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善玉HDLは高すぎても危険?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘善玉HDLは高すぎても危険?’という報告です。
高密度リポ蛋白(HDL)コレステロール値と総死亡率との関連はU字型であり、男女ともHDL-C値が極めて高い場合は総死亡リスクが高かったことが、観察研究で示された。この研究はHDL-C値が高過ぎると総死亡率が高くなるという仮説を検証する目的で行われた。一般集団を対象とした2研究から、デンマーク人の白人を組み入れた。
主要評価項目は総死亡で、デンマーク市民登録システムで確認した。死因については癌、心血管疾患、その他の3つに分類した。副次評価項目は虚血性心疾患、心筋梗塞、虚血性脳卒中とした。対象は、男性5万2268人および女性6万4240人だった。一般集団におけるHDL-C値の範囲は男性より女性の方が広く、平均するとHDL-C値は女性の方が高かった。HDL-Cと総死亡リスクとの関係は男女ともU字型であり、総死亡率はHDL-C値が低い患者だけでなく高い患者でも上昇していた。総死亡率が最低となったHDL-C値は男性が73mg/dL、女性が93mg/dLだった。多因子で補正した男性の総死亡の危険率はリスクが最も低かった男性を基準とした場合、97-115 mg/dLの男性で1.36倍、116mg/dL以上の男性で2.06倍だった。女性の総死亡の危険率は、リスクが最小だった女性を基準とした場合116-134mg/dLの女性で1.10倍、135mg/dL以上の女性で1.68倍だった。
死因別では、HDL-C値と心血管死との間にも男女ともにU字型の相関がみられ、HDL-C値が最も高い群は心血管死の発生率が高かった。男性では、リスクが最小だったHDL-C値58-76mg/Lの群を基準とした場合、HDL-C値116mg/L以上の男性の危険率は2.53倍だった。また女性では、リスクが最小だったHDL-C値77-96mg/Lを基準とした場合、HDL-C値135mg/L以上の女性で2.89倍だった。心血管評価項目については、虚血性心疾患と心筋梗塞でHDL-Cが低値の場合にリスク上昇を認めた。HDL-C値が高くなるにつれてリスクは低下したが、HDL-C値が男性で58mg/dL、女性で77mg/dL前後になると、それ以上のリスク低下はみられなくなった。HDL-C値が極めて高い患者に有意なリスク上昇はみられなかった。虚血性脳卒中も同様のパターンだった。
著者らは今回の結果の臨床的意義として、「HDL-Cは高値であるほどよい」という概念が極めて高いHDLコレステロール値にはあてはまらないこと、そして現在開発されている薬はHDL-C値を大きく上昇させる可能性があり、総死亡リスクの上昇が懸念されることの2つを挙げている。
HDLコレステロールはコレステロールの中では一応、善玉とされてはいますが、あくまでも比重で分けているだけで本当に純粋な意味での善玉であるか否かは疑問視されています。その一つの証拠として今まで検討されて来たHDLコレステロールを上昇させる薬剤で心血管イベントがことごとく抑制されなかったということが挙げられます。つまりは比重だけで分けているHDLコレステロールの中に純粋な善玉と実は悪玉に近いHDLなどというものも潜んでいる可能性が否定出来ないのです。