組織力強化:withコロナの時代に求められるスキル:基礎を確実に身につけ研鑽するために

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:組織力強化

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

このコラムでは、下記2点の情報を参照しながら、withコロナの時代に求められるスキルを整理し、求められるスキルの基礎を確実に身につけ研鑽するにはどうしたら良いのかを提案します。

  1. 世界経済フォーラムが2020年10月に発行した "The Future of Jobs Report 2020"
  2. PRESIDENT WOMANの2020年12月29日の記事『2021年以降、新しい世界で必要とされる人材になるために必要な7つのスキルとは』


上記の1は、世界経済フォーラムが出しているのでグローバルな視点のものです。
上記の2は、立教大学経営学部の中原淳教授が寄稿したもので日本に視点を向けた内容です。

このコラムは次の3つの章で構成します。15分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。

ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。


1. withコロナの時代に求められるスキル(グローバル視点)

この章では、世界経済フォーラムが2020年10月に発行した "The Future of Jobs Report 2020"の内容からスキルに関することを抜き出して、できるだけ分かりやすくまとめてみたいと思います。

なぜグローバル視点での話を最初に持ってきたのかというと、実は私はグローバルの方が日本よりも数周先を走っていると考えておりまして、日本は数周後を歩いているような状況だと考えているからです。早晩グローバルの流れに影響される可能性があると思いますので、グローバル視点での動向を捉えておくことは意味があると考えます。

さて、"The Future of Jobs Report 2020" の内容を見てみます。
このレポートは、2025年までに予想される、テクノロジー、仕事、スキルについて書かれています。

1.1. withコロナの時代が企業に圧力をかけていること

テクノロジー。
テクノロジーの採用は止まりません。ますます加速します。
以前から旺盛だったテクノロジーの例としては、クラウド・コンピューティング、ビッグデータ、eコマースなどがあります。
コロナにより急速に加速しているテクノロジーの例としては、暗号化、人型でないロボット、人工知能などがあります。
下図をご覧ください。(図のタップやクリックで拡大します)
コロナ禍の時代は企業に下記3点をするよう圧力をかけていました。

  • リモートワーク(テレワーク)の規模を増やす
  • デジタル化を加速する
  • 自動化を加速する

COVID-19 is pushing compaies
withコロナの時代は、リモートと出社を組み合わせたハイブリッドな働き方が定着しました。デジタル化は待ったなしです。

コロナ禍の時代は非接触・非対面を求めていました。自動化について見てみましょう。
調査によると、43%がテクノロジーを使うことによって人を減らすと答えたそうです。2025年までに、人がする仕事と、機械がする仕事の量は同程度になるとしています。
コロナ禍を経てwithコロナの時代は、RPAやAIによるオフィス業務の自動化も進みつつありますし、デジタル・ツインを活用した生産現場での自動化も進みつつあります。

1.2. 仕事はどう変わるのか

「人を減らす」=「解雇」ではありません。
新しい仕事が生まれ、いくつかの仕事は人間と機械によって行われるようになるということのようです。
従業員は、2025年までに冗長な役割が減り、新しい職業が増える、と期待しているそうです。
下図をご覧ください。(図のタップやクリックで拡大します)
85,000,000の仕事が人間と機械に振り分けられ、97,000,000の新しい仕事が生まれるとしています。
Job ladscape

1.3. 従業員が考えている2025年までの有力なスキル

需要があるスキルというものは変わるものです。今必要とされているものと、数年先に必要とされるものは異なるということです。2025年までにスキルギャップが顕著になるとしています。
従業員が考えている2025年までの有力なスキルは、下記の4つだそうです。

  • クリティカル思考
  • 分析能力
  • 課題解決能力
  • 自己管理能力


企業は、40%程度の従業員は2021年4月下旬までに新しいスキルを身につけることが必要だ、としていました。リスキリングです。もし今が2021年4月下旬を過ぎてしまっている場合、スキルという観点であなたはどうなのかを真剣に考えた方が良さそうです。
そして、94%のビジネスリーダーは、従業員が新しいスキルを選んで身につける事を期待しているそうです。因みに、2018年は65%だったそうなので、スキルギャップを早急になんとかしたい、ということなのだと思います。

1.4. 2025年のトップ10スキル

Top 10 skills 2025
上図は2025年のトップ10スキル予想です。(図のタップやクリックで拡大します)
この節では、Type of skillとしてリストされている下記4つについて考えます。(カッコ内の日本語は私の訳です)

