組織力強化:ティール組織など自律・分散・協調型の組織:ソフトスキルの必要性を考える
このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象として書いています。
コロナ禍が続き、複数の感染の波が押し寄せています。不安や孤独を感じるビジネスパーソンがいらっしゃいます。
このコラムでは、ビジネスパーソンの方々のメンタルヘルスに影響を与えること、それに対する現実的な打ち手について、ファシリテーターの観点から考えます。
私は心理学を学んだことはありませんし、カウンセラーでもありませんし、ドクターでもありません。そうしたメンタルヘルスの専門家にお世話になる状況にならないように、「予防策として職場のチームには何かできる事があるはずである」という立場でファシリテーターとして考えてみよう、という試みです。
このコラムは次の3つの章で構成します。15分程度で読める内容です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。
ファシリテーション。Facilitation という名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。
1. 情報源から読み解くキーポイント
この章では、冒頭にリストした下の2つの情報源から、キーポイントを抽出します。
- 2020年8月にIBM Institute Business Value が出した "COVID-19 Consumer Survey"
- 2022年3月31日に厚生労働省が出した『「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスとその影響に関する調査」の結果等について』
1.1 IBM Institute Business Value の "COVID-19 Consumer Survey"のキーポイント
IBMのInstitute for Business Value(IBV)のレポートから、私がキーポイントだと思うものを抜粋しましょう。
"COVID-19 Consumer Survey" はどのような調査なのか
2020年8月に IBM の Institute for Business Value(IBV)がいくつかの国の消費者に COVID-19 に関するサーベイを実施しました。具体的には下記の観点からのサーベイです。
- 経済と個人への影響
- 仕事
- 消費者としての観点
- 移動(電車やクルマでの移動など)
- 都市での生活
- 教育
- その他(オンラインショッピングなどコロナ流行後の生活変化)
サーベイは下記の国の大人に対して実施されました。(計 n=14,739)
- アメリカ n=2,531
- メキシコ n=1,520
- ブラジル n=1,516
- ドイツ n=1,043
- イギリス n=1,043
- スペイン n=2,045
- インド n=3,042
- 中国 n=2,000
アメリカ
- リモートワークを少なくとも時折は続けたいと答えた割合は、7月の時点で80%以上だったが、8月には67%まで低下した。
- 主にリモートで働きたいと答えた回答者はわずか50%だったという(7月から15ポイント減)。
- 28%が完全なリモートワークの継続を希望している。
- 22%はリモートワークを続けつつ、職場を時折訪れたいと答えた。
- 17%は職場に復帰して、リモートワークの機会を時折与えてほしいと答えた。
- 14%は完全に職場に復帰したいと答えた。
今後労働環境の選択に影響を及ぼす要因
- 最も多かったのはメンタルヘルスだった(回答者の29%)。
- 完全に職場に復帰したいと述べた回答者は最も重要な要因として、メンタルヘルス、人間的な触れ合いへの欲求、生産性向上の必要性を挙げた。
すべての国でのミレニアル世代(25歳~39歳)の特徴
- COVID-19の影響を最も強く感じている。
- 69%は自分の雇用の先行きを懸念している。
- 60%はパンデミックがメンタルヘルスに影響を及ぼしていると回答した。
- この割合は、ほかのどの年齢グループよりも大きい。
企業と個人との新しい生活様式における信頼と透明性
- 信頼と透明性は重要である。
- 米国人の半数以上(52%)は、パンデミック下でも雇用主を信頼していると回答した。
- その一方で、従業員が安心して職場に戻れるようにするための対策への期待も依然として高かった。
個人は自分のスキル開発に投資している
- 米国人の32%は、COVID-19のパンデミックが原因で、より多くのオンライントレーニングや教育を受けるようになったと回答した。
IBM のシニア・マネージング・パートナー Jesus Mantas 氏のまとめ
- われわれのデータを見ると、パンデミックによって引き起こされた不確実性の高い状況に直面する中で、多くの個人は雇用主に対して、より大きな透明性と柔軟性を求めていることが分かる。
