【仕事はつらいよ】③ライフイベントと仕事の関係

テーマ:働く人のメンタルヘルス対策

ライフイベントと仕事の関係

「仕事のストレス」について考える第3回目のテーマは「ライフイベント」です。
仕事特有のものもあれば、生活面、その両方など、人生はイベントだらけです。
ストレスを巨大化させずに難局を乗り切るには何が役に立つか、を考えてみました。

1.ライフイベントとは

あまり耳慣れない方も多いと思いますので、言葉の定義から。

「人の一生には、進学、就職、結婚、出産、住宅の購入、定年、相続などの出来事があり、これらをライフイベントという。ライフイベントには、定年のように到来することがほぼ予測可能なもののほか、災害・病気・事故のように全く予期できないものもある。
また、これらは年金・医療・介護・税制等の公的制度や、株価や為替市場など社会情勢や経済情勢の変化の影響を受ける」
(wikipedia)


朝起きて、日中活動をして、夜寝る。という毎日のサイクル以外に、人生には大きな出来事が必ず起こります。それらを総称して「ライフイベント」と呼びます。

例えば結婚、定年退職、経済不況、病気などは、それだけでも生活や人生に大きく影響する「ストレッサー」です。
単体でも対処が難しいのに、同時並行で日常生活もこなさなければなりません。

現代は誰もが自分に出来ることを目いっぱい頑張ってやっと毎日が回っていくような状況です。
ギリギリ保てているバランスが、ライフイベントで崩壊の危機を迎えてしまいます。
さらに、イベントが同時多発することも珍しくありません。

結婚や出産、昇進のような本来おめでたいイベントであっても「変化」はセットになっています。
変化は、慣れるまでの間は当事者に負担を強いるものです。

人生で避けられないライフイベントは、毎日の生活にプラスアルファでのしかかってくる出来事なのです。

2.今や年代は関係ない

ライフイベントは、昔はそれぞれ経験する年代が似通っていました。
女性の20代は結婚・出産・育児を経験するもの。
男性も20前後で職を得て、20代後半くらいから所帯を持ち一家を構える、などのように。

しかし現代は、どのライフイベントを何歳頃で向かえるか、は、定式化出来ないほど多種多様になっています。

10代で出産する人もいれば50代の人もいる。もちろん出産しない人もいます。
就職しても、定年まで一つの会社に勤め続ける人ばかりではありません。転職したり、独立したり、早期リタイアする人もいます。
昔は「セカンドライフ」というと定年退職後、60歳前後を指していましたが、それも変わってきています。

どのタイミングでどんなライフイベントを経験するか、は、自分が目指す人生の目的・価値観に沿って一人一人が考えていかなければいけない、とても難しい時代になっています。

しかし、自分で考えることが出来る利点の裏に、人は平等に年を重ねていく、という条件があります。これは誰も変えることが出来ません。

20代前半で出産した人と、40代で出産した人とでは、その影響は大きく違うことが予想できます。
早いうちに出産を経験するのは体力的には有利です。親も元気だから育児を手伝ってもらうことも出来ます。しかし就職して数年しか経っていない時期に産休を取らざるを得ないと、その後の仕事面のキャリアルートを再考せざるを得なくなります。

40代になってから出産を決意した場合、仕事はそれなりの立場を築けていますから、周囲の協力は得やすいかもしれません。
しかし20代と比べると体力は落ちています。親も老いてきているので、小さな子供の面倒を見てもらうのは難しくなるでしょう。子どもの友達繋がりの「ママ友」と年代が異なるため、親しくなりづらい人もいるかもしれません。

「ライフ」という単語がついている通りに、こうしたイベントは人生や生活にダイレクトに影響するのです。

3.仕事特有のライフイベントとストレスの関係

仕事をしている人に起きるライフイベントに限定して考えてみたいと思います。

①就職

学生時代が終わり、最初の会社に入社します。
高卒・学卒で正社員として入社する人もいれば、院卒で入社する人もいるでしょう。
また、夢ややりたいこと、家庭の事情などで、最初はパートタイムで就業するケースもあります。

いずれにしても、未知の環境に飛び込んで初対面の先輩・上司に混ざって未経験の業務を行い、それに対して責任を取れるようにならなければならない、という、大きな変化です。