  1. Problem-solving(問題解決能力)
  2. Self-management(自己管理能力)
  3. Working with people(チームで協働する能力)
  4. Technology use and development(ITツールを使う能力などのテクノロジーを活用する能力)


1.4.1. Problem-solving(問題解決能力)

問題を分析し、課題を洗い出し、解決する能力と考えて良いでしょう。

1.4.2. Self-management(自己管理能力)

自己管理能力。テレワークなどリモートで働くことが増え、自己管理能力が必要であることを感じておられる方は多いのではないかと思います。
例として、アクティブ・ラーニング回復力(困難・苦境などから立ち直る力)寛容性と柔軟性(ストレスに対して慣用になること・柔軟になること)が挙げられていました。

1.4.3. Working with people(チームで協働する能力)

チームでの協働と考えて良いと思います。ひとりで出来ることは限られていますから。

1.4.4. Technology use and development(ITツールを使う能力などのテクノロジーを活用する能力)

開発に携わっていない方もいらっしゃるでしょうから、ここではテクノロジーを使うということについて考えてみます。多くのオフィス業務をしておられる方にとってはITツールを使う、ということではないかと思います。

レポートでは、ホワイトカラーの多くの人たちには、オンラインで働くというスタイルが既に到来している、としていました。
従業員の84%が迅速にデジタル技術を活用した仕事を始めている、としていました。
(含むリモートワーク)
withコロナの時代になり、出社とテレワークのハイブリッドな働き方が浸透した今、オンライン会議だけでなくリモートで働いているチームメンバーと効率的に協働できるようなITツールを使って仕事の生産性を上げることが求められていると思います。

生産性とウェルビーイングの観点での懸念事項として、従業員の1/3が、コミュニティー感の創造・人とのつながり・チームへの所属感が感じられるような対策を講じることを期待している、としています。ここは、テレワークの要諦である、と私は考えます。

2020年頃は、グローバルの方がテレワークという観点では進んでいた感じですね。コロナ禍を経て、withコロナの時代は日本でもテレワークと出社を組み合わせたハイブリッドな働き方が定着しました。ハイブリッドな働き方をするために必要なITツールも普及しました。

1.5. ここまでのまとめ

さて、ここまでの内容を簡単にまとめてみます。

  • 現在人がやっている仕事の内、機械によって自動化されるものがある。
  • 人間は新しい仕事をすることが求められるようになる。
  • 今までやってきた仕事ではなく、新しい仕事をするためには、新しいスキルを身につけ能力を向上することが求められるかもしれない。
  • 時間的には2021年4月下旬頃までにスキルギャップを埋めることが求められていた。


1.6. 新しいスキルを身につけ(reskill)その能力を向上させる(upskill)

新しいスキルを身につけ(reskill)、その能力を向上させる(upskill)。
下図は50%の従業員が新しいスキルを身につけることが求められる、としています。(図のタップやクリックで拡大します)
reskilling needs 50 percent
さらに、下図はコアスキル(ご自身の中核を成すスキル)の40%は変える必要がある、としています。(図のタップやクリックで拡大します)
reskilling needs 40 percent

1.7. 新しいスキルを身につけ、その能力を向上することに投資することの価値が認められている

今まで書いてきたような背景を感じているからなのでしょう。企業は新しいスキルを身につけ、その能力を向上することに投資することの価値を認めているそうです。
雇用者の66%が、従業員に新しいスキルを身につけ向上させ、1年以内に何らかのリターンがあることを期待している、そうです。

一方で、17%の雇用者は、厳しく先の見通せない状況を考えると、何もリターンがないかもしれないと考えている、とも書かれています。
そして、雇用者の70%以上は、2025年までに従業員が新しいスキルを身につけ能力を向上する機会を与えたいと考えている、と書かれていました。
(図はタップやクリックで拡大します)
human capital investment


2. withコロナの時代に求められるスキル(日本視点)

この章では、日本ではどのように言われているのか、PRESIDENT WOMANの2020年12月29日の記事『2021年以降、新しい世界で必要とされる人材になるために必要な7つのスキルとは』を参照しながら考えます。

