「ちょっと聞いて、頭にきた!!」その会話を検証してみた

沖本能道

沖本能道

テーマ:経営リスク対策


あなたにも、こんな会話の経験はありませんか?

「ちょっと聞いて、頭にきた!!」

こんな言葉から始まる会話を、あなたも経験したことがあるのではないでしょうか。

仕事で納得できないことがあったとき。誰かの言動に腹が立ったとき。家族や友人との間で、ちょっとした行き違いがあったとき。

誰かに話を聞いてもらいたくなり、つい口にしてしまうことがあります。

一方で、お酒の席などで、こんな会話を耳にしたことはありませんか。

「あの事件、何か知ってる ??」

そんな問いかけから始まり、何が起きたのか、なぜそうなったのか、そして自分はどう思うのかへと話が進んでいく。

お酒を飲む機会がなくても、仕事の連絡やルールの変更、通勤中に見聞きした出来事、買い物や食事、友人や家族とのやり取りなど、会話のきっかけは日常のいたるところにあります。

自分が当事者として話した経験だけではありません。

誰かの怒りや不満を聞いたり、ほかの人たちが話している様子を見聞きしたりした経験もあるでしょう。

少し思い返してみてください。

誰かが怒っているとき、あなたは何を聞きましたか ?

また、自分が誰かに話を聞いてもらったとき、相手はどんな言葉を返してくれたでしょうか。

今回は、そんな身近な会話を振り返りながら、人が相手の話を理解し、共感したり、意見を交わしたりする過程を考えてみます。

「頭にきた!!」から始まる会話を振り返る

例えば、友人から突然、こんな話をされたとします。

「ちょっと聞いて、頭にきた!!」

このとき、あなたは何と返すでしょうか。

「えっ、何があったの?」

おそらく、まずはそう尋ねるのではないでしょうか。

すると、友人は出来事を話し始めます。

誰が何をしたのか。どんなことを言われたのか。何が起きたのか。

話を聞いていくうちに、少しずつ背景も分かってきます。

なぜ、そんなことが起きたのか。相手はどんな状況だったのか。それまでに、どんな経緯があったのか。

そして、話を聞いたあなたは、こう返すかもしれません。

「それは腹が立つよね」

あるいは、

「うーん、でも、相手にも事情があったんじゃないかな」

同じ話を聞いても、必ずしも同じ反応になるとは限りません。

ここで注目したいのは、会話の始まりです。

友人は、出来事の説明から話し始めたわけではありません。

最初に伝えたのは、「頭にきた」という感情でした。

その後、何があったのかを尋ね、背景を知り、なぜ友人が腹を立てたのかを理解しようとする。

つまり、会話の入り口は感情であっても、話を聞くことで、その感情の理由が少しずつ見えてくるのです。

ただし、怒っているという事実だけで、その人が何を大切にしているのかまで分かるわけではありません。

何が起きたのか、どんな背景があったのか、本人は何を問題だと感じているのか。

それらを聞いて初めて、理解できることがあります。

穏やかな会話では、どんな順番で話が進むのだろう ??

