HbA1c値だけで血糖変動評価は困難?
運動療法の効果、個人差の理由?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「運動療法の効果、個人差の理由とは?」という報告です。
運動療法の効果の個人差とは?
身体活動の低下は、肥満・糖尿病・高血圧・脂肪肝などの様々な生活習慣病に繋がることは認識されています。反対に、運動はそういった生活習慣病の予防や治療に効果的と言われ、治療法の一つとして、定期的な運動が推奨されています。しかし、運動の効果にはかなりの個人差があり、運動を行ってもなかなか効果の出ない人のいることが報告されていました。近年、内分泌臓器と考えられていた臓器とは異なる臓器から分泌される液性因子が、インスリン抵抗性などの発症に影響することが知られるようになってきました。
肝臓に由来する分泌たんぱく質の中で、全身に様々な作用もたらす新たな機能が同定されたものを「ヘパトカイン」と総称します。肝臓はこのヘパトカインの生産を介し、全身のインスリン感受性(インスリンの効きやすさ)を亢進・誘導することで糖の恒常性を制御している可能性があります。 セレノプロテインPはヘパトカインの一種で、その過剰生産が多くの病態に関与していると言われています。また、糖尿病、脂肪肝、そして高齢者で多く発現していると言われ、健常者と比較し、糖尿病患者では約8倍もの遺伝子発現量の上昇がみられました。セレノプロテインPは肝臓でのインスリン抵抗性を誘導するとともに、骨格筋での糖の取り込みを低下させることで血糖値を上昇させることが知られています。さらに近年、過剰なセレノプロテインPが受容体を介して筋肉に取り込まれ、抗酸化タンパクを誘導し、その結果、運動で生じる活性酸素量が抑えられ、運動による健康増進効果が出にくくなることもわかりました。肝臓で産生されるセレノプロテインP は、運動を行ってもインスリン抵抗性が改善しにくい人の血中濃度が特に高いことが明らかとなり、運動抵抗性の原因の一つが肝機能の悪化によるものという新しいメカニズムが解明されました。現時点でどのような介入をすればセレノプロテインPを減らすことができるかは明らかでありませんが、今後はこのセレノプロテインPを減らす薬の開発や、筋肉での受容体阻害薬の開発、さらには血中濃度の測定により、その人の運動抵抗性が悪くなる前の診断も可能になることが期待されます。
確かに運動をしても直ぐに効果が出る方とそうじゃない方がいるというのは感覚的に分かっていましたが、この様なメカニズムがあるようです。糖尿病の原因にインスリン抵抗性があると言われていますが、これはある意味の運動抵抗性物質の一つが解明されたということです。
昨日は東京ドームでミスチルの25th記念ライブでした!