PRESIDENT WOMANは『仕事でリーダーを目指し、高みを目指して生きる。情熱を持って働き続けたい、女性のためのサイト』だそうですが、この記事は性別に関係なく全てのビジネスパーソンにとって役に立つものだと考えますので、参照させていただきます。

この記事は、『多くの業界が大きな打撃を受けているコロナ禍の世界。日本ももちろん例外ではなく、仕事がなくなる、会社の経営が傾く、転職を迫られるといった話も身近になっているはず。この大きな嵐でも求められる人材、活躍できる人材となるには、どんなスキルが必要なのだろうか。』という書き出しで始まっています。

コロナ禍を経験しwithコロナの時代に入った今でも、このサイトに書かれているスキルを研鑽しスキルレベルを高めることは価値があると思います。

2021年からの2〜3年が、働く個人も会社もいかにサバイバルできるかのポイントになるとし、経営者意識を持つことが大切だと書かれています。『いまは、人々の生活様式も変わり、ビジネス自体が転換している時期です。こんな状況の中でも、成長している分野、上手に転換している分野があるので、まずは冷静に観察し、分析してみてください。答えの出ない事態に冷静に耐える能力を「ネガティブケイパビリティ(Negative capability)」といいますが、いまは、それを発揮するべきときです。』

『自分というものを経営し、決断していくのは、最後まで自分です。「あなたという会社」の経営者はあなたです。会社は守ってくれません。「自分を経営する」意識を持ってください。』と中原教授は書いています。

その上で、ネガティブケイパビリティに加えて、次のスキルを備えるべきとしています。

  1. セルフマネジメント力
  2. セルフアピール力
  3. 論理的なコミュニケーション力
  4. 他者とつながる力
  5. ITを学び直す力
  6. メンタルタフネス

各々について考えていきましょう。

2.1. セルフマネジメント力

これは1章の世界経済フォーラムのレポートにも出ていたスキルですね。
『常にリモートワークでいることで、うつ状態になってしまったり、生活リズムがくずれたり、公私の線引きができず働きすぎる人も出ています。これまで以上に自分の仕事のペースをつくっていく必要があります。』としています。

全く同感です。
自己管理能力と言われても、今までやっていない人に対して、いきなりはハードルが高すぎると思います。テレワークにおける自己管理能力とは何か、リモート研修を必須にするなどの対策が求められる、と私は考えます。また、うつ状態になるのを早期に防ぐためには、1章で出てきた、『生産性とウェルビーイングの観点での懸念事項として、従業員の1/3が、コミュニティー感の創造・人とのつながり・チームへの所属感が感じられるような対策を講じることを期待している』が大切だと考えます。テレワークの要諦です。

2.2. セルフアピール力

与えられた目標に対して成果を出し、それをきちんと上手にアピールできる力だそうです。

目標到達に対して何か問題が出そうであれば、問題が発覚する前に報告・相談するということも大切だと思います。
そういう報告・相談する力もセルフアピール力に入る、と私は思います。
そして、報告・相談しやすいように、チーム内を安心安全な環境にすることは、マネージャーの役割と言えるでしょう。


なお、安心安全については、『会社の会議における「安心安全な場」とは?』 でわかりやすく解説しています。

2.3. 論理的なコミュニケーション力

自分の抱えている課題や仕事をロジカルに説明して問題を共有できなければ、遠隔でスムーズに仕事を進めることは不可能だとしています。

伝えたい内容をわかりやすく表現できる適切なフレームワークを活用し、わかりやすく伝えることが大切だ、と私は考えます。

2.4. 他者とつながる力

リアルで会うことや仕事の仕方に制限がある中でも相手とつながる力はより一層求められる、としています。

1章に書いた、「生産性とウェルビーイングの観点での懸念事項として、従業員の1/3が、コミュニティー感の創造・人とのつながり・チームへの所属感が感じられるような対策を講じることを期待している」に近いものがあると考えます。

2.5. ITを学び直す力

リモートで仕事をすることが求められる今、多くのビジネスパーソンにとって必要なことは、オンラインで協働するためのITツールを駆使する力が必須である、と考えます。
オンライン会議ツールだけではありません。ハイブリッドな働き方が定着したwithコロナの時代では、リモートであってもオフィスにいる時と同じように協働できることが求められます。

