うつ病のタブーとどう向き合うか
<相談内容>
夫がうつ病になりました。会社にも行けないため、丸一日家に居ます。
うつ病はとても辛い病気だと聞きましたが、ずっと家に居るのに何もしません。
私は仕事から帰ってきて、すぐに食事を作ったり買い物をしてきたり、朝も家事で忙しく一息つく暇もありません。
優しくしてあげたいのはやまやまですが、イライラが溜まってケンカも増えてきました。
どうしたらイライラせず思いやりを持って接することが出来るでしょうか。
<回答>
ご相談ありがとうございます。
ご主人がうつになって、きっと心配や驚きや不安など、短期間で色んなストレスが重なっている状況と推察いたします。
自分がしっかりしなきゃと思い、周囲からもそれを求められているかもしれません。
今までなら一番の頼みの綱だったご主人が病気になってしまったのですから、今までの二人分の責任を負いつつその何倍もの重荷がご相談者様にのしかかっているのではないでしょうか。
毎日くたくたになって、でもずっと家にいる夫には頼れない。そしてその本人は(一見)ずっと寝ている。
どうせ家にいるならゴミをまとめるくらいしてくれてもいいのに、みたいなことを思ってしまうのは仕方のないことです。
積もり積もったものが爆発して、ついキツい口調になって、ケンカに発展することもよく分かります。
自分のイライラを否定せず受け入れる
今のあなたは二人分の人生を生きています。疲れるのもストレスがたまるのも当然です。
そういうご自身を責めたりしないで、まずは自分で自分を受け容れましょう。
これだけ頑張っているのだから、疲れるのは当然だし、疲れたら気持ちに余裕がなくなってイライラしてしまうのも当たり前、と。
うつの人の現状を観察する
そして、今のご主人の状態を観察しましょう。
一日中何も出来ない、顔も洗えないから髭ぼうぼうで、お風呂も入れない、着替えも出来ない、家から一歩も出られない。
それはご主人が怠けているのでもあなたに甘えているのでもなく、それが精いっぱいなのです。
お布団にくるまってる間も、呑気に眠っているわけではないでしょう。心の中で以前のように働けない、あなたに負担ばかりかけてるのが分かっているのに手伝うことはおろか、自分の身の回りのことすら出来ない状態に、ご本人が何より絶望していると思います。
一見何もしていないように見えますが、心の中で必死に戦っています。反省して、自分を責めているかもしれません。
変化が無くてもしばらくは見守る
辛いですが、この状況はしばらく続くでしょう。数カ月から、もしかしたらもっとかもしれません。
でも本人に任せてじっくり考えたり休んだりする時間を持ってもらうことで、確実に状況は上向いていきます。
その変化が目に見えないし、本人が説明してくれるわけでもないでしょうから、きっと不安だらけだと思います。だからこそイライラも増大するのでしょう。
今のご相談者様がやることは、ご主人を追い立てることでも、ご自分を責めることでもありません。
- ご自分の辛さを受け容れる
- 自分自身を労わり癒す
- ご主人は放置、服薬・食事のみ忘れないよう声をかける
- 以前のご主人やご夫婦の状況と「今」を比べない。今を見る。
この4つです。
本人が動けるようになったら、役割を相談して決める
そしてご主人が何か出来るようになったとき、その時出来ることは何かをよく相談して、無理せず出来ることがあればそれをやってもらいましょう。
- ゴミをまとめる(捨てるのは辛いかもしれません、外へ出れない人が多いので)
- 朝食だけは一緒に食べる
- リビングだけ掃除機かけてもらう
みたいに。
人によって出来ることは違うし、やってもらいたいことも違うので、そこは二人で話し合って決めるのがベストです。
時間をかけることで、出来ることがちょっとずつ増えていきます。それが「リハビリ」です。リハビリは急速に拡大したり負荷をかけすぎると失敗して、ゼロどころかマイナスに戻ります。焦らないことが大事です。
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うつ病の、しかも急速に悪化している時期は、本人も身近な家族も一番辛い時期です。うつに慣れていないから不安も未知の事態も多い。
そういう時は、他人にたくさん頼りましょう。
家族、友人、同僚、そして専門家(医師・カウンセラー・ソーシャルワーカー)に。
一人で抱え込まない、自分自身を蔑ろにしないことが肝要です。