コールセンターで顧客の意図を汲めないのは、オペレーターの問題 ?

沖本能道

沖本能道

テーマ:経営リスク対策



「お客様の意図を汲んで対応してください」

コールセンターでは、そんな指導が行われることがあります。

  • お客様の言葉をよく聞く。
  • 質問をする。
  • 話の流れを考える。
  • 必要なことを確認する。


どれも大切なことです。

でも、ここで一つ考えてみたいことがあります。

「顧客の意図を汲む」とは、具体的に何をすることでしょうか。

そして、

それをオペレーターに、どう教えているでしょうか。

「意図を汲めない」と感じるのは、どんなとき ?


例えば、お客様から、

「この商品は返品できますか ?」

と問い合わせがあったとします。

オペレーターが返品条件を確認し、条件を説明した。

質問には答えています。

ところが、お客様は電話を終えたあとも、納得していない。

なぜでしょうか。

もしかすると、お客様が本当に知りたかったのは、

「返品できるかどうか」

だけではなかったのかもしれません。

なぜ返品したいのか。

商品について何が起きたのか。

購入したときに、どんなことを期待していたのか。

返品できれば、本当に問題は解決するのか。

こうしたことを確認して初めて、お客様が本当に困っていることが見えてくる場合があります。

ここで、

「このオペレーターは、お客様の意図を汲めない」

と考えることはできます。

でも、もう一つ考えられることがあります。

「このオペレーターは、何を確認すればよかったのでしょうか ?」

「意図を汲む」を、感覚だけで教えていないか


「もっとお客様の意図を汲んでください」

「もう少し察してください」

「お客様が本当に言いたいことを考えてください」

こうした指導は、経験豊富なSVやベテランであれば、感覚的には分かるかもしれません。

しかし、指導される側からすると、

「具体的に、何を変えればいいのか ?」

が分からないことがあります。

そこで、「意図を汲む」という仕事を、会話の中で行っていることに分解してみます。

例えば、

  • 何が起きているのかを確認する
  • なぜ問い合わせているのかを確認する
  • お客様が何に困っているのかを確認する
  • 何を期待しているのかを確認する
  • 必要な情報を追加で聞く
  • その情報によって、次に何を確認するかを選ぶ
  • お客様が納得できる解決までの流れを考える


こうして見ると、

「意図を汲む」ことは、心を読むことではありません。

会話の中で必要な情報を確認しながら、

お客様が本当に解決したいことに近づいていく仕事

と考えることができます。

では、その仕事をどう教えていますか ?


ここからが、コールセンターを運営する側にとって重要なところです。

新人オペレーターが応対していると、SVから、

「そこをもう一歩聞いてみて」

「その質問だけで終わらせないで」

「お客様が本当に困っていることを考えて」

と指導される。

こうした指導自体は、決して悪いものではありません。

むしろ、経験豊富なSVだからこそ、会話の中の重要なポイントに気づいている場合があります。

問題は、その先です。

その「もう一歩」が、会社として共有されているでしょうか。

例えば、

「このケースでは、ここを確認する」

「この答えが返ってきたら、次にここを聞く」

「この状態なら、別の可能性を考える」

といった確認ポイントや会話の進め方が整理されているでしょうか。

もし整理されていなければ、オペレーターはSVからその都度教えてもらうことになります。

すると、今度は、

誰に教わるかによって、教えられる内容が変わる

という問題も起こり得ます。

ベテランができることを、「ベテランだから」で終わらせない


経験豊富なオペレーターやSVには、長年の応対経験があります。

同じような問い合わせを何度も経験しているからこそ、

「このお客様は、まだ何かありそうだ」

「ここを聞いておいたほうがいい」

「このまま説明すると、たぶん納得されない」

と感じることがあります。

ここで、

「ベテランだからできる」

で終わらせてしまうと、その経験は本人の中に残ったままです。

一方で、

何を見ていたのか ?

何をきっかけに追加の質問をしたのか ?

なぜ、その質問を選んだのか ?

何が分かったから、次の対応に進んだのか ?

と確認していくと、ベテランの経験の中にあるものを、

  • 質問
  • 確認ポイント
  • 会話の流れ
  • 分岐
  • 選択基準


として整理できる可能性があります。

これは、単にベテランの話し方を真似することとは違います。

ベテランが会話の中で行っている仕事を、組織として扱えるようにすることです。

FAQやマニュアルを増やせば解決するのか ?