- 組織は、従業員や顧客との信頼関係の構築、そして、彼らが今いる場所でニーズに対応できるソリューションを提供する俊敏性に焦点を当てる必要がある。
IBM のまとめ
企業は従業員との信頼関係を育み、俊敏性を構築して、従業員が今いる場所で従業員のニーズに対応できるオプションを提供し、顧客向けにパーソナライズされたデジタル体験を提供する必要がある。
1.2 厚生労働省が出した『「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスとその影響に関する調査」の結果等について』のキーポイント
『「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスとその影響に関する調査」の結果等について』から、私がキーポイントだと思うものを抜粋しましょう。
『「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスとその影響に関する調査」の結果等について』はどのような調査なのか
新型コロナウイルス感染症の拡大及びこれに伴う行動制限等の対策により、感染に対する不安や行動変容に伴うストレスなど、国民の心理面に影響が生じている可能性があることから、こうした心理面への影響を把握することを目的に実施した調査です。
- 調査期間:2021年11月19日~11月29日
- 調査方法:インターネットによる調査
- 調査対象:一般の方々(15歳以上)(前回調査(2020年度)と同じ人が対象)
- 回収サンプル:8,322件
2021年4~9月までは、半数程度の人が何らかの不安等を感じていたが、感染者数が減少した10月~11月においては3割未満に減少した
コロナ禍が続き、複数の感染の波が押し寄せています。感染の波が押し寄せているときは不安を感じ、波が穏やかになると不安が和らぐようです。
不安の対象としては、いずれの時期も「自分や家族の感染への不安」が最も多かった
不安が多かったものは下記の3つだそうです。
- 自分や家族の感染
- 自分や家族の仕事や収入
- 自粛等による生活の変化
困ったこと・ストレスに感じたこと
2020年の調査と2021年の調査とで、どのように変化したのかというデータもついています。
パーセントの変化がない項目は2021年に新出のものと思われます。
- 生活に関すること:旅行やレジャーができないこと(53.4%→47.2%)
- 生活に関すること:新型コロナウイルスの流行(コロナ禍)がいつ終わるかわからないこと(43.0%)
- 感染や感染症の情報に関すること:自分や家族が感染するかもしれないこと(75.5%→58.4%)
- 医療・福祉、仕事に関すること:医療機関を受診しづらいなど医療サービスを受けづらくなったこと(43.1%→35.0%)
- 家族などに関すること:家族・親戚・友人などに会えないこと(47.9%→34.4%)
不安やストレスの解消方法は、手洗いやマスク着用等の予防行動が最も多かった
不安やストレスの解消方法のベスト10は下記です。これらの解消方法を行った人の半数以上が、不安やストレスをうまく発散・解消できていると回答しているそうです。
- 手洗いやマスク着用等の予防行動
- スマートフォンやインターネットを使って情報を検索
- 家族や友人に話をする
- 家族や友人以外の身近な人(会社の上司や学校の先生等)に相談
- 匿名の相談窓口(電話相談やSNS相談等)に相談
- 行政の相談窓口を利用
- 医療機関などの専門家に相談
- 運動などで身体を動かす
- ゲームやテレビ、動画配信サービスなどの娯楽をする
- その他
2. ファシリタティブに対応する打ち手
この章では、ビジネスパーソンの方々のメンタルヘルスに影響を与えること、それに対する現実的な打ち手を、ファシリテーターの観点から考えます。予防策として職場のチームは何ができるのか、ファシリテーターとして考えてみたいと思います。
"COVID-19 Consumer Survey" の調査結果の、コロナ禍がメンタルヘルスに影響を及ぼしている、特にミレニアル世代が影響を受けているという点は、気になります。自己肯定感が日本よりも高いと言われている欧米のミレニアル世代がこのような状況であるということは、日本のミレニアル世代はよりメンタルヘルスに影響を受けているのかもしれません。そうだとしたら、これは喫緊の課題です。
テレワークで働いておられる方は多いと思います。オンラインは、孤独感や疎外感を感じやすいです。このことを忘れないことが大切です。ですから、自分が孤独感や疎外感を感じることを避ける(自分から危険を避ける)、チームの人が孤独感や疎外感を感じることを避ける(人が危険になることを避ける)、ということを強く意識すべきだと思います。
早く手を打たないと、カウンセラーや医師が必要な状況になってしまうかもしれません。
そうならないように職場のチームで何か手を打つことはできるのでしょうか?