2.6. メンタルタフネス

メンタルにタフ。
私は個々人がタフである必要はないと考える者です。

リモートで働いている時でも、職場の人たちとオンラインを活用してつながっていることが大切だろう、と私は考えます。例えば、朝から夕方まで「給茶器と自動販売機」というオンライン会議を毎日開いておいて、自由にそのオンライン会議に入ったり退出したりできるようにしておく、という簡単に実施できる方法もあります。リアルな職場でお茶を汲みに行ったり飲み物を買いに行った時の雑談をオンライン上で実現するというアイデアです。職場のチーム内のつながりを保つことは、テレワークの要諦です。


PRESIDENT WOMANの記事は、これまでに自分が得た知識やスキルを棚卸しし、それを軸足にして一歩前に出てみましょう。この危機を乗り越えている業界や企業、手法をよく分析し、それと自分のスキルをかけ合わせた次のステップを考えてもいいでしょう。自分がこれからどんな価値を発揮し貢献できるのか、ストーリーを語れる人が、転職でも自社に残ってもきっと活躍できる人材となるでしょう。と記事を閉じています。


3. 求められるスキルの基礎を確実に身につけ研鑽するために(提案)

この章では、1章と2章で出てきたスキルのいくつかについて、スキルの基礎を確実に身につけ、さらに身につけたスキルを向上させることについて具体的に考えてみたいと思います。

スキルとそのスキルの向上。最初に、スキルとスキルレベルについて触れたいと思います。
あなたの会社ではスキルレベルを定義しているでしょうか?例を下に示します。

  • レベル1 – 基礎的な知識がある
  • レベル2 – 初心者(限定的な経験がある)
  • レベル3 – 中級(実務経験がある)
  • レベル4 – 上級
  • レベル5 – エキスパート(第一人者)

レベル1は研修やセミナーに参加した後のレベルでしょう。
スキルレベルについて、もう少しお知りになりたい方は、『組織力強化:スキルマトリックスとスキルレベル:スキルについて考える』をご参照ください。5分程度で、どのようなものなのかをご理解いただくことができます。

具体的には、下記のスキルについて見ていきます。

  1. クリティカル思考
  2. 課題解決能力
  3. 分析能力
  4. 論理的なコミュニケーション能力
  5. 自己管理能力(例:アクティブ・ラーニング)
  6. チームで協働する能力
  7. セルフアピール能力
  8. ITを学び直す能力
  9. 自分をアップデートする能力


3.1. クリティカル思考

クリティカル思考(Critical Thinking)
私は批判的思考という日本語は用いません。理由は、クリティカル思考はネガティブにアプローチするものではないからです。多面的に建設的に物事を考えようという思考法です。ですから、多面的思考法とか複眼的思考法という日本語の方が、私にはしっくりきます。

クリティカル思考をご存知ない方は、書籍を読んだりセミナーに参加するなどして、まずはレベル1のスキルを身につけるべきだと思います。そして実務を通してスキルレベルを上げていくことが大切だと考えます。

3.2. 課題解決能力

問題は日々発生しますよね。

問題発生時に、問題の性質や影響範囲を特定し、問題に潜む課題を見つけ出し、解決への打ち手を考え、課題を解決すること。よほど小さな会社でない限り、ひとりでこれらを行うことはできません。今までに会ったことのない人と、オンライン会議で議論する事が必要になるかもしれません。会議のファシリテーションが必要でしょう。

初めて協働する人と、行き違いのない円滑なコミュニケーションをする事が求められます。
また、説明する場面もあるでしょう。プレゼンテーション能力が必要です。
初めて会う人たちと迅速に課題解決するためには、チームとして協働できるように、チームビルディングする能力も求められます。

私は、ソフトスキルを強化することを提案します。
ソフトスキルとは対人系のスキルです。具体的には、ファシリテーション、コミュニケーション、プレゼンテーション、リーダーシップ、チームビルディング、エモーショナル・インテリジェンスなどのスキルです。
クリティカル思考と同様に、書籍を読んだりセミナーに参加するなどして、まずはレベル1のスキルを身につけるべきだと思います。そして実務を通してスキルレベルを上げていくことが大切だと考えます。

実務を通して研鑽するときに、選択肢として私がお勧めしたいのは、ファシリタティブなリーダーシップ(facilitative leadershhip)を身につけることを目標にすることです。
リーダーシップとは、リーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではなく、チームの目標を達成するために活動している従業員一人ひとりに必要な力といえます。先が見通せない激変しているビジネス環境にいる今、課題への対応スピードを上げることが必要です。能動的に行動し、周囲に働きかける力を持つ人材が求められています。在籍年数や年齢は関係ありません。

