気分が落ち込んだ時の対処法 ①仕事編
「仕事のストレス」について考える第4回目のテーマは「心の病」についてです。
ストレスや疲労が溜まれば病気になってしまう、というのは、どたなも分かっていることだと思います。
分かっているのに、仕事が理由での健康被害は後を絶ちません。
仕事✕ストレス=病気になる流れと、対策方法について考えてみました。
1.仕事が理由の抗ストレスで起きやすい病気
①うつ病
メンタルな病気で最もポピュラー、かつ仕事と関わりが大きいのが「うつ病」だと思います。
どうしてうつ病になるのか(発症機序)は、まだ分かっていません。
脳内分泌物が影響している(モノアミン仮説)とか、うつ病になりやすい性格(メランコリー親和型)がある、など言われていますが、あくまで「説」の一つです。
仕事は、体にも心にも大きな負荷を要求します。どうしても無理しなければいけない場面がほとんど毎日連続して起こります。
そうした毎日の中で1日分の疲労を翌日に持ち越す日が続くと、どこかで無理が生じます。
一番影響を受けやすいのは睡眠です。そして睡眠時間を削るのがやたらと上手なのが日本人です。
数週間、数カ月単位で無理をして、気が付いたときにはうつ病になってしまっていた、という人は多いと思います。
②適応障害
新しい環境に適応出来なかったり、適応しようと無理をし過ぎたことで心のバランスが崩れてしまい、不安、不眠、食欲不振、意欲の減退などが表れてくる病気です。
環境が変化することは、それが一見おめでたいこと(結婚、新居購入、昇進、栄転)であっても、人間は適応するために無理をするのでストレスを感じてしまいます。
特に新年度・新学期を迎えるこれからの時期は気をつけたい病気です。
③依存症
仕事のストレスや過労、それらから不眠になったり強い不安や緊張を感じるようになると、そこから逃れようとして何かに依存してしまうことがあります。
多いのは「アルコール依存」ですね。寝る前に一杯ひっかける習慣が出来て、最初のうちはそのお蔭で眠れても、どんどん酒量が増えていきます。
そのうちお酒が無いと過ごすことが出来なくなります。
酔っぱらって出社するわけにはいきませんから、会社を休みがちになります。
体への負担も大きいです。肝臓や血管障害、心疾患にも繋がります。
④高血圧、心疾患
ストレスや緊張を感じる時間が続くと、体は交感神経が優位になります。交感神経が優位な時は血管が収縮(狭くなる)するので、血流が悪くなります。
血流が悪くなると全身に栄養や酸素が巡らなくなります。それでも頑張って心臓が血液を巡らそうとするため、心臓への負担が大きくなり、高血圧や心不全などの病気へつながります。
⑤不眠症
抑うつ症状などとセットになりやすいですが、どうしても上手に眠れない、という社会人は多いです。
眠ろうとすると昼間の嫌なことや、明日やらなければいけない予定やタスクが頭に浮かんできて、リラックスどころではなくなります。脳が緊張状態になるので、睡眠のスイッチが入りません。
体の疲れから睡眠状態に入ることが出来ても、数十分ごとに目が覚めてしまえば、脳の疲労を回復させることは出来ません。
結果、翌日以降に疲れを持ち越してしまい、日中のパフォーマンスが落ちて、更にストレスを抱えることになります。
2.仕事の悩みやストレスに向き合うための「セルフケア」
仕事の疲れは自分でどうにかするもんだ、と思っている社会人は多いと思います。
しかしこれだけ産業構造も社会情勢も複雑化・多様化する中で、自分だけでどうにか出来るものではありません。
仕事に関するメンタルヘルスケアは、以下の4領域に分かれます。
1)セルフケア…働く人が自分で出来ること
2)ラインケア…管理者・管理職による縦のメンタル管理
3)事業場内ケア…会社・現場の中で専門部署や担当者を設けて行うケア
4)事業場外ケア…社外の専門家、医師、カウンセラー、看護師、ソーシャルワーカーと連携して行うケア
です。
なぜこんなに別れているか、というと、仕事由来のストレスは、個人単位の努力頼みで解決できるほど簡単な問題ではなくなっているからです。
一番身近な直属の上司の協力で出来る対策、現場全体で環境整備含めて行う対策、社外の専門家を活用しての予防・回復プランなど、様々な人や機関が協力しなければ解決出来ないのです。
しかしその中でも、やはり一番重要なのは「セルフケア」だと思います。
労働の場では、会社側が労働者へ配慮する「安全配慮義務」というものがあります。雇用した労働者が安全に健康に働き続けるための対策や工夫をしなければいけない、というものです。
それと共に、働く人にも「自己保健義務」があります。
具体的には、「健康診断を必ず受診する」「不調を自覚したら会社に報告する」「私生活での健康管理に務める」などです。
