米国のインフルエンザ大流行はワクチンのせい?
インフルエンザには寛容に?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘インフルエンザには寛容に?’というお話です。
インフルエンザに罹った際などは本来具合が悪いなら休んだほうがいいのですが、「具合が悪いから休む」ことを許してくれない社会の現実もあり、会社を休むには誰もが納得するような強い根拠が必要になっている様です。その一つに「私は医師から〇〇という病気であり、XX日間出勤してはいけないと診断された」という証明などがあるのでしょう。これは理にかなっているのかもしれませんが、「なんだかなあ」という感じもします。
「なんだかなあ」と思う理由の1つは、インフルエンザに罹ってしまった人はその証明を得るために医療機関を受診しなければならず、医療機関側も、その需要で外来がオーバーフローしてしまっている現実があります。
「2つ目は、社会のしくみ自体が「インフルエンザっぽい→受診→迅速検査→抗インフルエンザ薬処方を受ける」という行動様式となり、具合がすごく悪い人もそうでない人もとりあえずこの行動様式に乗ってしまわないと不安になってしまう、ということです。
さらに3つ目は、根拠が出来ないときには困ったことになってしまうことです。インフルエンザ迅速検査はしばしば偽陰性(30-40%)になりますが、その際「検査はマイナスですが、あなたはインフルエンザだと私が診断しました」と医師が患者さんに伝えることを躊躇することがしばしばある様です。挙句の果てに「明日もう一度検査のために受診してください」などと伝えなければいけないことにもなり兼ねません。
私は、「医療的問題以外が医療の対象になること」が持つ難しい部分の一つは「重要な決断時に何か客観的なものに責任を預けてしまうこと」だと思っています。自分自身も会社も医療側も「インフルエンザなんだろうな」位のところで手を打っていただけるともう少し楽になると思うのですが。そして、医療者は社会が寛容さを手に入れるまでは「インフルエンザかどうか診断してほしい」と言って来院する患者さんには、もやもやを感じながらも「拝見しますね」という位の寛容さをもって診療にあたるのがよいのかと思います。*東京医療センター 尾藤誠司先生のコラムを抜粋し、一部改変
最近ではインフルエンザと思われる患者さんには迅速検査を施行せずに抗インフルエンザ薬を処方する救急センターも出てきています。その理由はそうしないと多くの患者さんを診察できないというセンター側の実情もあります。ただ、一番問題なのはインフルエンザの迅速検査が100%ではないために症状的に明らかにインフルエンザと思われる患者さんでも陰性に出ることがしばしばあるということです。当クリニックでは少なくとも今シーズンからは症状や経過などで明らかにインフルエンザと思われる患者さんに迅速検査が仮に陰性であっても抗インフルエンザ薬を投与することにしています。その方が患者さんのためでもありますし、医療資源の有効利用でもあると考えます。ただ、医療費のためには全例に検査など施行せずインフルエンザと思しき患者さんには抗インフルエンザ薬を投与するという手もなくはありませんが、それはクリニックレベルでは現段階では難しいかも?知れません。