では、最初から怒りや不満が表に出ていない会話では、どうでしょうか。

例えば、誰かとこんな話をしている場面です。

「あの事件、何か知ってる?」

「ニュースで見たよ。こんなことがあったらしいね」

「どうして、そんなことになったんだろうね」

「いろいろ事情があったみたいだけど……」

そして最後には、

「それは仕方がないと思う」

「いや、それはちょっと許せないな」

といった意見が出てくるかもしれません。

この会話では、まず出来事について話し、次に背景や事情を知り、最後に自分の考えや評価を伝えています。

先ほどの「頭にきた!!」から始まる会話とは、入り口が違います。

一方は感情から始まり、もう一方は出来事から始まる。

それでも、話を進めるうちに、出来事の内容だけでなく、その背景や、それを聞いた人がどう受け止めたのかという話題が出てきます。

もちろん、すべての会話がこの順番で進むわけではありません。

出来事の説明だけで終わることもあれば、背景を詳しく聞かずに意見を交わすこともあります。

大切なのは、決まった順番に当てはめることではありません。

人の話を理解しようとするとき、出来事そのものだけでなく、その背景や、話し手が何を感じ、どう受け止めたのかにも目を向けているということです。

会話を振り返ると、三つの側面が見えてくる

ここまでの会話を、もう一度振り返ってみましょう。

会話の中には、大きく分けて三つの側面がありました。

一つ目は、何が起きたのかという「状況・現象」です。

誰が何をしたのか。何が起きたのか。どんな言葉が交わされたのか。

二つ目は、なぜそうなったのかという「意味・背景」です。

どんな事情があったのか。なぜ、その出来事が起きたのか。どのような経緯があったのか。

三つ目は、その人が何を大切にし、何を求め、どう受け止めているのかという「価値・要求・動機」です。

なぜ腹が立ったのか。何が納得できなかったのか。どうなっていればよかったのか。何を守りたかったのか。

この三つは、会話を理解するうえで、それぞれ異なる意味を持っています。

例えば、「約束の時間に相手が来なかった」という出来事があったとします。

それが状況・現象です。

しかし、遅れた理由が分かれば、受け止め方が変わるかもしれません。交通機関のトラブルだったのか、連絡が行き違っていたのか。これが意味・背景にあたります。

さらに、待っていた人が何に不満を感じていたのかを考えてみます。

単に待たされたことが嫌だったのかもしれません。大切な予定を軽く扱われたと感じたのかもしれません。遅れるなら一言連絡してほしかったのかもしれません。

ここには、その人が大切にしていることや、相手に期待していたことが表れています。

同じ「遅刻」という出来事でも、その背景や受け止め方は一人ひとり異なるのです。

このように、状況・現象、意味・背景、価値・要求・動機という三つの側面から顧客の声を理解する考え方を、私たちは「三層VOC」と呼んでいます。


図 三層VOC概念図

VOCとは、Voice of Customerの略で、「顧客の声」を意味します。

三層VOCは、顧客の言葉を表面的に捉えるだけでなく、その背景や、言葉の奥にある期待まで理解しようとするための考え方です。

人は、なぜ同じ出来事に違う反応をするのだろう ??

同じ出来事を経験したり、同じ話を聞いたりしても、人によって反応が違うことがあります。

ある人は「仕方がない」と受け止め、別の人は「それは許せない」と感じる。

なぜでしょうか。

出来事について知っている情報が違うこともあるでしょう。置かれている状況や、それまでの経験が異なることもあります。

そして、何を大切にしているのか、何を期待しているのかも、人によって違います。

例えば、約束の時間に遅れた相手に対して、ある人は「事情があったのなら仕方がない」と考えるかもしれません。

一方で、別の人は「遅れることよりも、連絡がなかったことが問題だ」と感じるかもしれません。

どちらかが必ず正しく、もう一方が間違っているとは限りません。

大切にしていることや、相手に期待していたことが異なれば、同じ出来事でも受け止め方は変わります。

だからこそ、相手の反応だけを見て、その人を理解したつもりにならないことが大切です。

「怒っているから、こういう人なのだろう」

「不満を言っているのだから、これを解決すればよいのだろう」

そう決めつけてしまうと、その人が本当に伝えたかったことを見落とす可能性があります。

相手の言葉を聞き、出来事を知り、背景を確かめ、何を大切にしているのかを理解しようとする。

その積み重ねが、相手への理解を深めていくのではないでしょうか。

この会話の流れは、顧客応対や接客にも見られる

ここまで、身近な人との会話を例に考えてきました。

では、この考え方は、コールセンターなどの顧客応対ではどうでしょうか。

例えば、お客様から、

「何度も連絡しているのに、まだ解決していないんですけど !!」

と申し出があったとします。

応対者が最初に確認するのは、これまでに何があったのか、どのような問い合わせなのかという状況かもしれません。

話を聞いていくと、同じ問い合わせを何度もしていることや、前回の案内では解決しなかったことが分かるかもしれません。

さらに話を聞くと、お客様が困っているのは、単に問題が解決していないことだけではないと分かることもあります。

例えば、仕事に支障が出ている。何度も同じ説明をすることに疲れている。いつ解決するのか分からず、不安を感じている。

こうした背景や期待が分かれば、応対で確認すべきことや、説明すべきことも変わってきます。

もちろん、すべてのお客様が同じ事情を抱えているわけではありません。

怒っているからといって、必ずしも同じ対応が必要なわけでもありません。

また、すべての問い合わせで、背景や期待を細かく掘り下げればよいというものでもありません。状況を確認して必要な案内をすることで、十分にお客様の期待に応えられる場合もあります。

大切なのは、決められた手順に沿って質問を重ねることそのものではありません。

目の前のお客様が何を伝えようとしているのかを理解し、そのお客様の期待に応えるために、必要な情報を確かめることです。

身近な会話で相手の話を理解しようとすることと、顧客応対でお客様の声を理解しようとすること。

その根底には、共通するものがあるのではないでしょうか。

身近な人との会話で、三層VOCを試してみよう

ここまで読んで、思い当たる会話はあったでしょうか。

自分が腹を立てて、誰かに話を聞いてもらったとき。

友人や家族の不満を聞いたとき。

仕事で何かを伝えたり、誰かの話を聞いたりしたとき。

そんな身近な会話を、一つ思い出してみてください。

そして、少しだけ振り返ってみましょう。

  • 何が起きていたのだろう??
  • その出来事には、どんな背景があったのだろう??
  • その人は何を大切にし、何を期待していたのだろう??


すべての答えが分からなくても構いません。

むしろ、振り返ってみて初めて、「あのとき、もう少し話を聞けばよかった」「あの人は、別のことを伝えたかったのかもしれない」と気づくこともあるでしょう。

機会があれば、身近な人との会話でも試してみてください。

相手の話を急いで評価したり、すぐに解決策を伝えたりする前に、何が起きたのか、どんな背景があるのか、何を大切にしているのかに目を向けてみる。

いつもとは少し違った話の聞き方ができるかもしれません。

そして、実際に試してみて、何か気づいたことがあれば、ぜひ振り返ってみてください。

人の話を理解するということは、単に言葉の意味を知ることではないのかもしれません。

その言葉が生まれた背景を知り、その人が大切にしていることや期待していることに目を向ける。

身近な会話を通じて、そんな理解の仕方を考えてみてはいかがでしょうか。

そして、

実際に三層VOCを試してみて、どんなことに気づいたでしょうか。

よろしければ、試してみた感想を聞かせてください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

AIを活用しコールセンターの価値を高める専門家

沖本能道プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