②昇進

頑張り続けると、正社員であれアルバイトであれ、責任ある立場を任されるようになります。
主任、係長、リーダー、のような肩書がつくものもあれば、一時的なプロジェクトを任されて数人をまとめる、のような経験もするでしょう。

③異動

これは自分が別部署に異動するだけでなく、同僚や上司が他部署へ異動したり、他部署から異動してきた人を受け入れる、ということも含まれます。

ずっと上手く回ってきた部署だと、メンバーが一人抜けただけでリズムが崩れます。新しく配属された人がその環境ややり方に慣れるまで辛抱強く待つ必要があります。

自分が異動した時はもっとストレスが大きいですよね。
新卒として入社した時ほどではないとしても、今までとは違う環境・メンバー・業務・顧客知り、慣れて、関係性を築いていかなければなりません。
人によっては「マネージャー、課長」などの役職を背負っての異動となります。周囲からは前任者と同等の働きを求められます。

④退職・定年

何年も、何十年も続けてきた仕事を辞めるのは、一つの区切りであり到達点です。
その瞬間を迎えた時は解放感が大きいかもしれませんが、仕事に没頭していた分、大きな空白が生まれます。

時間が出来るだけでなく、気持ちの上でも、「自分とは何者か」というアイデンティティにもぽっかりと穴が出来ます。
すぐに次の仕事が始まるなら、新しい環境に慣れるための努力で大忙しになるので「穴」は埋まりやすいかもしれませんが、そうでないとしたら、第二の人生を構築する、という、未知の作業が始まります。

4.乗り越え方、対処法

①就職

就職したら、学生時代のやり方やルールはほぼ通用しません。
ここでは、一度自分を白紙に戻して、一から学び始める、という「新一年生」の心構えが役に立ちます。
大学で頑張ったことや功績、自信は、そのままでは仕事の場ではほぼ使い物になりません。
心の支えとして大事にしつつ、新しい環境に飛び込みましょう。

②昇進

社会人の誰もが経験する道ではありますが、ここで大事なのは「動機づけ」、モチベーションです。
新しく任された役割を果たすことで得られるものはたくさんあります。
経験、金銭的報酬(昇給やインセンティブ)、周囲からの尊敬、達成感、新しい視点、新しい協力者、など。

昇進は、基本的にしんどいです。辞令を受けた時は喜びが勝りますが、その後は上がった立場に対して周囲から寄せられる期待でアップアップになります。
それでも、その会社で働き続けるなら、逃れることは出来ません。

新しい役割をこなすために自分が頑張れる「動力源」、モチベーションは何か、を、明確にしましょう。

③異動

異動もまた環境変化です。適応するまでには摩擦が起き、それが以前にはなかったストレス反応を引き起こします。
異変を感じて当然、ということを覚えておきましょう。
違和感を気づかないふりをし続けると、見えないところで問題が大きくなります。
会社で気を張っている分、家で家族と言い合いになる回数が増えたり、お酒の量が増えたり、仕事のことばかり考えて睡眠の質が落ちたりします。

④退職・定年

この時にあると安心なのが「趣味」または「ライフワーク」です。
仕事は片手間で出来るほど甘いものではありません。学校を卒業して40年前後、会社が変わることはあっても絶え間なく仕事のことだけ考え続けてきたでしょうから、その習慣は簡単には消えません。
しかし、一つの役割を終えた、という事実を変えることも出来ません。

大きな階段を登り終えた達成感を十分に満喫して、次の生活の準備をしましょう。
仕事が忙しくて他のことが出来ずに来たのなら、それを一つずつリストアップしましょう。
家族との時間、家事、地域活動、行ってみたかった場所、やってみたかった体験。
仕事として取り組んできたことを、別の視点からボランティアとして関わることも出来ます。

5.国の支援

ライフイベントごとに、国が行っている支援は色々あります。

【育児・介護休業法】
・産後パパ育休
・パパ・ママ育休プラス
・介護休業、介護休暇

【若者の就職支援窓口】
・ジョブカフェ
・わかものハローワーク

【住宅取得】
・住宅ローン減税
・すまい給付金

など、多様な支援・サービス・制度があります。

ライフイベントは大きなストレス源ではありますが、誰もが経験するものです。
ということは、経験者からコツや対処法を聞くことも出来るし、専門機関や業者も多いです。

使えるものはどんどん使って、乗り越えていきましょう。

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次回は「仕事のストレスと病気」について考えたいと思います。

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西岡惠美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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