コールセンターのOJTを卒業できないのはなぜ ? 独り立ちできない原因を考える

沖本能道

沖本能道

テーマ:コールセンターの課題解決

「新人研修は終わったはずなのに、なかなかOJTを卒業できない」

「一人で電話を取れるようになったはずなのに、SVへの確認が減らない」

「独り立ちさせると、想定していなかった問い合わせで止まってしまう」

コールセンターの教育担当者やSVの方なら、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

研修を実施していないわけではありません。

  • 話し方を教える。
  • 電話応対のマナーを教える。
  • 商品やサービスの知識を教える。
  • FAQやマニュアルを覚えてもらう。
  • ロールプレイも行う。


それでも、実際の電話になると、ベテランのサポートが必要になる。

なぜなのでしょうか。

もしかすると、問題は「新人が知識を覚えていないこと」だけではないのかもしれません。

この記事では、コールセンターでOJTを卒業できない、独り立ちできないという問題を、教育方法ではなく、実際の電話応対で何が起きているのかという視点から考えてみます。

コールセンターのOJTを卒業できないのはなぜ


まず、よくある状況を考えてみましょう。

新人オペレーターは、研修を受けています。

基本的な電話応対を学び、商品やサービスについて勉強し、マニュアルやFAQも確認しています。

ロールプレイも経験しています。

そして、一定の基準を満たしたところで、実際の電話を受け始めます。

ところが、電話を受け始めると、

「この場合は、どう対応すればいいですか?」

「このお客様には、何を確認すればいいですか?」

「このケースはFAQのどこを見ればいいですか?」

とSVや先輩に確認する場面が続きます。

そこで、さらにOJTを続ける。

すると、少しずつ対応できるケースは増えていきます。

しかし、しばらくすると別の問題が出てきます。

「一人で対応できるようになったと思ったら、また別のケースで止まる」

という状態です。

では、なぜなのでしょうか。

「独り立ちできない原因」は、知識不足だけなのか


独り立ちできないと聞くと、まず「知識が足りないのでは」と考えがちです。

確かに、商品知識や業務知識が不足していれば、適切な対応はできません。

だから、知識を教えることは必要です。

しかし、知識を覚えたら、すべての電話に対応できるでしょうか。

例えば、お客様から、

「先日購入した商品について聞きたいのですが.....」

と電話があったとします。

ここから先は、まだ回答できません。

何について知りたいのか。

購入した商品は何か。

どのような状況なのか。

何か問題が起きているのか。

お客様は何を求めているのか。

確認する内容によって、その後の対応は変わります。

つまり、電話応対では、

「知っている答えを言う」

だけでは足りません。

その前に、

「何を確認するのか」

を選ばなければならないのです。

コールセンターでは、これまでどんな対策をしてきたのか?


