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コラム

「大和心」を失った果ての引きこもり現象

2022年11月21日

テーマ:解決のための視点

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

目 次

1. ありのままを認められず人に怯える

2. 非日常的な逸脱行動で子どもは親に気づきを促す

3. 魂の呼吸不全

4. 神話に見える民族の精神構造

5. 大和の國の「和」の精神


ありのままを認められず人に怯える

私の講演の参加者の方の感想に多いのは、「もっと早く聞いておきたかった」

「わが家も人ごとではない」といったものです。

それは、不登校、引きこもりは、特別な家庭で起こるものではなく、どこの家庭でも充分

起こりうるということを実例を通してお伝えしているからです。

なぜなら、今の家庭は子どもたちにとって、安全な場所でありえず、また人格形成の範と

なるべく対象の不在が生じているからです。



自己同一化を仕損じ、極めて不安定な自己像をあらわしています。

そのために過剰なまでに周囲の評価を気にし、見捨てられることへの怖れの感情を強く

もっています。

安全な場所ではないということは、"ありのままの自分"をそのままでは受け入れられず、

親の期待、要求にそえなければ、愛情をもらえないといった〈条件つきの愛情〉の侵入の

危険にさらされているということなのです。

非日常的な逸脱行動で子どもは親に気づきを促す

私たち親は、本来の子どもの人格、存在を敬っているでしょうか。

「愛して敬せざれば、是を獣畜する也」という言葉もあります。

両親が夫婦として互いに敬い、親が子を敬愛すれば、自然子どもたちは、親を尊敬する子

に育つでしょう。また他人への共感を示すことの出来る人間に成長していくでしょう。

いま社会から遁れ身を隠す子どもたちは、自己の尊厳性を脅かされ、他を思いやれぬ、

自尊心の欠落した状況にあります。

気づかない内に子どもたちの求めを否定し、無視してきた親たちに対し、象徴的な態度、

行為(不登校・引きこもり・暴力・非行など)によって、子どもたちはシグナルを送ってきます。

そのシグナルを読み取ることこそが、親が親であり続けられる唯一の手だてとなるのでしょう。

魂の呼吸不全

以前、「危うい日本人の精神構造」と題した論評(北山忍教授〈ミシガン大〉)を読む機会が

ありました。

要旨は、

『農耕文化の日本では、共同体の協調という美徳と習慣によって、人間関係の中で自分を

見つけ、社会の期待に沿うことで生きがいを見いだし、仲間と接することで自己研鑽に

励むといった深層心理がある。

一方で、西洋の個人主義を自分なりに理解し、自律した自己を実現するためには、他者との

関係を否定すればいいという図式が定着し、「魂の呼吸不全」に陥ってしまっている。

解決策は一つ。

風通しのよい、個人の尊厳を尊重する関係の在り方を、家族、職場、学校、地域社会そして

国を挙げてつくりあげることに尽きる』



「自律した自己」というのを、他者に依存しない、つながりに頼らない生き方といった偏狭

で極端な解釈としてしまっていることの危うさを示しておられるのだと思います。

神話に見える民族の精神構造

その国の精神構造を考えるときに、それぞれの国に残る神話を読み解くことで認識できる

ものです。

日本の神話では自然が豊かな分、すべての生きとし生けるものは「天(神)の恵み」であり、

「神の分け命」と見て、すべてを同胞と捉えています。

山や川、海、風、樹木や砂粒にさえ神の名をつけ、崇めています。

大自然に生かされながら、共同体の中で互いが支え合って生きているといった自覚、慎み

があったのです。

しかし、今や惨憺たるありさまですね。



映える写真を撮ることは熱心でも、自然は汚して平気。

給食費を払っているから、「いただきます」は言わなくていいと子どもに教える親。

「命をいただく」という意味も分からず、生かされているという認識のない傲慢さ。

大和の國の「和」の精神

北山教授の見解は大枠共感できる内容ではありますが、「風通しのよい、個人の尊厳を

尊重する関係」とは、具体的にどのような在り方でしょうか。

個人の"尊厳"そのものも今の日本人がはたしてどれだけ認識できているのだろうかという

思いがあります。

ネット社会の中で、裏サイト、殺人サイト等で、匿名による誹謗、中傷。誰にも分からな

ければ、誰からも見られていなければ何をやってもいいと言わんばかりの状態です。

「ウザイ」「キモイ」「死ね」と個人の尊厳を冒涜する言葉をなんのためらいもなく発する。

人間として、最も卑劣、卑怯な行為であることが分かっていない。 



聖徳太子は、十七条憲法のはじめに『和をもって尊しと為し』と記しています。

「和」は、違いはあってもお互いを尊重しあいながら、活かしあっていくことです。

『共に是れ凡夫のみ。是非の理な んぞ能く定むべき』と続きます。

「彼も私も共にいたらない凡夫である。どうして、どちらが正しいということ を決める

ことができようか」

互いが、凡夫を自覚する謙虚さが必要ですね。



「和」は「やわらぎ」と読みます。

相手を敬い、おだやかでむつまじい関係性が「和」なのでしょう。

「ひと」は、「霊(ひ)止」が語源と言います。

すべてが神の「分霊(わけみたま)」

彦は「霊(ひ)子」姫は「霊(ひ)女」

魂(たましひ)は「賜りし霊(ひ)」

分け命(御霊=みたま)としての個々の独自性、尊厳性を活かしていける社会が、ひきこもりを

生み出さない社会でもあるでしょう。



「自律」自らを律することが出来る者は、自分の倫理観、行動規範をしっかりと持ち合わせ

ています。誰が見ているではないのです。

大自然に生かされていることを自覚し、天(大自然の道理)を相手に生きる。

近代の「人でなし教育」により家庭は機能不全をおこし、

魂は呼吸不全をおこしている日本人はどこへ向かっていくのでしょうか。

この記事を書いたプロ

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀(NPO法人地球家族エコロジー協会)

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