医師の4割超は過労死寸前?
福島市夜間急病診療所が診療継続の危機に?
おはようございます。さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は先日、福島市医師会報に掲載された私の文章「福島市夜間急病診療所深夜帯の診療が継続の危機に?」を転記したいと思います。少し長い文章ですが、これをお読みになると福島市の医療の一端がお分かりになるかと思います。
『福島市夜間急病診療所深夜帯の診療が継続困難の危機に?』
今、福島市の夜間診療の一次・二次救急体制が危機に瀕しています。皆さんも一度は診療で訪れたことがある福島市夜間急病診療所において来春からの看護師不足により深夜の診療継続が難しい状況が起こりそうなのです。
福島市夜間急病診療所は昭和50年7月に旧福島保健所東側で内科・外科の二科による準夜帯までの診療体制でスタートしました。その後、平成5年3月の福島保健所新築移転に伴い、一時現青少年センターに移転。平成10年10月1日より現在の場所へ移転し、小児科及び深夜帯の診療も新たに開始となりました。平成10年の開始当初は9000名弱だった受診者数も年々増加の一途を辿り、平成25年からは14000名を越える程にまで増加。今や福島市はもとより周辺市町村の夜間救急診療の要として機能していると言っても過言ではない状態になっています。
福島県下ではいわき市や郡山市ですらなしえていないこの様な夜間の診療体制を維持できている要因は福島市医師会所属の先生方の尽力は言うまでもありませんが、福島県立医科大学の内科・外科をはじめとした関連医局の若手を中心とする諸先生方のご協力の賜物である事を肝に銘じなければなりません。
その夜間救急の要が来春の看護師の定年に伴う人員不足により、深夜帯の診療継続が困難な状況になりそうなのです。その最大の理由は看護師の募集によっても人員が確保できないことが一番であるようですが、実はそれ以前に看護師の給与体系に最大の問題があるようです。ハローワークなどに告知している給与は準夜や深夜帯の勤務で有るにも関わらず日勤勤務の他医療機関の給与より明らかに低いのです。この件に関しては医師会サイドからも福島市に何度か要望は出してはいるようなのですが、一向に改善の兆しが見られて来なかったようです。福島市の担当者はそれに関しては「予算の問題があってとか、市職員の給与体系に準じているので…」と返答するばかりだったようです。
それでは福島市は福島県下の他市と比べて医療関連事業に多くの予算が使われているのでしょうか?結論から言えば、それは著しく「No!!」なのです。ネットで検索すると平成28年度予算案の概況は閲覧することが出来ますが、福島市は郡山市やいわき市と比べても医療を含めたその関連の予算と考えられる民生費は60億から130億円程度も低い予算になっているのです。実際の額としては福島市が民生費344億5千万あまりで歳出に占める割合が18.3%であるのに対して郡山市では410億円弱で30.4%、いわき市はいわき共立病院を運営していることもあってか475億円超でその割合は34.2%にも達しているのです。
実際には人口や年齢構成も違いますので一概に単純な比較は出来ませんが、民生費の割合からするといかに福島市が医療関連事業に予算をつぎ込んでいないかが分かります。
さらに休日在宅当番医制運営費補助には何と年間で500万弱しか計上されておらず平成28年度の祝祭日・年末年始は70日あまりですから、1日に4-5箇所の診療所が参加していることを考えると1診療所あたり1万ほどの補助しか出ていない計算でこれでは診療所のスタッフの手当にも程遠くそれぞれの診療所の自助努力で診療しているような有様です。今回、問題となっている夜間急病診療所運営事業には1億8千万あまりが計上されていますが、1日当たりでは50万程度にしかなっていません。この金額で準夜帯の医師3名と看護師3名、事務職2名、深夜帯の医師1名と看護師1名、事務職1名及び諸経費を賄っているのですから福島市及び周辺市町村の夜間診療の要に対する費用としてはお粗末と言わざるを得ません。
福島市は28万超の県庁所在地であるにも関わらず周辺に福島県立医科大学附属病院があるとは言え、県立病院や市立病院すらなく、私立の大原綜合病院や準公的病院である済生会病院や日赤病院などに医療を任せきっていると言えなくもありません。そこには基を辿ると明治時代初期まで遡ることにもなる深い理由があるようなのですが、ここでは触れないことにします。いずれにせよ他市に比べても著しく低い医療関連の民生費…この辺から今後、福島市の夜間救急診療を考えていく必要があるのかも知れません。
昨朝の通勤路の光景。今冬一番の寒波で一面、銀世界となりました!