それぞれの職場には、その職場なりのチーム文化や組織文化がありますよね。みんな違うのです。あなたのチームで打ち手を考えるべきだと思います。
厚生労働省の調査結果では、不安やストレスの解消方法として、『家族や友人に話をする』、
『家族や友人以外の身近な人(会社の上司や学校の先生等)に相談』がリストされていました。
相談することが有効ということなのでしょう。
ファシリテーターの観点で言うと、このような時に役立つアプローチは、ファシリタティブに対応することです。ひとりで悩んではいけません。ひとりで悩ませてはいけません。職場のチームみんなで考えましょう。みんなで打ち手を考えましょう。
ファシリタティブ(facilitative)は、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。この章の文脈で言うと、「迅速に打ち手を考えることを促進する」という意味になります。
リーダーシップとは、職場のチームで目標に向かって協働し、目標を達成することを成し遂げる力です。目標を達成するよう働きかける力とも言えます。
ファシリタティブなリーダーシップとは、ファシリテーションを中核に置きながら、チームに働きかけチームを目指す目標に到達するようリードするリーダーシップです。
この章の文脈で言うと、「職場のチームに働きかけ、迅速に有効な打ち手を打つという目標を達成する」リーダーシップといえます。
リーダーとは、役割や職責であり、具体的には主任、課長、部長などです。
リーダーシップは、リーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではなく、チームの目標を達成するために活動している従業員一人ひとりに必要な力といえます。
以下、少しずつ具体的なところに落とし込んでいきましょう。
ポイント1:ファシリテーターを入れてチーム全員で話し合う
私がお勧めしたいアプローチは、チーム全員で話し合うことです。集まって闇雲に話をするというのは、よくありません。ファシリタティブに対応する事が大切です。ファシリタティブに対応する場合、話し合いの中にファシリテーターが入ります。
ファシリテーターは、『会社の会議の進め方:場を作る:今理解すべき3つの視点』 で書いた「発言しやすい・発言が否定されない安心安全な場」を作り、議論プロセスを設計します。このコラムのテーマは、コロナで引き起こされた環境変化に影響を受けたメンタルヘルスですから、「発言しやすい・発言が否定されない安心安全な場」は特に大切です。
「発言しやすい・発言が否定されない安心安全な場」を作ることは簡単だと思いますか?
下図を見てください。(画像はタップやクリックで拡大します)会議室での対面での会議の様子です。ファシリテーターはいない、よくある会議室での会議風景です。実は、ファシリテーターがいない場合、「発言しやすい・発言が否定されない安心安全な場」を作ることは、とても難しいのです。
上図で、言葉だけがやりとりされていることに着目してください。誰も悩みや不安を聞き出していません。また聞いたことを書き出すこともしません。発言は受け止めてもらえません。あるいは、自分の発言を受け止めてもらえたことを確信することは困難です。単なるガス抜きの意味のない時間になってしまっています。
オンライン会議の場合、下図のような会議を開催していますか?(画像はタップやクリックで拡大します)
特徴は、オフィスの会議室から参加している人は、今まで通り椅子に座り喋っていることです。この形は2020年にコロナが感染拡大した直後によく見られた形だと思います。もしかすると、今もこの形の会議をしている方もいらっしゃるかもしれませんね。会議室に例えばポリー社の TRIO のような高性能なマイクを設置したとしても、会議室の大きさによっては音声を拾いきれない事があります。そもそも自宅などからのリモート参加者を配慮しない会議運営をしてしまうこともあります。例えば、会議室の人たちだけで盛り上がる。隣同士で話をしているグループが複数いて、何を話しているのかリモート参加者は聞き取りにくい。会議室の人が、「ここ」「それ」「そこ」など、リモート参加者には訳のわからない指示代名詞を使う。等々です。これをやられると、リモートからの参加者は強い孤独感や疎外感を感じます。そして、リモート参加者が無視されたような会議になってしまう場合もあります。
リモート参加したことのない方は、是非2〜3回リモート参加を体験して、どの程度孤独感や疎外感を感じるのかご自分で体験することをお勧めします。
ポイント2:安心安全な場で悩みや不安などを聴き出す
どんな悩みがあるのか、どんな不安があるのか、どんなストレスがあるのか、何に困っているのか、何でも言える安心安全な場で、発言できる環境が必要です。
