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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

被災地で注意すべき感染症とは?

2018年7月27日

テーマ:医療環境

コラムカテゴリ:医療・病院

被災地で注意すべき感染症とは?

こんにちは。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今日は‘被災地で注意すべき感染症とは?’という報告です。

 国立感染症研究所の感染症疫学センターは7月17日、西日本豪雨による浸水や土砂災害、避難に伴う感染症について、リスクアセスメントを公表した。7月13日時点で評価したもので、被災地において特に注意すべき感染症は、感染性胃腸炎や急性下痢症、破傷風とした。また、感染力が強い麻疹にも注意が必要とし、周辺地域での発生状況に留意すべきとしている。

 リスクアセスメントでは、災害に伴う様々な感染症について、リスクを3段階(低、中、高)で評価している。「地域・避難所で流行する可能性」「公衆衛生上の重要性」「リスク評価」の3項目からなり、「地域・避難所で流行する可能性」では感染症が流行する可能性について評価し、「公衆衛生上の重要性」では感染症の流行による公衆衛生上への影響について罹患割合・致命割合 の視点から評価している。「リスク評価」では、「地域・避難所で流行する可能性」と「公衆衛生上の重要性」の結果を基に総合的な評価を行っている。

 今回の西日本豪雨に伴う感染症については、「水系/食品媒介性感染症」と「破傷風」が総合評価で高リスクと判断された。特に「水系/食品媒介性感染症」(感染性胃腸炎/急性下痢症;黄色ブドウ球菌・サルモネラ・カンピロバクター・病原性大腸菌・ノロウイルス・ロタウイルスなど)は、3項目全てが高リスクとなった。解説によると、過去に、災害時に避難所で胃腸炎の散発的な発生や食中毒事例が報告されていると説明。「避難所において嘔吐・下痢の症状が出現した場合は、速やかに申告するよう避難者、支援者含め全ての避難所関係者に周知する」ことを求めている。また、対策として、避難所での手指衛生対策強化だけでなく、食品衛生管理の強化、トイレの衛生状態の保持が重要としている。

 もう1つの破傷風は、「地域・避難所で流行する可能性」で「中」リスクだったが、「公衆衛生上の重要性」で高リスクとなり、「リスク評価」でも高リスクと判断された。解説では、「外傷後、泥流や土壌曝露後に感染し得る」と指摘。がれきや泥の撤去作業時にもリスクがあることから、適宜医療機関に相談し、「定期接種対象者で必要回数受けていない場合は、早めに接種を受ける」ことを求めている。

 加えて、麻疹はリスク評価が「中」だったが、最近の輸入感染例を起点とする国内流行の発生を受ける形で、「感染力が強いため、被災地周辺の発生状況に注意が必要」と指摘している。なお、今回のリスクアセスメント公表と同時に、被災地や避難所で感染症予防・消毒等を行う上で参考となる「リーフレット集」や「被災地・避難所でボランティアを計画されている皆様の感染症予防について」もウエブサイトサイトに掲載している。

 西日本の被災地では連日の猛暑のために熱中症等も多発している様ですが、免疫力に低下等により感染症も蔓延しやすい状況になっているものと思われます。くれぐれも十分な注意が必要かと思われます!

この記事を書いたプロ

佐藤浩明

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