では、独り立ちできない問題に対して、企業ではどのような取り組みをしているのでしょうか。

実際のコールセンター向け研修では、さまざまな方法が提供されています。

ここでは、それらを一般的な取り組みとして整理してみます。

話し方・発声を身につける


電話では相手の表情が見えません。

そのため、声の大きさ、話す速度、滑舌、間の取り方、抑揚などが、相手にとっての聞き取りやすさや印象に影響します。

そこで、聞き取りやすい話し方や発声、声の使い方などを練習します。

これは電話応対の基本として、とても大切な要素です。

マナー・言葉遣いを身につける


電話応対には、第一声から始まり、用件の確認、保留、取り次ぎ、終話まで、基本的な流れがあります。

敬語や適切な言葉遣い、相手に不快感を与えない応対なども学びます。

これも、コールセンターで働くための基本的なスキルです。

商品・業務知識やFAQを覚える


当然ですが、商品やサービス、業務ルールについて知らなければ、問い合わせに答えることはできません。

そのため、マニュアルやFAQなどを使い、必要な知識を身につけます。

「この質問なら、この答え」

という知識を増やしていくことは、対応力を高めるうえで欠かせません。

応対の基礎を身につける


単に答えを覚えるだけではなく、

  • 相手の話を聞く
  • 用件を整理する
  • 必要なことを確認する
  • 分かりやすく伝える
  • 相手の状況に合わせる


といった基本的なコミュニケーションも学びます。

ロールプレイで練習する


実際の問い合わせを想定して、オペレーター役とお客様役に分かれて練習します。

ロールプレイを行うことで、知識として理解していることを、実際の会話の中で使う練習ができます。

さらに、講師やトレーナーからフィードバックを受け、話し方や応対の改善点を確認します。

そして、OJTを行う


研修で基本的なことを学んだ後、実際の電話を受けながら、先輩やSVがサポートします。

実際の顧客との会話は、研修で設定したケースとは違います。

だからこそ、OJTは新人が実務に適応するために重要な役割を持っています。

ここまでやっているのに、なぜ独り立ちできないのか?


ここまで読んで、

「それ、全部やっている」

と思われた方もいるかもしれません。

話し方も教えた。

マナーも教えた。

商品知識も教えた。

FAQも整備した。

ロールプレイもやった。

応対の基礎も教えた。

そしてOJTも実施している。

それでも、独り立ちするとSVへの確認が続く。

では、足りないのは、もう一つ別の研修なのでしょうか。

私は、ここで一度、視点を変える必要があると考えています。

「何を教えたか」ではなく、「実際の電話で何をしなければならないか」

を見るのです。

電話応対は「一問一答」では終わらない


例えば、

「返品したいのですが」

という電話があったとします。

返品のルールを知っていれば、それを説明すればよいのでしょうか。

実際には、そう簡単ではありません。

なぜ返品したいのか。

いつ購入したのか。

どの商品なのか。

使用状況はどうなのか。

商品に問題があるのか。

お客様が求めているのは返品なのか、それとも別の解決方法なのか。

確認した内容によって、次に聞くことが変わります。

そして、その結果によって、案内する内容も変わります。

つまり電話応対は、

質問
 ↓
確認
 ↓
回答
 ↓
次の質問
 ↓
再確認
 ↓
対応の選択

という流れで会話を進めて行きます。

顧客の言葉の奥にあるものを理解する


ここで、コールセンターで扱う情報を三つの層に分けて考えてみます。

A : 状況・現象


「商品が届いたけれど、動かない」

「返品したい」

「請求金額が違う」

など、顧客が実際に伝えている出来事です。

B : 意味・背景


なぜ、そのことが問題になっているのでしょうか。

「明日使う予定だった」

「説明と違うと感じた」

「予定していた生活に影響が出る」

など、その出来事を顧客がどう受け止めているのかを理解します。

C : 価値観・動機


さらに、

「何を守りたいのか」

「何が解決すれば納得できるのか」

「本当は何を求めているのか」

というところまで理解すると、対応の選択肢が変わることがあります。

つまり、顧客の言葉を聞いて、ただ答えるのではありません。

状況を把握し、その背景を理解し、何を求めているのかを確認する。

そこまでできて、初めて顧客理解が成立します。

デシジョンツリーとは ? 電話応対でどう使うのか


ここで「デシジョンツリー」という考え方が出てきます。

デシジョンツリーとは、

ある状況で、確認した結果によって、次にどの道へ進むのかを枝分かれさせて整理したもの

です。

例えば、

「返品したい」

という問い合わせがあった場合でも、

購入時期は ?

 ↓

「期間内」なのか「期間外」なのか。

さらに、

商品に不具合があるのか ?

 ↓

「不具合あり」なのか「不具合なし」なのか。

さらに、

お客様が希望しているのは返品なのか、交換なのか ?

というように、確認した結果によって次に進む方向が変わります。

これは、「この質問にはこの答え」という一問一答の一覧とは違います。

質問・確認 → 結果 → 次の質問・確認 → 対応

という流れを整理するものです。

電話応対では、このような分岐が連続して起きています。

ベテランは、OJTで何を教えているのか ?


