便秘で腎疾患発症?
腸内細菌に関して
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘腸内細菌に関して’というお話です。
細菌はなぜ腸管内に集まるのか,その理由は十分に明らかになっているとは言えない.膨大な数の細菌が常在することで,さまざまな機能を有し,時にヒトにとって必要不可欠であるかと思えば疾患の原因にもなり得る.また細菌叢が互いに耐性遺伝子の伝播を行うことで薬剤耐性の温床ともなる.今後の研究の進展により,多彩な疾患の予防や治療につながることが期待される.
腸内細菌叢の主役たる嫌気性菌の由来は古く,地球上に酸素が存在しなかった35億年も大昔から存在するとされる.20億年以上嫌気状態でいたが,15億年前になって酸素を産生する細菌が登場したとされている.この結果植物が登場し,光合成によって地球上には酸素濃度が飛躍的に豊富になった.シダ類の繁茂は大きな役割を果たしたとされる.約10億年かけて地球上の酸素濃度は,ゼロから現在の濃度に達した.そしてこの酸素を基に,エネルギー効率の良い酸化還元反応を活用する動物が誕生し,恐竜のような巨大動物も生まれた.同時に嫌気性菌の一部も,酸化還元反応を活用するようになった.いわゆる通性嫌気性菌の登場である.通常は酸素を活用するので好気性菌として振る舞うが,酸素がない環境に置かれると,元の嫌気代謝により生き延びることができる.大腸菌など多くの腸内細菌がこれにあたる.一方でBacteroides 属などのように,せっかく酸素があるにもかかわらず,かたくななまでに嫌気状態でのみ生存する偏性嫌気性菌も依然存在する.偏性嫌気性菌は,なぜ古代の代謝形式のままで存在するのであろうか.その理由の一つは時間軸にあると考えられる.35億年前から存在する偏性嫌気性菌にとって,酸素が登場したのはごく最近である.ヒトの誕生は35億年の歴史の中のほんの一瞬にすぎない.地球上はそもそも偏性嫌気性菌の世界なのである.したがって,地球上の代謝は嫌気性菌の存在なしには成り立たない.例えば嫌気性菌の働きがなければ,地球上の動植物の死骸を分解することができない.年間5,000億~1兆トンの有機物が地上を埋め尽くしてしまう.人間が出すゴミの量は年間5億トンとされており,嫌気性菌の処理能力の高さがいかに重要かわかる.さらに嫌気性菌は,窒素やリンといった生物の代謝に不可欠な物質を生み出す.身近な生活でいえば,チーズ,味噌,漬物など,われわれが食べている多くの食品も嫌気性菌の発酵の恩恵を受けている.このように「せっかく酸素があるのに,古くさい代謝形式で意地を張って勿体ない」と思うのは間違いで,嫌気性菌が作り上げた世界に,ごく最近登場したのがわれわれなのである.
腸内細菌に関してはまだまだ未知の部分がありますが、今後様々なことが解明され、ひいては難治性の炎症性腸疾患の治療にも貢献する可能性が大と思われます。