医師は変人なのか?
胃がん検診のあり方?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘胃がん検診のあり方?’というお話です。
国民病とも呼ばれるがんに対する備えとしては早期発見、早期診断、早期治療が重要であることに異論はないはずです。時代が流れ、今では国民の2人に1人が癌に罹ります。医療が進歩した現代を生きる一個人にとって、現時点での癌検診の意味は何なのでしょうか? 「各臓器機能の喪失を甘受するか、否か?」ということに尽きます。医療は進歩しています。医療の進歩に今の国の癌検診がついていけていません。
実臨床で1人1人の患者さんと相対している内視鏡医の立場では、内視鏡的胃粘膜剥離術(ESD)が可能な超早期癌の発見にこだわっています。バリウムでの胃癌検診でESDが可能な病変を発見することは非常に困難です。胃を温存するために一番良い胃癌検診は内視鏡です。
国では、「死亡率の減少」をエンドポイントに設定した議論を相も変わらず続けています。QOLの維持を目的とした「内視鏡胃がん検診」の有用性を積極的に推進しようとはまだしていません。診療報酬上、上部消化管造影検査(透視診断)が110 点なのに対し、上部消化管内視鏡検査は1140点であることも、議論に乗せたくない理由かもしれません。しかし、新潟市での「内視鏡胃がん検診」では、1 例あたりの平均検査費用が、内視鏡検診1万1616円、バリウム検診1万1268円とほぼ同額であるにも関わらず、1例の胃癌を発見するために要した費用は、内視鏡検診126万2159円、バリウム検診347万8315円とのことでした。
どの癌検診でも同じですが、より簡便で、安価で、臓器温存を念頭に置いた超早期癌を発見できる癌検診は、残念ながらありません。しかし、死ななきゃいいという発想の癌検診と、1人1人のQOLまで考える癌検診、どちらを進めていくのか、そろそろ改めて考え直す必要があるのではないでしょうか。
*「死ななきゃいい」胃癌検診はもう時代遅れだ:中島恒夫先生(丸子中央病院消化器内科)のコラムを抜粋し、一部改変
我が福島市においては実は新潟市よりもさらに前から胃ガン検診においては30年余り前から内視鏡による胃ガン検診を推進しており、今では約8割が内視鏡で施行されている状況です。国もようやく今年から胃ガン検診を積極的に内視鏡で施行する様に舵を切りました。さらに5年前よりピロリ菌陽性の胃炎に対する除菌治療も保険適応となっており、今後数十年で胃ガンは30-40%は減少するであろうと推定されています。これからのがん検診は増え続けている肺がん・乳がん、そして大腸がんがメインターゲットになるものと思われます!