会社へ対策を求めるのと同時に、自分で出来ることが実は結構あるのです。
3.働く人のメンタルヘルスセルフケアとストレスチェック制度
①セルフケアとして出来ること
- 時間外労働(残業、休日出勤)が、45時間/月を超えたら要注意 →1日2.25時間
- 健康状態の異変に敏感になる →2週間以上続いたら相談する
- 毎日の食事(量、栄養)・睡眠(時間、質)・運動の管理
- 自分がどんな条件や環境だとストレスを受けやすいかを知る
- 疲れやストレスが溜まった時、どんな形で現れるのかを知る
- 会社の健康診断は必ず受ける
等があると思います。
特に重要だと思うのは、3つ目と4つ目です。
ストレスは、同じ条件下で同じ形で全部の人に現れるものではありません。
同じ立場で同じ会社で同じ仕事をしていても、うつ病になる人とならない人がいます。
人それぞれ持っているスキルや特性、性格、生活環境、生育歴が全部違うからです。
まずは自分自身を知る、その上で今の仕事や業務とどう付き合っていくか、を考えます。
そうすると、上司や医師に相談するときも、相手に求めるものが伝わりやすくなります。
ただ「つらい」とだけしか言えないと、聞いた側も何をしたらいいか具体的に考えられず、
「とりあえず休職してゆっくりしてみたら」
のような提案になります。
休息することで回復する問題ならいいですが、復帰後にまた同じ仕事をして体調を崩すとしたら、無限ループです。そして無限に無理を重ねることは出来ません。
どこかで数日・数カ月の休養ではどうにもできないような病気に発展しかねません。
自分を知り、何が必要かを考えることが、すべてのストレス対策の出発点になります。
②ストレスチェック制度
平成27年(2015年)12月1日に「ストレスチェック制度」が施行されました。
「ストレスチェック制度(ストレスチェックせいど)とは、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的とした、日本の労働法規に定められた制度」
wikipedia
多くの企業では健康診断などと同時に、または社内のe-ラーニングなどで実施されていると思います。
結果は、「どんな要素にストレスを感じやすいか」「ストレスを感じるとどんな反応が出るか」等を知ることが出来ます。
また職場でほぼ一斉に実施されるので、職場全体としてどんなストレス傾向があって、その為にどんな対策が必要か、を、会社が知ることが出来ます。
①の3・4つ目についても、ストレスチェック制度の結果から知ることも出来ます。
高ストレス状態にあると判断されると、医師との面談を推奨されます。面談は義務でも命令でもありませんが、何より自分を守るためですから、出来るだけ受けましょう。
4.働くときに気をつけたい3か条
私は、心の病を心だけで予防・回復させようとすることには懐疑的です。よく言われる「気合で治す」というものです。
道具や他者、行動面の変化を活用したほうが効果的だと思っています。
とはいえ、仕事の世界に首まで浸かっていると、会社の利益>自分の健康、という図式が常識になってしまいます。気がつけば自分だけボロボロ、という人も多いです。
その反対の価値観や考え方がある、ということを知っているだけで、メンタルヘルスへの取り組み方が変わってくると思いますので、以下の3点は出来れば覚えておいていただきたいと思います。
1)仕事に自分を支配されない
2)✕働くために生きる ○生きるための労働(とその対価)
3)休職・転職をむやみに忌避しない
ワーク・ライフ・バランス、という言葉が広まって久しいですね。
この「バランス」とは、何を指すのでしょうか。
もちろん仕事と私生活にかける時間やコストなどもそうですが、私は「価値観」だと思います。
仕事で栄達して稼いでいる人はエライ、そうじゃない人はダメ、のような風潮はまだまだ健在です。
でもそれを決めるのは社会でも他人でもありません。自分自身です。
どんな風に仕事をするか、仕事以外の家族や趣味、ワークライフをどのように捉え、その為に何をするか、の、自分なりの価値観を持ち、それに沿って選択・行動すること、ではないでしょうか。
「ワーク」に比重が傾くのも、それが自分の価値観なら良いと思います。逆もまた然りです。
NGなのは他者の言い分をそのまま鵜呑みにすること。
結果が悪かった時、後悔するのは自分です。
頑張った結果が病気や後悔なんて、もったいないとしかいいようがありません。
自分がどう生きていきたいか、の価値観を持って働くことが、今こそ必要なのではないでしょうか。
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