帰省中にやるべきは”全部の片付け”ではありません
先日、母の実家から持ち帰った品物を、買取業者さん2社に査定していただきました。
引き出物の食器やシーツ、寝具類、置物、時計、銀杯、レコード…。
「こんなの実家にあるなぁ」と思われるような物ばかりです。
一つひとつ見ていただくと、「これは買取できます」「これは難しいですね」と、品物の価値が少しずつ見えてきました。
査定が終わってから、友人に「銀杯に値段が付いたよ」と話したところ、
「銀杯?迷わず捨てたかも(笑)」
と返信が返ってきました。
私は思わず、
「処分する前に、一度だけでも買取業者さんに見てもらった方が良かったと思うよ。後の祭りだけどね。」
と返しました。
価値がある物が見つかることもありますし、無料で引き取ってもらえる物もあります。
でも、今回私が一番心に残ったのは、お金の話ではありませんでした。
査定の最後、大きなつい立ても引き取っていただけることになりました。
私は正直、
「クリーンセンターに持って行かなくて済んで良かった。」
その程度にしか思っていませんでした。
軽トラックへ積み替えている時、業者さんがぽつりと言いました。
「これ、刺繍なんですね。」
「えっ?」
私はずっと絵だと思っていたのです。
近づいてよく見ると、本当に刺繍でした。
そして、さらに驚いたのは、その作品に叔母の名前が書かれていたことです。
母の実家へ行くたび、何十年も見てきたつい立て。
なのに私は、その日初めて叔母の作品だったことを知りました。
思わず写真を撮りました。
その瞬間、思いました。
「次に帰省したら、母に聞いてみよう。」
誰が仕立てたのだろう。
どんな思いで作ったのだろう。
当時はいくらくらいかかったのだろう。
もし機会があれば、叔母にも聞いてみたい。
従兄弟たちは、この作品のことを知っているのだろうか。
そんなことまで考えるようになりました。
もちろん、母も叔母も「そんな昔のこと覚えてないよ」と笑うかもしれません。
それでもいいんです。
聞ける今がある。
そのこと自体が、とても大切なのだと思いました。
生前整理というと、「物を減らすこと」「片付けること」というイメージがあるかもしれません。
もちろん、それも大切です。
でも私は今回、もう一つ大切な意味に気づきました。
生前整理は、物にまつわる思い出や家族の歴史を聞ける時間でもある。
遺品整理になってしまえば、
「これは誰が作ったの?」
「どうしてここにあるの?」
そんな何気ない疑問に答えてくれる人は、もういません。
だから私は、処分する前に少しだけ立ち止まってほしいと思います。
そして、ご家族がそばにいるなら、物にまつわる思い出を聞いてみてください。
思いがけない家族の物語に出会えるかもしれません。
物を整理することは、思い出まで捨てることではありません。
その思い出を受け継ぐための時間こそ、生前整理の大切な意味なのだと、私は今回あらためて感じました。


