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知っている様で知らない風邪?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の砂糖です。今朝は‘知っている様で知らない風邪?’というお話です。
急性気道感染症のうち、鼻汁・咽頭痛・咳嗽がそれぞれ同じくらいあるものを感冒、鼻汁・鼻閉が主な症状となっているものを急性鼻副鼻腔炎、咽頭痛が主な症状となっているものを急性咽頭炎、咳が主な症状であるものを急性気管支炎と分類します。この分類は米国内科学会(ACP)などで用いられているものです。
つまり、急性気道症状を全て「かぜ」とひとまとめにしてしまうのではなく、症状から分類して考える方法論です。これは症状からの分類ですので外来診療に適した考え方といえます。まずはこの分類を理解するところから始めると、病態や経過そして起因微生物についての考え方も変わってきます。
急性気道感染症は加齢とともに減少
一般に急性気道感染症に罹患する機会は年齢が高くなればなるほど少なくなっていきます。米国の報告(1960年代)では40歳以上では年間1~2回の罹患とされています。また、日本で在宅医療を受けている高齢者(65歳以上)を対象とした研究によると、年間229例の発熱例のうち普通感冒は13例にとどまっていました。高齢者が「かぜ」と受診した際には急性気道感染症以外である可能性が相対的に高くなるわけで、より注意深く診療にあたる必要があります。
急性気道感染症(肺炎を除きます)の原因微生物のおよそ9割はライノウイルスやコロナウイルスなどのウイルスであると報告されています。急性気道感染症において細菌が関与するのはごく一部であり、その代表は急性咽頭炎におけるA群β溶血性レンサ球菌であり、急性気管支炎におけるマイコプラズマです。ウイルス性となると抗菌薬の効果を期待できないわけですので、多くの急性気道感染症には抗菌薬は効かないということになります。
*具芳明先生(国立国際医療研究センター病院)のコラムを抜粋し、改変
よく患者さんは風邪のために来院しましたとおっしゃいますが、基本的に風邪に対する特効薬はありませんのでその際には「どんな症状が今、一番酷いですか?」と聞き返すことにしています。我々の処方する薬剤はあくまで風邪の諸症状を改善する効果の期待できる可能性のあるものであってウイルス感染に対しての薬剤ではないのです。ですから上記の様なウイルス感染症である‘いわゆる風邪’に対しては抗生剤の効果は期待できないことになるわけです。