「意図を汲めない」という問題が出てくると、

「FAQを増やそう」

「マニュアルを細かくしよう」

という対応になることがあります。

もちろん、必要な情報が不足しているのであれば、FAQやマニュアルの整備は重要です。

ただし、それだけでは解決しにくい問題もあります。

なぜなら、意図を汲むために必要なのは、

答えだけではないからです。

必要なのは、

  • 何を聞くのか
  • なぜ聞くのか
  • どの順番で聞くのか
  • 何が分かったら次に進むのか
  • どの条件なら別の対応を選ぶのか


という、会話の進め方です。

つまり、

「何を答えるか」だけではなく、「どう質問し、何を確認し、どこで次の対応を選ぶのか」

まで考える必要があります。

「意図を汲めない」を、個人の問題で終わらせない


ここまで見てくると、

「意図を汲めないオペレーターを教育する」

という問題設定だけでは、少し足りないことに気づきます。

もちろん、個人のスキルを高めることは必要です。

しかし、それと同時に、

そのスキルを会社としてどう支えるのか

を見る必要があります。

例えば、

  • オペレーターに、何を確認すればよいのか具体的に教えているか
  • 質問する目的まで教育できているか
  • SVによって指導内容が変わっていないか
  • ベテランが行っている確認方法を共有できているか
  • 同じような応対上のつまずきが繰り返されていないか
  • お客様の声から、確認ポイントを更新できているか


こうしたことを確認していくと、

「意図を汲めない」という一つの問題が、教育、SV、ナレッジ、応対品質、そして顧客の声の活用までつながっている

ことが見えてきます。

自社のコールセンターでは、どうなっていますか ?


ここで、一度自社を振り返ってみてください。

「お客様の意図を汲んでください」

という指導をしているとしたら、

「では、何をすれば意図を汲んだことになるのか ?」

を、具体的に説明できるでしょうか。

さらに、

その説明は、どのSVが教えても同じでしょうか。

ベテランがいなくても、新人が同じ確認ポイントにたどり着けるでしょうか。

実際のお客様との会話から、新しい確認ポイントを見つけ、次の教育や応対に反映できているでしょうか。

もし、ここに少しでも「どうだろう?」があるなら、

「オペレーターの能力」という一つの見方だけではなく、

会社として、顧客の意図を理解するための仕事をどう設計しているのか

を見直してみる価値があります。

顧客の意図を理解する力を、会社の力に変える


顧客の意図を理解することは、オペレーター個人だけの能力ではありません。

お客様との会話の中で、

「何を確認するのか」

「どのように質問するのか」

「何が分かったら次に進むのか」

「どのような基準で対応を選ぶのか」

を整理し、それを教育し、実際の応対で使い、さらにお客様の声から更新していく。

こうした循環があれば、ベテランの経験を、少しずつ会社の力に変えていくことができます。

そして、ここまで整理すると、コールセンターで起きている「意図を汲めない」という問題は、単なる応対技術の問題ではなくなります。

顧客の声を、次の応対や会社の改善につなげるための仕組みの問題として見ることができるからです。

「意図を汲めない」を、どう解決すればいいのか ?


もし、

「SVは一生懸命教えている」

「ベテランにはできる人がいる」

「研修も実施している」

それでも、

「なかなか再現できない」

という状態なら、教育の量だけを増やす前に、

顧客の意図を理解するために、実際の応対で何を確認し、どのように会話を進めているのか

を整理してみてはいかがでしょうか。

当社では、コールセンターで蓄積される応対経験や顧客の声をもとに、

質問・確認・会話の流れ・分岐・選択基準

を整理し、教育や日々の応対、組織の学習につなげる支援を行っています。

また、必要に応じて、こうした知識を実際の応対で活用するために、AIコーチングエンジンによる支援も行っています。

AIが顧客の意図を決めるのではありません。

判断はヒト・意思決定はヒト。

人が顧客を理解し、必要な判断をするために、必要な質問や確認、会話の進め方を支援するものです。

「意図を汲めない」という問題を、オペレーター個人の能力だけで考えるべきなのか。

それとも、会社として顧客を理解するための仕事を、もっと再現できる形にできるのか。

その違いを一緒に整理するところから、ご相談いただけます。

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沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

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