リアルな会議室での発言であれば、ファシリテーターがホワイトボードやフリップチャートに書く事が大切です。自分の発言が書き留められた(自分の発言が受け入れられた)となるからです。ポストイットに自分の不安や悩みやストレスなどを書き、そのポストイットがホワイトボードに貼られるというアプローチはより良いです。自分が参加しているという当事者意識が増すからです。
下図は、ファシリテーターがいる会議室での対面の会議の様子です。(画像はタップやクリックで拡大します)
リモート参加者はいません。
ファシリテーターは、傾聴や質問を活用して、悩みや不安を具体的な事例を交えて、聞き出そうとしています。また、ファシリテーターは、ホワイトボードを使って悩みや不安を見える化しています。みんなの前に見える化することによって、「あなたの悩みや不安を受け止めましたよ」というメッセージを発しているのです。
さらに、ファシリテーターは図表などビジュアルな表現を使っていることと、参加者は全員ホワイトボードを見ていることにも着目してください。隣同士で何かを喋ったりはしません。
オンライン会議であれば、チャットに打ち込んでもらってファシリテーターがクラウド上のホワイトボードに書き込むというやり方があります。どうせ、キーボードを叩くのですから、自分でクラウド上のホワイトボードに付箋を貼り付けて悩みや不安などを打ち込むのが良いでしょう。自分が参加しているという当事者意識が増すからです。
下図は、ファシリテーターのいるオンライン会議です。(画像はタップやクリックで拡大します)
図3と同じように、ファシリテーターはクラウド上のホワイトボードを使って、悩みや不安を見える化しています。例えば、聴き出された悩みや不安などを親和図を活用して、見える化しようとしています。
着目していただきたいのは、オフィスからの参加者です。全員ひとり1台のパソコンを持ち、自宅からの参加者と同じようにクラウド上のホワイトボードを使って協働しています。会議室で4人で各自1台のパソコンで参加するということは、各自がヘッドセットを使うことを意味しています。そうしないと、ハウリング大会になってしまいますから。
ということは、会議室に集まる必要はなくて、自席から参加すれば良いということになります。会議室予約で苦労することは無くなります。ヘッドセットをつけていれば、誰かと電話で話しているような程度の音量ですみます。言い換えると、自席でヘッドセットをつけないで参加することは、周囲の迷惑になります。
なお、会議室に Surface Hub 2S のような大画面デバイスを設置してマイクロソフトのホワイトボードを使う場合や、Google の Jamboard を会議室に設置して使う場合は、オフィスにいる人は会議室から参加するでしょうから、リモート参加者のことを考慮して、孤独感や疎外感を感じさせないように会議を進める事が、とても大切になります。
ところで、悩みや不安などを聴き出していると、解決するための打ち手を語り始める人がいます。このステップでのポイントは、聴き出すことです。打ち手は後で考えるので、ここでは悩みや不安を聴き出すことに集中する事が大切なのです。文章で表現すると、当たり前のように感じる人がいるかもしれませんが、これはかなり難しい事なのです。ファシリテーターがいれば、打ち手を考えるのは後でやる事なので、この段階では悩みや不安などを聴き出すことに、みんなの意識を集中させる事ができます。
ポイント3:様々な悩みや不安をかみ合わせる
聴き出した悩みや不安などをかみ合わせます。例えば、改善活動で定番の親和図を活用してかみ合わせても良いでしょう。
リアルな会議室であれば、ホワイトボードやフリップチャートの前に立ち、ポストイットを動かしながら親和図を作っていきます。人数が多いと密になるので注意が必要ですね。
オンライン会議であれば、図4のような形でクラウド上のホワイトボードで協働する形になります。
ポイント4:かみ合わされた悩みや不安から打ち手を考える
この4つ目のポイントはとても大切です。
親和図でかみ合わせた悩みや不安を課題と捉えて、解決するための打ち手を話し合います。ここでのキーポイントは、経験者をアドバイザーとして入れることだ、と私は考えています。
例えば私のような経験者をアドバイザーとして入れることによって、打ち手を思いつくための触媒のようなものとして活用していただけるのではないかと思っているのです。ちなみに私は 『働き方:非対面で信頼を築くために:私の体験を振り返りキーポイントを考察する』 で書いたとおり長年非対面でリモートで協働するという経験をしてきた人間ですので、私が培ってきたものを還元させていただくことで貢献できるところがあると考えています。
良く伺う悩みや不安に「雑談がなくなった」があります。私は、社内で偶然ばったり会った人との雑談は絶対に必要なものだと考えている者です。これを非対面でどうするのか。Slack などをお使いであれば、雑談チャネルを立ち上げるというアプローチもあるでしょう。あるいは、zoom などで、雑談用のオンライン会議を始業時から終業時まで立ち上げておいて、誰でもいつでも自由に入って来れるようにするというアプローチもあるでしょう。給茶器に行ったり、カフェテリアに飲み物を買いに行ったりした時に偶然会うというような感じのことをオンラインの世界で模倣するような感じです。
