組織力強化:ソフトスキルとハードスキル:今要求されているスキルとは

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:組織力強化

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

このコラムは、コロナ禍の今、会社が重要視しているスキルと、従業員が身につけようとしているスキルについて書きます。

私は、『組織力強化:スキルマトリックスとスキルレベル:スキルについて考える』というコラムを書いています。会社が重要視しているスキルと、従業員が身につけようとしているスキルを見ていただき、チームのスキルマトリックスを作るときの参考にしていただきたい、と考えてこのコラムを書くことにしました。

参照元はLinkedInの下記2つです。


上記の記事は2020年に会社が重要視しているスキルと2020年に従業員が身につけようとしているスキルについて書かれています。2020年というと、世界的に新型コロナウイルス感染症が流行した最初の年です。ビジネスパーソンを取り巻く環境が大きく変わった年です。コロナ禍の今、会社が重要視しているスキルと、従業員が身につけようとしているスキルと言って良いと思います。なお、記事は日本だけを対象としたものではなく、世界中のビジネスパーソンを対象としたものです。

LinkedIn(リンクトイン)は、世界最大級のビジネス特化型SNSです。ご存知の方も多いのではないかと思います。
ウィキペディアによると、2018年4月現在、登録メンバーは全世界で5億4千万人を超すと言われています。日本では200万人以上が登録しているそうです。LinkedInでは、利用者がビジネス専用のプロフィールを作成し、サービスの中でビジネスのつながりを広げ、ビジネスパートナーや人材を探したり、営業先の顧客や商談先、専門家などとコンタクトを取ることができます。LinkedIn Learningというオンライン研修サービスも提供しています。

LinkedInでは特に「ソフトスキルとは?」とか「ハードスキルとは?」という記述はありません。ということは、多くのビジネスパーソンにとって、説明の必要がなくなった言葉ということだと思います。

とはいえ、よく知らない方はいらっしゃると思いますので、簡単に説明します。

ハードスキルとは、特定のタスクをするときに必要となるスキルです。例えば、ソフトウェア開発のスキル、プロジェクトマネジメントのスキル、会計のスキル、などです。

ソフトスキルとは、コミュニケーション、プレゼンテーション、ファシリテーション、リーダーシップ、チームビルディングなどの対人系のスキルです。チームで協働するときに役に立つスキルであり、チームで課題に立ち向かうことが要求されている今の時代、重要度が増しているスキルと言えます。


このコラムは次の3つの章で構成します。5分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。

ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。


1. 今、会社が重要視しているソフトスキル

この章では、LinkedInの "The Top Skills Companies Need Most in 2020—And How to Learn Them" に記載されているソフトスキルをみます。

今、会社が重要視しているということは、これらのソフトスキルが不足しているので自社の従業員が身につける必要がある、と認識しているスキルと言えると思います。

1位から5位までがリストされています。
2019年と2020年との比較と簡単な説明を付加します。

1位:創造性(Creativity):2019年と同順位

どんな役割の人でも、日常業務や課題解決に向かう時に、創造性を持ってアプローチすることが求められています。新たなアイデアを出せる人材になるよう、このスキルを研鑽することが求められています。

個として創造性を持つことも大切でしょう。
さらに、チームとして創造性を発揮できるようなチームになることが強く求められている、と私は考えます。


2位:説得(Persuasion):2019年と同順位

「なぜ」を説明できる人が求められています。同僚やステークホルダーに対して、効率よく説明し納得してもらうことができる、このスキルが求められています。

ここでも、個として説得力・納得してもらう力を持つことも大切かもしれませんが、ファシリテーターとしては、チームとしてこのスキルを発揮できるようなチームになることが強く求められている、と考えます。チーム内での説明・説得であれば、フレームワークを活用してわかりやすく議論したり、PREPを活用して簡潔に話すなど、会議のしかたを学ぶことが必要になるかもしれません。


