そのダイエット食品、逆効果かも?「健康そうなのに痩せない」食品の落とし穴と正しい選び方

「糖質を減らしているのに痩せない」
「運動を始めても、忙しくなると続かない」
「健康診断の血糖値が気になるけれど、何から変えればよいかわからない」
仕事、家事、子育てに追われながら体重を整えようとすると、短期間で結果が出そうな方法を選びたくなります。しかし、ダイエットは体重だけの問題ではありません。
体重の増加や内臓脂肪は2型糖尿病や高血圧と関係し、糖尿病や高血圧が長く続けば、慢性腎臓病(CKD)へつながる可能性があります。一方で、すでに糖尿病やCKDがある人が、自己流で極端な糖質制限や高たんぱく食を行うことにも注意が必要です。
今回は、よく選ばれる5つのダイエット方法を取り上げながら、うまくいかない理由と安全な見直し方を初心者向けに解説します。
■ダイエットの「成功」を体重だけで決めない
短期間で体重が減ると、ダイエットに成功したように感じます。しかし、減ったものが体脂肪とは限りません。糖質を大きく減らした直後や食事を抜いた後は、体内の水分や筋肉が減っている場合があります。
健康を守るダイエットでは、次の変化も一緒に確認することが大切です。
・血圧が安定している
・空腹時血糖やHbA1cが改善している
・筋肉や体力を保てている
・尿たんぱくやeGFRが悪化していない
・強い空腹や過食を繰り返さず、続けられる
「何kg減ったか」だけでなく、「将来の糖尿病や腎臓病のリスクを減らせているか」までを見ることが、本当の意味での体重管理です。
■見直し1 ジムに通えば痩せる、とは限らない
運動は、血糖を筋肉に取り込みやすくし、筋力や心肺機能を保つうえで役立ちます。しかし、ジムに入会しただけでは体重は変わりません。
最初から週に何度も通う計画を立てると、仕事や家族の予定が重なったときに続かなくなります。また、運動した安心感から食事量が増えると、消費した以上のエネルギーを摂ることもあります。
現在の考え方は、特別な運動だけを重視するのではなく、日常の活動を増やすことです。
・昼休みに10分歩く
・買い物では少し遠い場所に駐車する
・座り続ける時間を減らす
・週に数回、短時間の筋力トレーニングを行う
1日1万歩は、全員に必要な絶対基準ではありません。現在の歩数から少しずつ増やし、無理なく続けられる量を見つけましょう。糖尿病の治療中で低血糖の可能性がある人、CKDが進行している人、心臓病や網膜症がある人は、運動量を主治医に確認してください。
■見直し2 糖質を減らせば減らすほど良い、ではない
ごはん、パン、麺、いも類などに含まれる糖質は、体と脳が使う主要なエネルギー源です。摂りすぎを見直すことは体重や血糖の管理に役立ちますが、完全に避ければよいわけではありません。
極端な糖質制限では、便秘、頭痛、だるさ、集中力低下などが起こることがあります。また、主食を減らした分だけ肉、脂質、プロテインが増えれば、摂取エネルギーが思ったほど減らないこともあります。
まず見直したいのは、主食そのものよりも次のような「気づきにくい糖質」です。
・甘い飲料や加糖コーヒー
・菓子パン
・夕食後のお菓子
・大盛りやおかわり
・空腹のまま帰宅した後のまとめ食い
主食は適量を残し、野菜、きのこ、海藻、豆類、魚、卵、肉などを組み合わせる方が、食後血糖と満腹感を管理しやすくなります。糖尿病やCKDがある場合の適量は、薬、腎機能、活動量によって異なるため、自己判断で一律に決めないことが重要です。
■ケトン体は「悪い物質」でも「脂肪燃焼の証明」でもない
糖質が少ないとき、体は脂肪酸からケトン体をつくり、エネルギー源として利用します。これは体に備わった仕組みであり、ケトン体が検出されたからといって、直ちに危険というわけではありません。
ただし、「ケトン体が多いほど脂肪がよく燃えている」「脳はケトン体を好むので、糖質は不要」と単純に考えるのは正確ではありません。
特に注意が必要なのが、糖尿病性ケトアシドーシスです。インスリンが著しく不足するとケトン体が大量に増え、血液が酸性に傾きます。強い口渇、多尿、吐き気、腹痛、深く速い呼吸、強いだるさ、意識の異常などが現れる、緊急治療の必要な状態です。
さらに、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬を使用している人では、極端な炭水化物制限、絶食、脱水、感染症などをきっかけに、血糖値がそれほど高くなくてもケトアシドーシスが起こることがあります。
服薬中の人は、自己判断で糖質を極端に減らしたり、薬やインスリンを中断したりしないでください。吐き気、腹痛、呼吸の異常、強い倦怠感がある場合は、血糖値だけで安心せず、速やかに医療機関へ相談する必要があります。
■見直し3 食べる時間を決めれば、内容は何でもよい?
「夜8時以降は食べない」「16時間食べない」といった時間制限は、食べる機会が減ることで、結果として1日の摂取量を抑えられる人もいます。
しかし、食べられる時間にまとめ食いをしたり、必要なたんぱく質や野菜が不足したりすれば、健康的な方法とはいえません。仕事の都合で夕食が遅くなる人が、無理に夕食を抜くと、帰宅後の過食や翌日の強い空腹につながることもあります。
遅い夕食になる日は、分食という方法があります。
・夕方に小さなおにぎりや無糖ヨーグルトなどを摂る
・帰宅後は魚、豆腐、卵、野菜スープなどを中心に軽く整える
・揚げ物、菓子、飲酒をまとめて重ねない
糖尿病薬やインスリンを使用している人は、食事を抜くと低血糖を起こす場合があります。食事時間を大きく変える前に、主治医へ相談してください。
■見直し4 朝食を食べれば自動的に痩せる?
