パワハラ・カスハラ対策しているのに、無くならないのはなぜ

沖本能道

沖本能道

テーマ:経営リスク対策


パワハラやカスハラを防ぐために、企業ではさまざまな対策が行われています。

研修を実施する。

ロールプレイを行う。

対応マニュアルを整備する。

相談窓口を設置する。

問題が発生したときのエスカレーションルールを決める。

発生した事案を記録し、再発防止につなげる。

どれも大切な取り組みです。

それでも、同じような問題が繰り返される。

特にコールセンターでは、顧客とのやり取りの中で、オペレーターが難しい状況に置かれることがあります。

では、なぜでしょうか。

パワハラとカスハラとは


まず、パワハラとカスハラは同じものではありません。

パワーハラスメントは、職場において優越的な関係を背景とした言動によって、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、就業環境を害するものです。

カスタマーハラスメントは、顧客や取引先などからの言動のうち、要求の内容やその言動が社会通念上不相当であり、労働者の就業環境を害するものを指します。

つまり、顧客から苦情や厳しい意見を受けたからといって、それだけでカスハラになるわけではありません。

企業側には、何が通常の苦情や要求で、何がカスハラに該当するのかを適切に判断し、必要な対応を行うことが求められます。

企業は、どのようなカスハラ防止措置を行うのか


カスハラへの対応では、方針の明確化、相談体制の整備、従業員への周知や研修、発生時の対応、被害を受けた従業員への配慮、再発防止など、さまざまな取り組みが必要になります。

2026年10月からは、カスタマーハラスメント防止のための措置が事業主に義務付けられます。

そのため、企業にとってカスハラ対策は、単に「困った顧客への対応方法を教える」という問題ではありません。

組織として従業員を守るための仕組みを整えることが重要になります。

ここまでは、すでに多くの企業が取り組んでいることです。

では、ここで一度、コールセンターの仕事に戻って考えてみます。

「お客様、それはできかねますので」


例えば、こんなやり取りがあったとします。

「お客様、それはできかねますので……」

「いや、こっちは何度も電話してるんですよ」

「申し訳ございません。ただ、規定上……」

「その規定って誰が決めたんですか」

「……確認いたしますので、少々お待ちください」

オペレーターは一生懸命対応しています。

研修も受けています。

マニュアルもあります。

困ったときはSVにエスカレーションすることもできます。

それでも、顧客との関係が悪化してしまうことがあります。

そして、対応を終えたオペレーターが、

「また、あの人に当たられた……」

と感じる。

企業側から見れば、「カスハラが発生した」という出来事です。

しかし、ここで終わってしまってよいのでしょうか。

起きたときの対応だけで、本当に防止できるのか


カスハラが発生したときに、従業員を守ることは重要です。

毅然とした対応をする。

上司や管理者へエスカレーションする。

必要に応じて対応を打ち切る。

相談窓口につなぐ。

被害を受けた従業員をケアする。

そして、発生した事案を記録して再発防止につなげる。

これらは必要な対応です。

ただ、もう一歩前に戻って考えてみたいのです。

「そもそも、なぜこの状況になったのか」

ということです。

カスハラにつながる状況を、仕事の側から減らせないか


もちろん、すべてのカスハラを仕事の構造だけで防げるわけではありません。

顧客側の言動そのものに問題があるケースもあります。

だからこそ、発生したカスハラに適切に対応する仕組みは必要です。

一方で、カスハラにつながる状況を、仕事の構造の側から減らせる余地もあります。

例えば、

  • 顧客が何に困っているのかを十分に確認できているか
  • オペレーターが確認すべき情報を理解しているか
  • マニュアルに書かれていない分岐をどう判断しているか
  • 顧客への説明が、会社側の都合だけになっていないか
  • 同じ問い合わせや苦情が繰り返されていないか
  • 顧客から寄せられた情報が、コールセンターだけで止まっていないか