もし、今まで自組織内の改善活動を主に行っていたとすると、他部門を巻き込んでの協働は初めての経験かもしれません。チームとして機能するようチームビルディングが重要です。飲み会を開いてチームとしての結束力を高めよう、という昭和的なアプローチではなく、「そのチームで協働するという体験の価値」を各自が納得すること、その価値に魅力を感じられること、これが必須であると考えます。チームビルディングは協働の中から生まれる、と私は考えています。

チームビルディングを可能にするものは、ファシリタティブなリーダーシップであり、会議やワークショップでのファシリテーションであり、関係者との様々な調整を行うコミュニケーションです。説明する場面も多々ありますので、プレゼンテーションも大切です。ソフトスキルを駆使する必要があります。

ファシリタティブなリーダーシップを目指すことは、あなたのソフトスキルのスキルレベルを向上させることになるのです。

3.3. 分析能力

分析能力は、課題解決能力と密に関係すると考えます。

問題発生時に問題の性質や影響範囲を特定し、課題を見つけ出すこと。これを実現するためには、問題の性質や、影響範囲を分析することが必須です。分析のアプローチや、分析結果の評価方法など、具体的な進め方を合意し、実施することが求められます。

ビジネスの分野でいうと、プロセスマッピングなどのフレームワークを活用して、議論を見える化しながら進める能力が求められます。

フレームワークは多数ありますが、1桁の数のフレームワークが使えるようになっていれば、かなり使えると言われています。
書籍やセミナーなどで、どんなフレームワークがあるのかを知り、その上でまずは7〜10個程度を選んで、仕事の場で使いながらスキルレベルを上げていくことが現実的なアプローチだと考えます。

3.4. 論理的なコミュニケーション能力

あなたはローコンテクストとハイコンテクストという概念をご存知でしょうか?

コンテクスト(Context)とは、コミュニケーションの基盤である言語、共通の知識、体験、価値観、ロジック、嗜好性などのことです。

コンテクストの共有性が高いことを、ハイコンテクスト(High Context)といいます。
伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境です。その環境が整わないと一転してコミュニケーションが滞ってしまいます。お互いに話の糸口も見つけられず、会話も弾まず、相手の言わんとしていることが掴めなくなってしまいます。他の国と比べると、日本人はハイコンテクストだと言われています。


言語によりコミュニケーションを図ろうとすることを、ローコンテクスト(Low Context)といいます。見方を変えると、コンテクストに頼った意思疎通が不得意とも言えるかもしれません。言語に対し高い価値と積極的な姿勢を示し、コミュニケーションに関する諸能力 (論理的思考力、表現力、説明能力、ディベート力、説得力、交渉力) が重要視されます。

論理的にコミュニケーションするためには、ローコンテクストにアプローチする必要があります。
ハイコンテクストでなんとなく論理的にコミュニケーションすることはできません。

そのためにはどうしたら良いのか。論理を見える化することです。
例えば、課題解決する場で、解決に向けて分析をする場で、どのように論理的に考え、いくつかの選択肢の中からどのようなロジックで優先順位をつけて、ある解決方法に至ったのか、フレームワークを組み合わせて論理を構築することが大切だと思います。


基本的なフレームワークの使い方や論理思考(Logical Thinking)の考え方は、書籍やセミナーで身につけることが可能だと思います。つまり、スキルレベル1は書籍やセミナーで可能だと思います。

スキルレベルを上げるためには、仕事の場で、ある意味修羅場を乗り越えながら、研鑽するしかないと考えます。

3.5. 自己管理能力(例:アクティブ・ラーニング)

コロナ禍の時に求められていたのは、テレワークにおける自己管理能力でした。

日本ではジョブ型とか成果主義とか最近言われ始めたばかりですので、緊急事態の中で自己管理能力を身につけろ、といきなり言われても、「はぁ?」という感じが正直なところだったのではないでしょうか。

テレワークを推進しようとする会社は、「自己管理能力とは何か」「自己管理能力を身につけるための具体的な方法」などについて、eラーニングなどリモート研修を必須にするなどの対策が求められる、と私は考えます。

