ケアラーのセルフケアを考える
はい、うちもです(笑)
発達障がいは、この10年くらいで急速に広まったような感があります。
私は70年代生まれなので、私が未成年の時は聞いたことがありませんでした。
ずっと自分に違和感を感じていた人が、発達障がいの診断を受けたり自分も似た傾向があることを知ったりして、「発達障がい人口」はどんどん増えていっています。
発達障がいが増えたわけじゃなくて、発達障がいだ、と診断されたり自認している人が増えた、のだと思っていますが。
大人になってから発達障がいに気づく人が多いということは、結婚してから実は伴侶が発達障がいだった、と分かった、という人も同じくらいいる、ということです。
その時、夫婦の間には何が起きるのでしょうか。
1.一番有名なのは「カサンドラ症候群」
カサンドラ症候群とは、
「パートナーや家族などが発達障がいの一つであるアスペルガー症候群(ASD)のために、コミュニケーションや情緒的な相互関係を築くことが難しく、アスペルガー症候群の人の身近にいる人に不安や抑うつなどの心身の不調を来す状態のこと」
(大阪メンタルクリニック)
です。
ASDは比較的男性に多い上に、女性はパートナーと情緒的交流が高いほうが満足感を得る傾向が高いです。その相反する傾向ゆえに、女性に多い症状と言えるでしょう。
ASDの特徴である、相手の心情を推し量ることが不得手だったり、自分の考えを伝えることが苦手だ、というものが、夫婦のコミュニケーション密度に影響を与え、残された片方は相手を理解出来ず自分が受容されている自信が持てず、心身に不調をきたします。
2.発達障がいではないけれど、似た特徴を持つ人はいる
発達障がいの診断はそう簡単に出るものではありません。
生育歴や現状のヒアリング、いくつもの診断テストを経て医師が判断します。
発達障がいの人は生活上に大きく支障をきたすレベルの得手不得手を持っていますが、そこまで大きなものではなくても、似たような特徴を持っている人はたくさんいます。
例えば「自分の考えを伝えたりすることが不得手である」という特徴。
発達障がいではなくても、自分の考えを整理して他者へ伝えたり理解を求めることを面倒だと感じ、あえて単独行動を好む人も少なくありません。
そうした行動パターンが身についている人が結婚した時、何か問題が起きても大抵のことなら自分だけで解決出来てしまうため、夫婦であっても他者を頼ったり相談したりしようとしません。
結果として、発達障がいの診断は出ていないのに、伴侶はカサンドラ症候群的な困りごとを抱える場合も考えられます。
3.あえて発達障がい的な人を伴侶に選ぶこともある
発達障がいと聞くと、インターネットではネガティブな情報のほうが多く出回っているように見受けますが、実際に当事者と接していると感想は違ってきます。
例えば、
- ・場の空気を読み取らない ⇒ 皆が思っているけど言えずにいることをズバッと言う
- ・手順を踏まないと理解出来ない ⇒ 「知ったかぶり」しないで分からないことを聞いてくる
- ・小さい時から周囲と違う振る舞いをしてきた ⇒ 余計な「普通」に囚われない
という面があります。
その他一般とは確かに違う言動が多いので最初は戸惑いますが、彼らの意図を聞くと、そこはちゃんと筋が通っているのです。
その人の思考経路を理解すると、逆に行動が読めてきます。
臨機応変な対応が苦手な分、行動パターンが大体決まっていることが多いです。
慣れてくると、むしろそのほうが楽なことも増えてきます。
また、自分にも似たような特徴があるために、発達障がいの人とのほうが波長が合う人もいるでしょう。
結婚する前には発達障がいだと知らなかったとしても、あえてそういう人をパートナーに選んでも不思議ではありません。
4.怖いのは二次障害
とはいえ、舐めてかからないほうがいいのは確かです。
本人は少なからず生き辛さや生活上の支障を抱えているからこそ、受診して診断に至っているのですから、家族ではあっても当事者ではない人間が「大したことない」と考えるのは危険です。
発達障がいで気を付けたいのは、発達障がいをベースとして生活する中で、うつ病やパニック障害、双極性障害、不安障害など、他の精神疾患も併発してしまう「二次障害」です。
二次障害が起きないことがベストではありますが、夫婦だけでどうにか出来るものでもありません。
ベースに発達障がいがある人が二次障害としてうつ病になった場合、うつ病単発で発症した人とは療養も予後も変わってきます。
「薬を飲んで数カ月しっかり療養していれば元通りの生活に戻る」といううつ病についての見解は、二次障害としてのうつ病には当てはまらないでしょう。
二次障害を併発しない、または悪化させないためにも、当事者と伴侶の二人で、その人本人の発達障がいの特徴や対処法をしっかりと理解しておく必要があります。
5.ポイントは「夫婦だけで抱え込まない」こと
発達障がいと一口に言っても色んな障害が含まれていますし、人それぞれ特徴は千差万別です。
その中でも、コミュニケーションが苦手、という傾向は、多かれ少なかれ持っています。
友人関係だけでなく、子どもの頃から親子やきょうだい関係で悩んできた人も少なくないと思います。
結婚して別所帯になれば、元々苦手だった実家族とはさらに関係が希薄になるかもしれません。
夫婦間で問題が起きても、夫婦だけで対処しようとしてしまうでしょう。
しかし、そこはあえて他者を巻き込みましょう。
他者に頼る、全部やってもらう、という意味ではありません。
夫婦だけの濃密な関係の中に、第三者をいれることで空気を循環させてガス抜きしましょう。
話を聞いてもらうだけでもいいのです。
それが何の役に立つのか、を考える必要はありません。
プライベートな知人や実家族には話しづらいなら、医療・福祉・公的機関の担当者を使いましょう。
役に立つ情報は、外からやってくるものです。
孤立化・重症化を防ぐためにも、抱え込まないことが肝要です。
<精神保健福祉士・心理カウンセラーがご相談承ります>
オンラインカウンセリング「惠然庵」
https://keizenan.net/