3位:協働(Collaboration):2019年と同順位

チームとして協働し成果を出すこと、そういうチームとなることが求められています。

私としては、チームにファシリテーション・マインドを身につけていただき、ファシリテーターを活用して効果的に協働できるチームとなるようチームビルディングすることが求められている、と考えます。ファシリタティブなリーダーシップを持った人がチームにいると良いですね。そういう人を育成すべきだ、と考えます。

なお、ファシリタティブなリーダーシップに関して、『組織力強化:コロナ禍のリーダーシップ:ファシリタティブなリーダーシップとは』というコラムで分かりやすく説明しています。


4位:適応性(Adaptability):2019年と同順位

2020年ほど変化の激しい時はなかったのではないでしょうか。現実を捉えた上で、前向きな姿勢で、偏見なく冷静かつ公平な態度で、課題に立ち向かうことが求められています。

先の見通せない時代に於いては、職場のチームで課題に立ち向かう以外の選択肢は私には思いつきません。最大限アイデアを引き出し、かみ合わせ、まとめていくことのできるファシリテーターが必須です。小中高生がアクティブ・ラーニングを2020年度や2021年度から学び始めているように。

また、変化の激しい時には、アジャイルな働き方 が必要だ、と私は考えます。


5位:感情知能(Emotional Intelligence):2020年新登場

同僚、すなわちチーム内のメンバーとの関係性の構築、難しい局面での対応、こういったことをうまくできる能力が求められています。

LinkedInのサイトにはオンラインの研修へのリンクが貼られています。動画です。言語は英語ですが、キャプションを見ることが可能です。

1例として、下記のような時にどうしたら良いのか、が話されていました。
プロジェクトマネージャーとメンバーA。
メンバーAはいつも期限内に進捗報告しない。今回も遅れた。プロジェクトマネージャーはイラつき怒りを覚え、メンバーAにキツい反応をして、対決モードになってしまった。こんな場合、どうすれば良かったのか?

感情知能という表現は私にはしっくりこないので、以降エモーショナル・インテリジェンスと表記します。エモーショナル・インテリジェンスとは、このような難しい局面に対応できるスキルです。


2. 今、会社が重要視しているハードスキル

この章では、LinkedInの "The Top Skills Companies Need Most in 2020—And How to Learn Them" に記載されているハードスキルをみます。

今、会社が重要視しているということは、これらのハードスキルが不足しているので自社の従業員が身につける必要がある、と認識しているスキルと言えると思います。

1位から10位までがリストされていますので、1章と同じく、2019年と2020年との比較と簡単な説明を付加します。

1位:ブロックチェーン(Blockchain):2020年新登場

ブロックチェーンは、デジタルで記録された資産を、安全にインターネット上でやりとりするための技術です。新登場でいきなり1位ということは、このスキルを持った人がとても不足していることの証左なのでしょう。

ブロックチェーンは、例えば、複数の会社間でやりとりされる書類データについて、関係する会社すべての情報のやりとりを共通のプラットフォームに乗せて、電子化できるようになる技術です。一例は、『ブロックチェーンの商用化で見えてきた、ビジネス変革の未来像』です。


2位:クラウド・コンピューティング(Cloud Computing):2019年1位から2位へ

既存のシステムをクラウドに載せたり、クラウドを利用したりするための、技術的な基本設計ができたり、具体的な設計ができる技術者が求められています。

DX(デジタル技術を活用したビジネス変革)と深い繋がりがあります。なぜクラウドを活用するのか、攻めのビジネスの観点から何を目指すものなのか、この辺りを経営層が明確に理解することが前提になる、と考えます。


3位:分析的推論(Analytical Reasoning):2019年と同順位

データはビジネスの基盤となりました。企業は自社が持つデータを分析して、洞察し、ビジネス上の意思決定につながるような見識を見出せる人材を必要としています。


4位:人工知能(Artificial Intelligence):2019年2位から4位へ

AIです。機械学習、ディープラーニング、自然言語処理(人の話を理解して何かの対応をすること)など、活用事例が出始めています。


5位:製品の使い勝手を良くする設計(UX Design):2019年と同順位

「製品の使い勝手を良くする設計」は私の訳です。
スマホのアプリや家電製品など、利用者が使いやすいように設計するスキルです。製品内部での動作よりも、利用者とのやりとりに焦点を当てて、使いやすいように設計するスキルが求められています。
今までは使い勝手が悪い製品が多かったということの証左かもしれません。