1章で出てきた、『生産性とウェルビーイングの観点での懸念事項として、従業員の1/3が、コミュニティー感の創造・人とのつながり・チームへの所属感が感じられるような対策を講じることを期待している』が大切だと考えます。ここは、テレワークの要諦です。2章で書いた「給茶器と自動販売機」というオンライン会議を常時開催しておいて、誰でもいつでも雑談できたり、必要に応じて数人で別途オンライン会議を開いて雑談や相談ができるような環境を持つことも1つの選択肢ではないかと思います。オフィスで対面で雑談や相談していて面白そうなアイデアが出てきたら会議室を予約して何人か集めて話し合う。これをオンラインでやる感じです。

さて、1章の世界経済フォーラムのレポートでは、自己管理能力のところに、アクティブ・ラーニングが出ていました。
あなたはアクティブ・ラーニングをご存知ですか?
ビジネスパーソンとして知っておくべきだと考えますので、簡単に触れます。

小中高のお子さんがいる方は、2020年から新学習指導要領になったことをご存知かもしれませんね。コロナの影響を受けて、ちょっと注目を失っていた感じかもしれませんが、この新学習指導要領の肝がアクティブ・ラーニングなのです。

『2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!』 という2019年3月13日に出された政府広報があります。
『予測困難なこれからの時代。子供たちには自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力が求められます。学校での学びを通じ、子供たちがそのような「生きる力」を育むために、学習指導要領が約10年ぶりに改訂され、2020年度より小学校から順に実施されます。』とあります。

私たちが直面している今も予測困難なときですよね。
変化の激しい社会に必要な生きる力を育むこと、人生を自ら切り拓いていく力、そして何ができるようになるのかが大切だといっています。

新学習指導要領で『主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)』が重視され、児童生徒同士の対話型の活動を増やし、学ぶ過程を丁寧に解説する傾向が強まったそうです。
対話型の活動。児童生徒が対話しながら学びます。その対話を促進するファシリテーターの役割を担うのが先生です。児童生徒はファシリテーターが入る対話を日常的に体験します。


会社に置き換えてみます。
対話しながらチームで協働する。問題が発生した時、問題の性質や影響範囲を分析し、課題を見つけ出し、解決への打ち手を考え、課題を解決する。その協働を促進する役割を担う人がファシリテーターです。
予測困難な時に、職場のチームで協働して、課題を解決したり、ビジネス変革を実現することに挑むためには、ファシリテーターが必須である、と私は考えています。


例えば、問題を解決しようという時に、複数部門から担当者がオンライン会議に集まり、議論する。どんな議論プロセスで問題を分析して課題を洗い出すのか、どんな論理でアプローチするのか、何々のフレームワークを使って議論を見える化するのか、等々が肝になってきます。ここに責任を持ち、協働を促進するファシリテーターが貢献できることは大きいです。

テレワークで、オンラインで協働しようとする時には、ファシリテーターの存在は必須であり、ファシリタティブなリーダーシップを持ったファシリテーターがいるとかなり円滑に進む。これは私が実体験したことです。

私は、ファシリタティブなリーダーシップを持ったファシリテーターになることをお勧めします。今後必ず重宝される能力であると考えるからです。

アクティブ・ラーニングで学んできた生徒学生たちは数年後社会に出ます。
あなたのチームの会議の仕方はどうですか?昭和時代と同じですか?何か新しいことにチャレンジしていますか?

配属後初めて参加した会議が旧態依然とした会議をしているとすると、アクティブ・ラーニングを何年も体験してきた新人には、「ざんねんな人たち」に映るかもしれません。「ヤバい会社に入っちゃったかもしれない。ここでは成長できなそう。」と思うかもしれません。

一方、配属後初めて参加した会議が今まで学校で体験した以上の会議をしているとすると、新人には「ぱねえ人たちだな」と映るかもしれしれません。「この人たちとなら、成長できそう。いい会社に入ったな。」と思ってくれたらいいですね。

3.6. チームで協働する能力

テレワークは物理的に一人で働くものですが、ネットの先には職場のチームのみんながいます。論理的にチームで協働する環境なのです。一人だけで何か意味のある成果を出すことはできません。チームでの協働が必須です。

上の節で説明したとおり、テレワークで、オンラインで協働しようとする時には、ファシリテーターの存在は必須であり、ファシリタティブなリーダーシップを持ったファシリテーターがいるとかなり円滑に進みます。

