中年期における認知症のリスクとは?
日本でも認知症減少の可能性?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「日本でも認知症減少の可能性?」というお話です。
認知症と教育レベルが密接に関連することは以前から知られている。例えば、国際アルツハイマー病協会では、世界中の良質な研究の解析を行っており、高レベルの教育歴が認知症の発症を抑制することは先進国だけでなく中進国でも認められ、低レベルの教育歴に対するリスク減少効果は全体として約40%だという。このようなことから疫学研究者の間では、認知症の研究を行う上では教育年数を補正することは常識となっている。
1つには、高い教育を受けた者は健康に関する情報の理解力が高く、糖尿病など認知症の危険因子を回避するような生活を送る可能性が考えられる。また、高学歴者=高収入者とすると、高い教育を受けた者ほど医療機関へのアクセスが良好で、危険因子の管理がしっかり行える利点もあるだろう。
一方、高度な教育を受けたこと自体が認知症の抑制につながる可能性がある。アルツハイマー病(AD)の病理学的特徴としてアミロイドβ(Aβ)の蓄積が知られているが、剖検脳の検討などから、Aβの蓄積と認知機能の低下が必ずしも相関しないことが明らかにされている。病理学的にはADを発症しておかしくなくても、死亡するまで認知機能を保持したままの高齢者が少なくないのだ。この謎は「認知予備能」という概念を用いることで解くことができる。これは、脳はトレーニングを行えば行うほど神経細胞が賦活化され、ADの病理変化に拮抗する能力(予備能)を持つようになるという仮説だ。この仮説に基づくと、高度な教育を受けた人は、生涯を通じて高い知的活動を続けるであろうから認知予備能が高く、Aβの蓄積が進んでも認知症の発症は遅延すると考えることができる。
日本ではまだそれを示す研究はない。認知症の好発年齢は75歳以降だが、現在のその年齢層で大学教育まで受けた者は少ない。しかし、間もなく高レベルの教育を受けた団塊の世代が認知症の好発年齢を迎える。そのころには、日本でも認知症の有病率が減少に転じるかもしれない。むしろ、国民皆保険制度のある日本でこそ認知症の抑制が期待できるかもしれない。重要なことは単に高学歴であるということではなく、教育経験を生かして生涯を通じて脳を使い続けることだ。特に退職後に、どれだけ知的生産性を保てるかが重要で身体活動性の高さも認知症予防に重要と考えられる。高齢者が頭と身体を使って生活を楽しむことのできる社会づくりを進めることが有効な認知症対策になる。高齢人口の増加は避けられないが、認知症の有病率の増加は阻止できる可能性はまだまだある。(*桜美林大学 鈴木隆雄先生への取材内容を抜粋し、一部改変)
認知症は現段階では増加の一途を辿ってはいますが、米国では減少に転じているという報告があり、今回の鈴木先生のお話で今後日本においても認知症が減る可能性に言及しておられます。最近の研究で日頃脳を使っているような方々は認知症になりにくいというデータが続々と出ていますのである意味で今後の超高齢化社会の担い手とも言われている団塊の世代の高齢化がもしかすると認知症減少の鍵になるのかも?知れませんね!