6位:ビジネス分析(Business Analysis):2019年16位から6位へ

私の解釈は、ビジネス変革するために、ビジネス分析できるビジネスの専門家が求められている、ということだと思います。ビジネス変革の必要性が増しているということを言っているのでしょう。

一方、ビジネス分析の経験のある業務の専門家は少ないのではないでしょうか。

ファシリテーターとしては、『各専門家を集めたワークショップ:ファシリテーターの役割を考察する』に書いたように、各専門家を集め、ビジネス分析するワークショップを開催することを提案します。

数回のワークショップを体験することで、ビジネス分析とはどういうものなのか、理解することができます。そして、ビジネスを分析し、ビジネス変革につなげることを実体験することができます。



7位:アフィリエイト・マーケティング(Affiliate Marketing):2020年新登場

アフィリエイト・マーケティングは新しい広告手法です。ブログやSNS、ウェブサイトなどを通じて商品やサービスを紹介し、自分のサイトから紐付けられた固有のリンクから購入が発生するたびに手数料を得ることができる、というものです。


8位:営業(Sales):2019年と同順位

営業チームを効果的に管理する能力。営業プロセスを理解し、職能上の枠を超えた部門間の協働を実現し、ビジネスに貢献する能力です。


9位:科学的コンピューティング(Scientific Computing):2019年12位から9位へ

現状、科学的コンピューティングのスキルを持っている人は、データ・サイエンスの専門家、エンジニア、ソフトウェア設計者などでしょう。より多くの科学的コンピューティングのスキルを持っている人が必要とされています。

例えば、機械学習のモデルを開発できる人。ビッグデータを統計的に分析できる人。プログラミング言語の観点では、PythonやMATLABなどを使って、そういうことができる人が必要とされています。


10位:動画作成(Video Production):2019年7位から10位へ

動画の需要は強いものがあります。Cisco社の見積もりによると、2022年には世界中のインタネットを流れる情報の内の82%を動画が占めるそうです。


3. 今、従業員が身につけようとしているスキル

この章では、LinkedInの "The 20 Most Popular LinkedIn Learning Courses of the Year" を参照して、2020年従業員が身につけようとしているスキルをリストし、簡単な説明を付加します。

なお、上記のLinkedInのサイトには、下にリストするスキルの研修の紹介動画へのリンクが貼られています。(言語は英語ですがキャプションを表示することができます)

1位:在宅勤務における時間管理(Time Management: Working from Home)

これが1位になっているのは頷けますね。在宅で仕事とプライベートの時間のバランスをとることの大切さを痛感した方は多いのではないかと思います。


2位:戦略的思考法(Strategic Thinking)

戦略的思考法は、経営レベルの課題に対して意思決定を行うための思考法です。

ビジネス課題を解決するという目標を達成するためにどうアプローチするのか。
私としては、経営レベルの課題を議論するワークショップに、ファシリテーターを入れていただきたいと考えます。ファシリテーターは、中立な立場で、議論のプロセスを管理し、チームワークを引き出し、成果が最大となるように支援します。



3位:テレワークの基礎(Remote Work Foundations)

クラウド上のツールを使って、チームで協働する働き方の基礎を学ぶ研修だそうです。ツールだけでなく、チーム内の信頼関係を構築することにも触れているようです。

私は、『コロナ禍のテレワークとは:リモートで働くことを考察する』というコラムで書いたとおり、チームで働きやすいテレワークのルールを作ることが大切だと考えます。


4位:プログラミング言語Pythonを学ぶ(Learning Python)

Python(パイソン)とは、ディープラーニングなどAI系のプログラムを作る時に使われるプログラミング言語です。


5位:エモーショナル・インテリジェンス(感情知能)開発(Developing Your Emotional Intelligence)