3.7. セルフアピール能力

セルフアピール能力とは、与えられた目標に対して成果を出し、それをきちんと上手にアピールできる力だ、と2章に書きました。

まず最初に、目標とその目標に到達するスケジュールをマネージャーと合意する。
次に、その目標を達成するために、具体的にどのようにアプローチするのか、ここも合意することが大切だ、と私は考えています。


もし、目標達成に対して何か問題が起きそうであれば、問題が起きる前に、報告・相談することが肝要です。
自分ひとりで抱え込むのは良くありません。アジャイルな対応が必要です。アジャイルに働くことについては、『アジャイルな働き方とは?』というコラムでわかりやすく解説しています。


そして、もし誰かの支援が必要なのであれば、誰のどんな支援が欲しいのか、マネージャーにやって欲しいことがあるのか、この辺りのことも話し合うべきです。

言い換えると、誰が何の役割を持って、その目標をスケジュールに合うように実施していくのか、ある意味自分の仕事をプロジェクトマネジメントする力が必要だと考えます。さらに言い換えると、アピールするためには、自分がやっていることを客観的に見える化することは大切で、例えばRACI(レイシー)のようなフレームワークを活用して見える化することが求められると考えます。因みに、RACIについては、『会社の会議:会議の変革:RACIを活用して実施可能なTo Doを合意しよう』というコラムで具体例を用いてわかりやすく説明していますので、ご存知ない方はご参照ください。

3.8. ITを学び直す能力

デジタル・トレーニングです。ここで大切なことは、恥ずかしがらないことです。

最初の緊急事態宣言の時、いきなりテレワークになり、Zoomなどウェブ会議ツールが使えない人も、炙り出されましたよね。使えなかったことは事実として受け止め、次どうするのか、これが大切です。トレーニングが必要です。年齢は関係ありません。

よく若い人たちはデジタルに慣れているから、というステレオタイプな言い方を見聞きします。若い人たちは、確かにスマホでSNSを楽しむことは慣れているでしょう。でも、パソコンは使い慣れていないとか、大学に入った新入生がいきなりオンライン授業になってSkypeやZoomの使い方に手こずった、などということも聞きました。つまり、使ったことのないものは、使えなくても恥ずかしくないのです。ツールとはそういうものです。

使い方をトレーニングすればいいのです。私はオンライン会議に使うITツールは、2020年から「読み書きソロバン」になった、と思っています。つまり、使えて当たり前、使えなかったら仕事にならない、そういうものです。だからトレーニングが必要。「苦手だから」などと逃げていられないと思います。「私、ペンで紙に字が書けないんです。字も読めないし、計算もできません。」こういう人が職場にいたら、どうなってしまいますか?そういう人になってはいけないのです。

テレワークでチームで協働する時には、どうしても「読み書きソロバン」であるITツールを活用することが求められます。クラウド上のホワイトボードを活用することは必須でしょうし、カンバン管理を行なうITツールも必須だ、と私は考えています。

3.9. 自分をアップデートする能力

1章では、世界経済フォーラムのレポートを参照し、新しいスキルを身につけ(reskill)その能力を向上させる(upskill)ことの必要性について書きました。

この節では、どのように新しいスキルを身につけ(reskill)その能力を向上させる(upskill)ことができるのか、私の提案を書きます。

下記の4つの日経記事を参照します。


3.9.1 やったことがないことに挑戦し学ぶ

記事12021年6月6日『「学び直し」世界が競う、出遅れる日本 所得格差が壁 チャートは語る』では、新しいスキルというか学び直すスキルとしてITをはじめとするテクノロジー系のスキルがハイライトされているように感じました。日本では、コロナ禍によりITが立ち遅れていることが国民の前に晒されました。オンライン会議にすら入ることに苦労していて、学ぼうとする姿勢が見えない人がいると見聞きしました。

この類の人たちは淘汰されてしまったでしょうか。
初めてのことを最初から上手にできないことはOKだと思います。他方、学ぼうとしない姿勢は良くありません。上の節で説明したように令和の「読み書きソロバン」は使えるようになるべきです。

3.9.2. 知識と経験の更新を続ける

記事22021年6月8日『質問と「やってみる」 働かないおじさん化しない方法』の副題は『20代から考える出世戦略』です。
記事から抜粋します。
『知識と経験の更新作業を辞めてしまう人は、あらゆる年代に存在しています。自分は今まさに成果を出している旬だから大丈夫、とおじさんを笑っているあなたが、知識と経験の更新作業をやめてしまったらどうなるでしょう。ほんの3年後に「あの人使えない」と言われてしまうリスクはとても高いのです。』