孤立感や孤独感に対する打ち手の1つになるかもしれないアプローチは、リクリエーションを取り入れてみることです。オンラインでもできるボードゲームがありますので、ランチタイムの30分程度を使って、気分転換を兼ねて人と人との触れ合いを体験することも効果があるかもしれません。
さて、打ち手がいくつか出されたと仮定しましょう。次にやるべきことは優先順位付けです。例えば、実現可能性を横軸にして右に行くほど実現可能性が高い(右のほうが実現が簡単)。実現された時の効果を縦軸にして上に行くほど効果が大きい(上の方が悩みや不安が解消される)。こうした2軸で斬って打ち手の優先順位を考えるというやり方を私は良く使います。ちなみに、このやり方はペイオフ・マトリックスというフレームワークを活用した、打ち手の優先順位付けです。ペイオフ・マトリックスは検索すると色々な例を見る事ができます。
さて、打ち手の優先順位が決まったと仮定しましょう。次にやるべきことは、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って実施するのかを決めることです。私は RACI(レイシー)を良く使います。『会社の会議:会議の変革:RACI を活用して実施可能な To Do を合意しよう』というコラムでは RACI をわかりやすく紹介しています。
さて、ここまでお読みくださった方には、何かお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんね。逐一、単純な手法を使いながら、現状を把握し、打ち手を考え、自分たちには何が解決できるのかを、順序を追いながら進めているのです。
冒頭に書いたとおり、それぞれの職場には、その職場なりのチーム文化や組織文化があります。みんな違うのです。つまり、自分たちでしか解決できないのです。
誰も正解を知らないことに立ち向かうのです。複数のことをごちゃ混ぜにしないで、シンプルに順々に対応していく事がとても大切だと思います。
そして、実際に打ち手を実施する時には、慎重に進める事が大切だと考えます。メンタルヘルスに関係することを扱っているのですから。キーポイントは、機敏に振り返りを実施して、適宜機敏に打ち手を考えることです。誰も正解を知らないことに立ち向かっているのです。効果があると思われた打ち手が、実際やってみるとうまくいかない、なんてこともあり得ます。例えて言うなら、未舗装路を自転車で進むようなものです。石を踏んでバランスを崩すかもしれません。凸凹の道で転びそうになるかもしれません。かなり注意を払いながら進みますよね。同じような感覚です。もしパンクしたら、修理できるところまで手で押して行かなくてはならないでしょう。計画を適宜修正する必要が出るかもしれません。
このあたりこのとは、『働き方:アジャイルな働き方とは:アジャイルな働き方を導入するには』というコラムに書いてあります。
丁寧に支え合うことが大切でしょう。一人だけで頑張りすぎないこと。困っていることを相談すること。みんなの困りごとを共有できる(愚痴を言う)仮想的な場を持つこと。助言できる人は自分の体験を助言すること。助けられる人は助けてあげること。助けてもらうこと。等々、打ち手はあると思います。
3. 迅速なトレーニングの必要性
このコラムでは、コロナ禍のビジネスパーソンが影響を受ける可能性のあるメンタルヘルスについて、考えてきました。
私は、このコラムの冒頭で書いたとおり、「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え起業した者です。会議のやり方を変革して欲しいと考えています。
そのために、ファシリテーターを育成して欲しいと考えています。テレビCMではありませんが、「いつやるべきか」と問われれば「今でしょ」というのが私の考えです。メンタルヘルスが壊れてしまわないように、今自分たちで手を打つべきだからです。
ファシリテーターの必要性については、『会社の会議:会議の変革:今ファシリテーターが注目されている理由』を参考にしていただけると思います。
「非対面だと信頼を築くことはできない」と思っている方は多いかもしれませんね。私は非対面でも一度も対面であったことのない人たちとも信頼を築くことができました。非対面でも信頼は築けます。『働き方:非対面で信頼を築くために:私の体験を振り返りキーポイントを考察する』に私の体験を書いてあります。ご関心をお持ちの方は、お読みください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。