1章のソフトスキルで登場したエモーショナル・インテリジェンスです。


6位:エクセル2016(Excel 2016 Essential Training)

マイクロソフトのエクセルの研修です。レベルとしては、ピボット表や、IF、 VLOOKUP、COUNTIFなど良く使われる関数についても説明しているようです。また、データ分析やマクロを活用した自動化についても説明しているようです。


7位:エクセル Microsoft365(Excel Essential Training (Office 365))

特に説明を加える必要はないと思います。


8位:信頼されるコミュニケーション(Communicating with Confidence)

会議など人前でプレゼンしたり説明することが苦手な人っていますよね。そういう人に向けた研修のようです。

私としては、『参加者にコミュ力は必要なのか:会議に必要な能力を考察する』というコラムで書いた「会議に必要な能力」を身につけることが大切だと考えます。また、プレゼンであれば、プレゼン資料を作成する文書作成能力とプレゼンテーション能力も大切です。


9位:Cert Prep: Project Management Professional (PMP)

プロジェクトマネージャーのPMPの受験対策のようです。


10位:プロジェクト管理の基礎(Project Management Foundations)

プロジェクト管理の基礎を身につけることは、多くのビジネスパーソンに求められていることだ、と私は考えています。


11位:批判的思考法(Critical Thinking)

日本語で「批判的」と訳すと、物事を批判的に見るのか、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんね。実は批判的思考法は、ネガティブにアプローチするものではありません。多面的に、建設的に物事を考えようという思考法です。この意味から、多面的思考法とか複眼的思考法という日本語の方が、私にはしっくりきます。


12位:パーソナルブランディングを学ぶ(Learning Personal Branding)

私のような個人事業主でも、会社に勤めるビジネスパーソンでも、「〇〇のことならあの人に」と思ってもらえることの価値を感じる局面は多くあると思います。そのように、誰でもいいのではなく、「あなた」が選択されるように、自分自身をブランド化していくことが、パーソナルブランディングです。


13位:対人コミュニケーション(Interpersonal Communication)

この辺りは、どの国のビジネスパーソンもお悩みのことなのかもしれません。

エモーショナル・インテリジェンスも必要でしょうし、『従業員体験を向上させるファシリテーション:会議に活かす交流分析』『従業員体験を向上させるファシリテーション:会議に活かす性格分類 』などを理解していることも必要かもしれません。丸腰で臨むのはNGです。

また、『会議の変革:今ファシリテーターが注目されている理由を考察する』 で書いているローコンテクストなコミュニケーションはビジネスシーンでは必須だろうと私は考えます。


14位:コミュニケーションの基礎(Communication Foundations)

対面のコミュニケーションだけでなく、メールでの伝え方、プレゼンでの伝え方、などメッセージの伝え方を説明している研修らしいです。


15位:きくスキルを磨く(Improving Your Listening Skills)

「きく」には、聞く、傾聴して聴く、たずねる訊くがあります。この研修は、きくスキルを磨く内容のようです。


16位:マイクロソフトのTeamsの重要なトレーニング(Microsoft Teams Essential Training)

マイクロソフトのTeamsの研修です。


17位:時間管理の基礎(Time Management Fundamentals)

1位も時間管理がテーマでした。もっとうまく時間を管理できるようになりたい、と思っているビジネスパーソンが多いようです。


18位:プログラミング言語Pythonの重要なトレーニング(Python Essential Training)

4位で登場したプログラミング言語Pythonのトレーニンングの研修です。


19位:エクセルのヒントとコツ(Excel: Tips and Tricks)

マイクロソフトのエクセルの研修です。


20位:オンライン・マーケティングの基礎(Online Marketing Foundations)

会社のビジネスを効率的にオンライン化する基礎研修のようです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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小川芳夫
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小川芳夫(ファシリテーター)

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ファシリテーションを核とするソフトスキルを活用して、ビジネス変革の実現を伴走型でお手伝いします。組織の中にファシリテーターを育て、自律的に変革が実現できるようになるまで伴走型でお手伝いします。

小川芳夫プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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