当コラムの1章で、世界経済フォーラムのレポートを参照して、下記を書きました。
『需要があるスキルというものは変わるものです。今必要とされているものと、数年先に必要とされるものは異なるということです。2025年までに、スキルギャップが顕著になるとしています。』

これは、何もコロナ禍の時に限ったことではありません。テクノロジーの変化と進歩が激しい時代が続くことが予測されていますし、スキルギャップは常に続くと考えるべきです。

これは厳しい世界でしょうか?ご自身をアップデートし続けよう、というモチベーションを持つための機会である、と私は考えます。

私は、当コラムに書いたソフトスキルを身につけ(reskill)、その能力を向上すること(upskill)を提案します。
ソフトスキルとハードスキル

ソフトスキルは土台となるスキルであると考えられます。上図はソフトスキルを茶色っぽい色にしました。土の色をイメージしています。ソフトスキルを身につけ能力を向上することは、あなたを成長させる土壌を耕し肥沃な土地にすることに例えることができる、と私は考えています。

上図で緑色のハードスキルを立てることは、肥沃な土壌にご自身の核とも言えるハードスキルという木を植えて緑の葉を生い茂らせることに例えることができる、と私は考えています。

新しいスキルを身につけ(reskill)、その能力を向上すること(upskill)を考える時に、ハードスキルだけでなく、ソフトスキルも考慮していただきたいと思います。

3.9.3. ジャパン・リスキリング・イニシアチブ(JRI)

記事32021年9月19日『マイクロソフトなど11社・団体、「学び直し」支援』は、マイクロソフトのほか、ベネッセコーポレーションや仏オープンクラスルームス、カナダ・スカイハイブなど11社が、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ(JRI)を発足させたと書いています。

各国の成功事例の紹介やリスキリング戦略のコンサルティング、戦略の立案を担う専門人材の育成などを柱とするサービスを提供するそうです。

マイクロソフトなどのサービスを仲介するほか、習得したスキルをオンライン上で認証する仕組みの構築なども計画しているそうです。JRIは今後国内企業から会員を募り、2021年内にもサービスを始め、2022年に100社以上の会員獲得をめざす、と書かれています。日本にも、新しいスキルを身につけ(reskill)、その能力を向上すること(upskill)が一般的になる時代が訪れるといいですね。

3.9.4. 会社が学び直しを後押しする時代になった

記事42021年9月21日『塩野義製薬、週休3日可能に 学び直しや副業を後押し』は、塩野義製薬の事例です。

2022年度から、希望する社員が週休3日を選べる制度を始めるそうです。研究部門や工場勤務を含め、全社員の7割にあたる約4000人が対象とし、大学院でのリスキリング(学び直し)などを想定し、同時に副業も解禁するそうです。

リスキリングを後押しするため、学びの費用を年間で最大25万円補助する社内制度の活用を促すそうです。費用の補助が出る社内制度は良いですね。

週休3日制導入と同時に、副業も解禁するそうです。おおよそ入社5~6年目以上の社員が対象で、休みの日にスタートアップで働くなど、他の職場で柔軟にヒントを得てもらう目的での施策だそうです。

会社が学び直しを後押しする時代が始まったようです。
 
 
 
さて、そろそろこのコラムを閉じたいと思います。
1章の世界経済レポートでは、コロナ禍をトリガーにして、いろいろな課題を加速して変革してしまおうという動きを感じます。
その動きを頭の片隅に置いて、あなたが今後何々のスキルを身につけ、そのスキルを研鑽し、スキルレベルを上げていくのか、個々のビジネスパーソンにとって、スキルの観点から転換点ともいうべき重要な節目を迎えているように思います。

今のまま何も変えない変わらないという選択肢もあるかもしれません。世界経済レポートが報告しているような動きになる場合、その選択肢を選んだ方は失職失業するかもしれません。

他方、新しいスキルを身につける変わるという決断をした方は、今年来年充実したビジネスライフを体験することができるかもしれません。
先を見通すことが困難な今、プランA、プランBなど、ご自身でいくつかの選択肢を持っておくことは大切なのではないか、と私は考えます。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

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小川芳夫
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