朝食を摂ることが生活リズムや栄養補給に役立つ人は多い一方、朝食を食べるだけで体脂肪が減るわけではありません。大切なのは、1日全体の量と内容、そして夜遅い食事との関係です。
朝に食欲がない場合、前夜の食事が遅い、量が多い、飲酒が多い、睡眠不足などが隠れていることがあります。無理に豪華な朝食を追加するより、夕食を少し早めて軽くする方が改善につながる場合もあります。
朝食を始めるなら、次のような軽い形からで十分です。
・ごはん少量と卵、具だくさんの汁物
・無糖ヨーグルトと果物少量
・全粒パンとチーズ、野菜
CKDでカリウム、リン、たんぱく質などの制限を指示されている場合は、一般的な「健康食品」が自分にも適するとは限りません。食材選びは医師や管理栄養士の指示を優先してください。
■見直し5 意志が弱いから続かない?
ダイエットが続かない理由を、意志の弱さだけで説明することはできません。
睡眠不足が続けば食欲を調整しにくくなります。仕事や家族のストレスが強ければ、食べることで気持ちを切り替えたくなることもあります。更年期前後には体組成や睡眠、気分の変化が重なり、以前と同じ方法では体重が動きにくく感じることもあります。
必要なのは、自分を責めることではなく、続かない仕組みを変えることです。
・空腹になる前に食べる物を決めておく
・体重は毎日の増減ではなく、週単位の傾向を見る
・睡眠時間と間食を一緒に記録する
・家族と同じ料理から、自分の量だけ調整する
・完璧にできない日があっても、次の食事で戻す
グループやアプリが励みになる人もいますが、医学的な判断が必要な場合は、SNSの体験談ではなく医師、管理栄養士、薬剤師などへ相談しましょう。
■糖尿病から慢性腎臓病、透析までの流れ
糖尿病で高血糖が続くと、全身の細い血管が傷つきます。腎臓にある糸球体というフィルターも影響を受け、最初は尿アルブミンや尿たんぱくが増え、その後にeGFRが低下していくことがあります。この糖尿病と関係する腎障害を、糖尿病関連腎臓病(DKD)と呼びます。
慢性腎臓病(CKD)は、尿たんぱくなどの腎障害、またはeGFR低下が3か月を超えて続く状態です。進行すれば、老廃物や余分な水分を十分に排出できなくなり、血液透析、腹膜透析、腎移植などの腎代替療法を検討する場合があります。
ただし、糖尿病やCKDと診断されたら、すぐに透析になるわけではありません。血糖、血圧、脂質、体重、禁煙、薬物治療などを適切に管理することで、腎機能の低下を遅らせられる可能性があります。
日本透析医学会の2024年集計では、新たに透析を始めた人のうち、原疾患が記載された3万3,881人中、糖尿病性腎症は1万2,752人でした。糖尿病を早期から管理することは、将来の腎臓を守ることにもつながります。
■腎臓を守るダイエットで確認したい検査
健康診断や通院時には、体重だけでなく次の項目を確認しましょう。
・血圧
・空腹時血糖
・HbA1c
・尿たんぱく
・糖尿病がある人の尿アルブミン
・血清クレアチニン
・eGFR
・LDLコレステロール、中性脂肪
尿たんぱくが陽性だった、eGFRが低下していた、以前より数値が急に変わった場合は、症状がなくても放置しないことが大切です。
■漢方や中医学を取り入れるときの注意
中医学では、食欲、疲労、睡眠、冷え、便通などを含めて、体全体のバランスを見ます。生活を整えるヒントとして活用できる一方、中医学の「腎」と、現代医学の臓器としての腎臓は同じ意味ではありません。
糖尿病やCKDの診断、薬の調整、透析の判断は、血液検査や尿検査に基づく医療が中心です。漢方薬や健康食品も、腎機能によって成分が体内に蓄積したり、糖尿病薬や降圧薬と相互作用したりする可能性があります。
「自然由来だから安全」とは限りません。治療中の方は、商品を購入する前に主治医と薬剤師へ相談してください。
■まとめ――流行の方法より、今の体に合う方法を
ダイエットがうまくいかないのは、努力が足りないからとは限りません。自分の生活や体の状態に合わない方法を選んでいる可能性があります。
・運動は日常の中で続けられる量から始める
・糖質は完全に抜かず、甘い飲料や間食、量を見直す
・ケトン体と危険なケトアシドーシスを混同しない
・食事時間だけでなく、内容と薬との関係も考える
・体重と一緒に血糖、血圧、尿たんぱく、eGFRを見る
これが、糖尿病と慢性腎臓病を予防しながら体重を整える基本です。
短期間で大きく減らすことより、1年後も無理なく続けられ、検査値と体調を守れることを目標にしましょう。「痩せたい」という気持ちを、将来の透析リスクを遠ざけるための健康づくりへつなげてください。
※本記事は一般的な情報を提供するもので、診断や治療に代わるものではありません。糖尿病、CKD、高血圧などで治療中の方、SGLT2阻害薬やインスリンを使用している方、妊娠・授乳中の方は、糖質制限、断食、運動、健康食品を始める前に医療専門職へご相談ください。
参考情報
・日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
・日本糖尿病学会「糖尿病合併症について」
・日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」
・日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
・日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」
・日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」


