<共感の効果と質問のコツ>
うつ病(その他精神疾患)になったり家族がそうなると、どこかで「他のうつ病の人やその家族は……」と比べてしまうことがあります。
比べてしまったときどう考えればいいか、比べてもダメージを受けないためにはどうすればいいか、を考えました。
1.ケアラーは何を比べる?
家族の誰かをケア(看護、介護、看病、世話)する人を「ケアラー」と呼んでいます。
ケアラーは、自分・自分たちの状況と何を比べてしまうでしょうか。
- 他のケアラー、家族
- 専門家
- 書籍
家族が病気になれば、回復してもらうため、支えるためにとにかくケアラーは勉強します。皆さんすごい勉強家で、ある分野においては専門家と同じくらい情報量を持っています。
たくさんの情報に接する中で、成功事例や体験談にも接します。
事例には家族構成や病名、年齢なども書かれています。自分たち家族にとても近い事例にも出会います。
すると、「どうして私たちはこの人達みたいに出来ないんだろう」と、現状と比較して落ち込んでしまいます。
専門家の意見に対しても同様に、「先生が言っていることがどうしてすぐに出来ないんだろう」と、自分の努力不足・スキル不足のように感じて悩みます。
書籍も同様ですね。専門書は分かりやすくするために図やイラストが多く使われていますが、図の流れと同じように進まない自分(達家族)に失望してしまいます。
2.どうして比べる?
ケアラーに限らず、自分と他者を比べることにそれほど意味はないことは、ほとんどの人が実感していると思います。
けれど比べてしまう、比べざるを得ない状況に自分を置いてしまう。
何故でしょうか。それは
- 分からないことが多い
- 自信がない
- 先が不安
だからではないでしょうか。
家族がうつ病などの精神疾患になる、という状況は、誰もが経験することではありませんし、「慣れた」なんてこともあり得ません。
どんな病気か、何に気をつければいいのか、家族に出来ることは何か、どうすれば治るのか、など分からないことだらけです。
だから情報を漁る。たくさんたくさん、納得できるものに出会えるまで探す。
その過程で比べてしまいます。
自信がないのも同じですね。
例えば主治医に言われたことを頑張って守っているけど、本人には何の変化も無いように見える。「これで本当にいいのだろうか」と、自分がやっていることに自信が持てなくなって「他の人はどうしているんだろう」と気になって比べる。
将来へ不安は拭いきれません。
目の前にないのですから、余計どうなっているのか想像もつかない。
過去うつ病だった人がどうやって社会復帰したか、の過程を知りたくなります。そして復帰した人の初期と自分たちの今を比べるのです。
3.比べるにはコツがある
比べてしまうこと自体は、ある意味仕方がないと思います。
ただ、比べる時に
- どこを見るか
- 得た情報をどうやって活用するか
- 何を切り捨てるか
によって、ケアラーのメンタルヘルスへの影響が変わってきます。
まず「どこを見るか」。
例えば成功事例や体験談に接したとき、「自分たちが変えられるところ」に着眼しましょう。
たまたまパートナーが医療関係者だった、とか、実家が裕福だった、のような変えようがない点を見ても仕方ありません。
「フルリモートの仕事への転職を目指した」
「音が気になるから静かな地域に引っ越した」
のように、「これならできる」という要素を見つけましょう。
「得た情報をどう活用するか」ですが、「何を得たか」よりも「その時本人は・ケアラーは何を感じていたか」のほうが役に立つし支えになります。
「何を得たか」は人それぞれ目指すものが違えば違ってきます。比べても仕方ありません。
それよりも「死にたい、と言われたときにどう思ったか、その気持ちに自分でどう向き合ったか」などのほうが支えになります。
「何を切り捨てるか」は、自分たちには操作不可能な要素についての情報です。
持って生まれたものは変えられないし、年齢も変えられません。
折角頭と心を使って悩むのですから、現実の行動に結びつく要素について考えるほうが自分たちにとってメリットになります。
4.同じ家族は二つとない
困難で初めての体験は大きく強い不安がついて回ります。
出来るだけ早く医療や福祉などの専門機関に繋がっていただきたいですが、専門機関側も家族の力をとても頼ってきます(私も福祉関係者なので反省を込めています)。
本人が判断出来ない状況なら、次の優先度は家族です。だから家族に「どうすればいいか」の判断を迫ります。
しかし家族だって分からないことだらけなのだから「どうしたい?」と聞かれたってわかりません。
だから「他の人はどうしているんだろう」と、比べるネタに近づいてしまう。当たり前のことです。
必要に迫られて自分たち以外の家族の事例と接して自分たちと比べた時、「自分たちには○○がない」「○○が出来ない」と「無いこと探し」を頑張るのではなく、「あること探し」をしましょう。
逆の視点を持つことで、自分たちには出来ることが他にもある、可能性もある、だから焦って悪いことばかり考えなくていい、と気づけます。
逆の視点を持つことで「ストレングス」が見つかります。日本語では「強味」です。
「違い」はそのまま「強味」になりうるのです。
『ヨソはヨソ、ウチはウチ』というのは昭和のお母さんの口癖ですが、とてもいい言葉だと思います。比べたって仕方ないのです。環境も性格も特徴も何もかも違う「ヨソ」と同じであるはずがないのですから。
世界に一つしかない自分たち家族の強味で、家族の課題を乗り越えていきましょう。
【ココナラ】オンラインカウンセリング惠然庵