こうしたことです。

つまり、

「カスハラが起きたら、どう対応するか」

だけではなく、

「カスハラにつながるような状況を、仕事の中から減らせないか」

という視点です。

人を変える前に、仕事を見てみる


問題が起きると、私たちはつい「人」に目を向けます。

もっと研修しよう。

もっと対応力を高めよう。

もっとロールプレイをしよう。

もっとメンタルを強くしよう。

もちろん、人への教育は必要です。

しかし、人が適切に仕事をするための条件が整っていなければ、教育だけでは限界があります。

例えば、ベテランのオペレーターは、顧客の言葉をそのまま受け取っているわけではありません。

会話の中から、

「この質問を確認したほうがよい」

「ここを確認しないと、後で問題になる」

「このお客様が本当に困っているのは、別のところかもしれない」

と考えながら、会話を進めています。

これは、単なる経験年数ではありません。

質問の順番。

確認するポイント。

会話の分岐。

相手の状況を理解するための問い。

そして、どの情報をもとに次の対応を選ぶのか。

こうしたものが積み重なっています。

ベテランの経験や勘を、会社のナレッジにする


コールセンターでは、ベテランの経験や勘が重要な場面があります。

そこで目指したいのは、KKD(経験・勘・度胸)をなくすことではありません。

KKDが働いた瞬間を、次のナレッジ更新につなげることです。

ベテランが何を見て、何を確認し、どのように会話を進めたのか。

その経験を、質問、確認、会話の流れ、分岐、選択基準として整理する。

そうすることで、個人の経験を、組織で使える知識へ変えていくことができます。

VOCは、クレームを記録するだけのものではない


ここで重要になるのが、VOCです。

顧客から寄せられた声を、

「どんなクレームだったか」

だけで終わらせるのではありません。

何が起きていたのか。

なぜ、そのように受け止められたのか。

顧客は何を求めていたのか。

何が期待と違っていたのか。

そして、同じことが別の顧客にも起きる可能性はないか。

ここまで見ることができれば、VOCは単なる問い合わせ記録ではなく、仕事を改善するための情報になります。

コールセンターで得られた情報を、商品、サービス、業務、教育などの改善につなげる。

これができれば、発生した問題への対応だけでなく、同じ問題が起きる可能性そのものを減らしていくことができます。

AIで、人の判断を置き換えるのではない


こうした仕事の構造を変えるとき、AIを活用できる領域もあります。

ただし、AIに判断させればよいという話ではありません。

大切なのは、

判断はヒト。意思決定はヒト。

という考え方です。

AIが支援するのは、必要な確認、質問の目的、会話の流れ、次に確認すべきポイントなどです。

これまでベテランが経験の中で行ってきた会話運びを、コールセンターで使える形に整理する。

そのために当社がが開発したのが、AIコーチングエンジンです。

AIコーチングエンジンは、FAQを表示するだけのシステムでも、AIがオペレーターに代わって判断するシステムでもありません。

人が適切に仕事をするために、必要な情報や会話の進め方を支援します。

パワハラ・カスハラ対策を、人を守る仕事の仕組みまで広げる


パワハラやカスハラをなくすためには、発生した問題への対応が欠かせません。

そして、再発防止も必要です。

そのうえで、

「そもそも、同じような状況が起きないようにするにはどうすればよいか」

まで考える。

そのときに、私たちが見直すべきなのは、人だけではありません。

人が仕事をする環境。

顧客とのコミュニケーション。

商品やサービス。

コールセンターの業務。

教育。

ナレッジ。

情報の流れ。

そして、組織として問題を改善する仕組みです。

人に頑張らせるのではなく、

人が適切に仕事をできるようにする。

その結果として、人が適切に仕事を行い、企業が適切にサービスを提供し、会社として顧客期待に応える。

私たちは、コールセンターの改善をこのように考えています。

パワハラ・カスハラ対策を、コールセンターの仕事から見直したい企業様へ


もし、

  • カスハラ対策をしているのに、同じような問題が繰り返される
  • 研修やマニュアルを整備しても、対応が属人化する
  • ベテランと新人で対応品質に差がある
  • SVへのエスカレーションが多い
  • 顧客の声が、コールセンターの中だけで止まっている
  • VOCを商品やサービス、業務改善につなげたい
  • ベテランの経験や勘を組織のナレッジにしたい


このような課題があれば、一度、問題が起きた「人」だけではなく、人が仕事をする構造を一緒に見てみませんか。

パワハラ・カスハラ対策は、問題が起きたときの対応だけではありません。

人が適切に仕事をできるようにすること。

そのために、仕事の構造を見直すこと。

そこから、未然防止と再発防止の両方を考えることができます。

当社では、コールセンターを起点に、VOC、業務改善、ナレッジ構築、教育、AI活用まで、企業の課題を組織横断で整理し、改善を支援しています。

「対策しているのに、なぜ無くならないのか」

その問いから、一緒に構造を見直してみませんか。

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沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

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