使い始める前に、三つの検索テストをする
資料を登録できたら、知っている事例で試します。
試すこと
 ・確認するポイント
 ・登録した既知の事例を質問する
 ・関連するカードIDと、正しい資料が示されるか
 ・登録していない内容を質問する
 ・根拠のない判断を作らず、確認できないと示すか
 ・回答の引用を開く
 ・元資料の記述が、回答の内容と条件を裏付けているか

引用が付いていても、今回の判断を支える根拠として十分とは限りません。材料、設備、加工方法、使用条件などの違いまで確認します。

期待と違う回答が出たら、カードの条件や資料名を明確にし、参照対象や質問文を見直します。また、「該当資料がない」という回答だけで、社内に類似事例が存在しないとは判断しないようにします。

6.更新と共有のルールを決めて、使い続ける
新しい不具合や試験結果によって判断が変わったら、カードと根拠資料を更新します。旧版は履歴として別途保管し、通常の質問で参照する資料には有効な版をそろえます。「廃止」と書くだけで、AIが必ず除外すると考えないことが大切です。

更新方法は登録経路によって異なります。Googleドライブ由来の資料には同期機能がありますが、手元からアップロードしたPDFなども同じように更新されるとは限りません。修正後は、ノートブック側で最新版が反映されているか確認します。Google公式:資料の同期と更新

社内で使う場合は、必要なメンバーに共有し、資料を管理する人と利用する人の権限を分けます。共有画面では、相手ごとに閲覧者・編集者を指定できます。Google公式:ノートブックの共有

定期的に検索テストを行い、「答えられなかった質問」「不足していた条件」「新しく分かった判断」を見直します。管理担当を決め、改善活動やDRBFMの終了時にカードを1枚追加するところから始めると、継続しやすくなります。

7.改善するほど、次の仕事に使える知識が増える
濱田式AI品質スタンダードでは、AI品質ナビゲーターが困りごとの整理や問いかけを支援し、人が現場と根拠を確認して判断します。その判断をカードに残し、元資料と結び付けて蓄積するのが匠ナレッジコアです。

NotebookLMを使えば、その知識を質問して参照する仕組みを、小さく試すことができます。ただし、AI品質ナビゲーターとNotebookLMが自動連携することを前提にする必要はありません。最初は、人が確認したカードを登録する運用で十分です。

目指すのは、ベテラン一人に問い合わせが集中する状態から、若手も根拠にたどり着き、確認すべきことを考えられる状態へ進むことです。

まずは、一つの困りごとと、10枚の判断カードから。
過去のトラブルと現場の知恵を、次の品質改善・未然防止・教育に生かす。それが、会社の資産として知識を育てていく第一歩になります。

濱田式AI品質スタンダード ― 熟練の暗黙知を、全員が使える武器に ―

※操作・機能は2026年11月3日にGoogle公式ヘルプを確認しました。画面表示、利用上限、対応形式はアカウントや更新により異なる場合があります。

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濱田金男
専門家

濱田金男(製造業技術支援サービス)

合同会社高崎ものづくり技術研究所

45年の製造業実務経験と生成AI活用を融合し、品質改善と技術継承を支援(過去のトラブルと現場の知恵を、次の判断に生かす品質管理の仕組みづくり)

濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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