ここまで考えると、OJTの意味も少し違って見えてきます。

新人が、

「この場合はどうすればいいですか ?」

と聞いたとき、ベテランは単純に答えだけを教えているでしょうか。

実際には、

「まず、そこを確認してみよう」

「その回答だったら、次はこれを聞こう」

「その言葉だけでは判断できないから、もう一つ確認した方がいい」

「このケースなら、この対応が考えられる」

というように、電話の状況に応じて、次に何をするのかを補っているのではないでしょうか。

つまり、OJTでベテランが補っているのは、単なる知識ではありません。

  • 質問すること。
  • 確認すること。
  • 会話を進めること。
  • 分岐すること。
  • 対応を選ぶこと。


こうした、実際の電話応対に必要な「会話の運び」なのです。

だから、研修を増やしてもOJTを卒業できなかったのかもしれない


ここで、最初の問題に戻ります。

話し方を教えた。

マナーも教えた。

知識も教えた。

FAQも整備した。

ロールプレイもやった。

それでも、独り立ちできない。

もしそうだとしたら、

「教えている量が足りない」のではなく、「教える対象が違っていた」

可能性があります。

もちろん、話し方もマナーも知識もFAQもロールプレイも必要です。

問題は、それらを身につけた後に、実際の電話で必要になるものが、まだ残っていることです。

それが、

「この状況なら、何を確認するのか」

「確認した結果から、次に何をするのか」

「この顧客にとって、どの対応が適切なのか」

という、電話応対の流れそのものです。

そう考えると、

「だから、今まで研修を増やしてきたのに、OJTが終わらなかったのか」

と、見えてくるものが変わってきます。

OJTをなくすのではなく、OJTで補っていたものを構造化する


ここで、私たちが考えたのが、

「ベテランがOJTで補っているものを、構造化して再現性を高められないか ??

ということでした。

OJTをなくしたいわけではありません。

実際の電話を経験しなければ身につかないこともあります。

ただ、ベテランが経験や勘で行っている、

  • 何を確認するか
  • なぜ確認するか
  • 次に何を聞くか
  • どこで分岐するか
  • どの対応を選ぶか


という部分を整理できれば、新人が実際の電話に入ったときにも、必要な確認や会話の流れを支援できます。

そして、その考え方から生まれたのが、AIコーチングエンジンです。

AIが顧客に代わって話すのではありません。

AIが判断して、オペレーターの代わりに意思決定するものでもありません。

判断はヒト、意思決定もヒト。

AIは、ベテランが持っている質問・確認・会話の流れ・分岐などを、必要な場面でリアルタイムにナビゲートします。

「独り立ち」の基準を変えてみる


「独り立ち」と聞くと、

「一人で電話を受けられる」

「SVに確認せず処理できる」

という状態を想像するかもしれません。

しかし、本当に重要なのは、

すべてを知っていること

ではないのかもしれません。

知らないことが出てきたときに、

「何を確認すればいいのか」

「何を聞けば状況を整理できるのか」

「どこを確認すれば適切な対応を選べるのか」

を自分で進められること。

そう考えると、「独り立ち」の意味そのものも変わってきます。

コールセンターのOJT・新人教育で対策をお考えなら


もし、

  • 研修を終えてもOJTが長期化している
  • 新人がなかなか独り立ちできない
  • SVへの確認が減らない
  • マニュアルやFAQを増やしても解決しない
  • ロールプレイではできるのに、実際の電話では対応できない
  • ベテランなら対応できる問い合わせを、新人が対応できない


という状況があるなら、一度「教育期間を延ばす」という発想から離れてみてもよいかもしれません。

私たちは、コールセンターで起きている問題を、個人の能力だけではなく、業務・ナレッジ・教育・組織の構造から捉え直します。

OJTでベテランが補っているものは何なのか。

どこで新人が止まっているのか。

何を確認できれば、次の対応へ進めるのか。

そこを一緒に整理し、実際の業務改善につなげていきます。

「なぜ、うちのOJTはいつまでも終わらないのだろう ?」

もし、そんな「じれったい」を感じているのであれば、一度ご相談ください。

問題を一緒に整理するところから始めます。

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沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

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