コンプレックスはセルフケアのタネ
『過去の失敗を繰り返すのでは、と想像すると、不安が強まって辛い』
こうしたご相談を受けました。
起きないかもしれないけど起きるかもしれないネガティブな想定は、振り払うことが難しくストレスになります。
もちろん個々それぞれに出来ることを試していらっしゃると思いますが、それでも不安だから辛いのですよね。
起きてほしくない事態への不安感を感じた時、どう対処すればよいかを考えました。
1.不安とは
①不安の定義
不安(ふあん、英語: anxiety, uneasiness)とは、心配に思ったり、恐怖を感じたりすること。 または恐怖とも期待ともつかない、何か漠然として気味の悪い心的状態や、よくないことが起こるのではないかという感覚(予期不安)である。(wikipedia)
何か「良くないことが起きるのでは」という予想に対して、自分が「良くないこと」へ十分に対処する自信が無かったり、「良くないこと」が自分へ及ぼす影響(危害)が恐ろしかったり、対処方法が思いつかず「何もできない、その状態が起きたら耐えるしかない」と想像して気持ちが不安定になることです。
「上司に怒られたらどうしよう」という日常的な不安、「もしも無一文になったらどうしよう」というリアルと妄想の中間のような不安、「明日大地震が起きるかもしれない」という個人での対処能力を超えた不安など様々あるでしょう。
②不安が生活に及ぼす影響
不安感が強すぎると、その感情に支配されて他のことに集中しづらくなります。
日常生活の中には、集中力を要する行動がたくさんあります。
家事は火や刃物を使います。車の運転は周囲への配慮や咄嗟の判断力が欠かせません。誰かと会話するとき集中出来なければうわの空になって相手から不興を買ったり、話の内容を覚えていなくて後で困ることも予想されます。
不安感は常に緊張を強いてきます。心からリラックス出来ない状態で長時間、長期間過ごすことで自律神経が乱れます。自律神経がバランスを崩すと、まず最初に睡眠の質が下がります。十分な睡眠が確保できないと、心身の疲労が回復出来ないまま翌日以降へ持ち越されて行きます。体調不良は血行不良、血圧や心拍の上昇を招いて、更に不安感が強まってしまいます。
不安感を抱え続けると、その場を十分に楽しむことも出来なくなります。不安を抱えた状態で友人と会食をしても、家族と一緒にいても心から楽しむことは出来ず、それは相手にも伝わって対人関係にも負の影響が出るでしょう。
2.不安の原因
①何が不安に関係しているか
一般的には以下の6つの要素が考えられるでしょう。
一つ目は将来への不確実性から来る不安です。将来どうなるか、が明確に分かる人はいません。もしも、を想定することで未来への不安を感じます。
二つ目は未知の環境や状況に対する不安です。どんなに経験を重ねても未知の場ややったことが無いことと直面することはあります。未知だからどう変化するかもわからない。だから不安になってしまうのです。
三つめは他者との交流の場です。対人関係が得意という人は多くありません。「人間関係を築くことが苦手」と答える人は7割以上というアンケート結果もあります。苦手な状況で不安を感じるのは当然といえます。
四つ目はストレスフルなライフイベント(人生上の出来事)です。失業、健康問題、対人トラブル、結婚出産、転居、進学、転職、天災、事故など。悲運な出来事だけでなく、一見喜ばしい出来事に対しても人はストレスや不安を感じます。
五つ目は過去のトラウマ的体験です。トラウマとは「命の危険を感じるほどの経験」によって負った心の傷のことですが、それほど重大事ではなくても心を傷つける出来事を日常的に体験することによってもトラウマになります。例えば職場での嫌がらせ、親やパートナーからの暴言なども不安を呼び起こす原因となります。
六つ目は健康状態です。医学的な診断を受けるような症状に限らず、睡眠不足によって体内時計が狂ったり、女性の生理などによるホルモンバランスの崩れ、病院に行くほどではないと判断する程度の体の痛みなども不安感に繋がります。
②どうして不安を感じるのか
まずは「認知」が関係します。
認知とは、物事をどのように見てどういう意味付けをするか、という自分の思考傾向です。
ネガティブな気分につながりやすい認知傾向の人は、不安を感じやすいと言えるでしょう。
ストレスへの対処スキルによっても違います。自分がストレスに感じるような場面に遭遇したとき、その状況へ的確に対処できるか、ストレスを感じた自分をスムーズに回復させられるか、に自信を持てないと不安はついて回ります。
社会的なサポートが少ないことも不安に直結します。何かあった時に助けてくれる、SOSを出せる相手がいなければ独力で全て対応しなければならないと考えて、不安を感じるのは当然といえます。
3.不安への対処方法
こうして見てみると、毎日の生活の中には不安のタネがゴロゴロ転がっているように思えます。
不安は特別なことではなく、日常的な課題なのです。
といっても、生活に支障をきたすような不安はやはり困りますよね。
不安は「感じないようにしよう」とすると余計気になってしまって不安を強める、という特徴があります。
不安は、不安を喚起する事態が実際に起きた時に『自分はちゃんと対処できるから大丈夫』と思える自信を持つことで、必要以上に強くなることを防ぐことが出来ます。
では、どういう方法があるでしょうか。
①認知を変える
上述したように、認知は不安を大きくする要素の一つです。
認知は性格というよりも、長年の経験や学習結果、他者から言われた言葉などによって出来上がっています。ほぼ自動的に自分の行動を支配するものなので、そもそも自分がどんな認知を持っているのか、すらわかりません。
その認知と向き合い、認知のパターンを変える『認知行動療法』を受けることで不安を軽減することが出来ます。
②薬物療法
不安が強まり過ぎたり常態化すると「不安症」「不安障害」などのような病気として診断されることがあります。
病気の場合はそれを和らげるための薬を処方されることがありますので、活用することも軽減する方法の一つです。
③ストレス管理
不安を覚えることで精神的な緊張感が続きます。それはストレスに繋がります。不安はストレッサー(ストレス源)であり、ストレス反応でもあります。
ストレスに対処することを「ストレスコーピング」と言いますが、自分の不安の原因に併せたコーピング方法を試すことで不安を軽減出来ます。
≪こちらもご参照ください≫
【ストレスにはどう対処する?】
https://keizenan.net/
④専門家からのサポートを受ける
不安は、一過性のものもあれば繰り返したり長期間感じ続ける不安もあります。一過性なら心配する必要はありませんが、何度も繰り返したり長い間抱え続けるような不安は、一人では対処しきれない根深い問題が絡んでいる可能性が高いです。
その時は専門家の支援を受けましょう。医師、カウンセラー、ソーシャルワーカーなど。必要に応じて更に法律家や経済面の専門家に繋がることもあるでしょう。
4.今すぐできる不安への対処方法とは
不安が強まって辛い、と感じるレベルだと、<3>で述べたような根本的な対策が必要です。ですがこうした対処法は根本解決になる分効果を感じるまでに時間がかかるでしょう。それまでの間ただ耐えるだけ、というのは、それもまたストレスですし不安ですよね。
根本解決を図りつつ、今すぐできる不安への対処方法も試してください。
①規則正しい生活
何はともあれ人間の心身の健康はライフスタイルにあります。もっと言えば衣食住+睡眠です。これは自律神経に直結します。規則正しい生活サイクルは自律神経を整えて、自分が本来持っている健康を引き出すことが出来ます。
- 1日7時間以上眠る
- 栄養バランスの取れた食事を腹八分目を目安に取る
- 適度な運動(1日30分以上のウォーキングなど)
- リラックスタイムを持つ(1日30分かそれ以上)
全部を一度に始める必要はありません。今日、今からすぐ出来ることから始めましょう。
≪こちらもご参照ください≫
「自律神経ケアでメンタル美人になろう」
https://keizenan.net/
②笑う
不安が強い時に笑え、と言われても難しいかもしれません。
ですが笑うことは、心の健康にプラスの影響を与えます。心が健康に近づけば不安も必要以上に強まることが無くなります。
コメディ映画、お笑い番組、アニメ、マンガ。他にも自分が笑顔になれるものならどんな者でも効果があります。
③趣味を楽しむ
大人になると仕事が趣味になってしまったりしますが、それでも「自分を楽しませる側面」があれば、趣味として数えていいと思います。
趣味は、好きなものであればあるほどその世界に没頭出来ます。没頭している間は他の思案から解放されます。
趣味を楽しいと思えるのは、その世界では自分が高く評価されたり、得意だったりするからではないでしょうか。趣味は自己肯定感も高めてくれます。
④体を動かす
不安から解放される方法の一つに「マインドフルネス瞑想」がありますが、マインドフルネスの一番の目的は、瞑想することではなく『今この瞬間の自分に意識を集中する』ことです。不安は過去から生まれた要素が未来を悪いものに見せることで湧き上がります。今ここにはありません。不安がない「今ここ」と繋がる方法として、体を動かすことも非常に有効です。
5.不安は感じないようにするのではなく、対処できる自信を持つことで軽く出来る
不安を感じないようにしよう、とすると、不安に直接・間接的につながる要素を次々と排除し始めます。
その結果、家から出られず、誰とも会えず、何にも挑戦できない状態が待っています。
確かに不安要素は減ったかもしれませんが、その状態を望んでいたわけではありませんよね。
不安は、不安を呼び起こす「怖い未来」が起きても自分が対処できる自信をもち、必要以上に大きくしないよう心身をケアすることで向き合っていきましょう。
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