ネフローゼ症候群に対する食事療法の基本

仕事に家事、子育て。自分の食事は後回しになり、短期間で体重を落とそうと糖質を極端に減らしたり、夕食を抜いたりしていませんか。
体重管理は、2型糖尿病や高血圧を予防し、腎臓を守るうえでも大切です。ただし、すでに腎機能が低下している人が自己流で高たんぱく食や断食を続けると、かえって体への負担になることがあります。
今回は、糖尿病と慢性腎臓病(CKD)の関係、透析治療が必要になるまでの流れ、そして腎臓を守りながら体重を整える方法を、初めての方にもわかるように解説します。
■慢性腎臓病(CKD)は、珍しい病気ではありません
CKDは「Chronic Kidney Disease」の略で、腎臓の働きが低下した状態、または尿たんぱくなどの腎障害が3か月を超えて続く病気の総称です。
日本腎臓学会による近年の推計では、国内のCKD患者は約2,000万人、成人のおよそ5人に1人とされています。以前よく使われていた「約1,300万人」という数字より増えており、誰にとっても身近な問題です。
一方、厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、「糖尿病が強く疑われる人」は約1,100万人と推計されています。糖尿病もCKDも、自覚症状が少ないまま進むことがあるため、体調だけで判断することはできません。
■腎臓は何をしているの?
腎臓は、背中側の腰より少し上に左右一つずつある臓器です。主な働きは次のとおりです。
・血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として出す
・体内の塩分、水分、カリウムなどのバランスを整える
・血圧の調節に関わる
・赤血球をつくるためのホルモンを分泌する
・骨の健康に関わるビタミンDを活性化する
腎機能が低下すると、むくみ、息切れ、貧血、だるさなどが現れることがあります。しかし、こうした症状が出る頃には病気が進んでいる場合もあります。早期発見には、健康診断の尿検査と血液検査が重要です。
■糖尿病が腎臓を傷める仕組み
血糖値が高い状態が長く続くと、全身の細い血管が傷つきます。腎臓には「糸球体」という細かな血管の集まりがあり、ここで血液をろ過しています。
高血糖や高血圧による負担が続くと、糸球体のフィルターが傷み、本来は血液中に残るはずのアルブミンやたんぱく質が尿へ漏れ始めます。その後、ろ過する力が低下していくことがあります。糖尿病が関係するこの状態を、現在は「糖尿病関連腎臓病(DKD)」と呼ぶことがあります。
つまり、
高血糖・高血圧
↓
腎臓の細い血管に負担
↓
アルブミン尿・たんぱく尿
↓
腎機能の低下
↓
進行すると腎代替療法を検討
という流れです。
ただし、糖尿病になれば必ず透析になるわけではありません。血糖、血圧、脂質、体重、喫煙などを早い段階から管理し、必要な治療を続けることで、腎機能の低下を遅らせられる可能性があります。
■健康診断で確認したい「尿たんぱく」と「eGFR」
CKDの発見で特に重要なのが、次の二つです。
1.尿たんぱく
腎臓のフィルターに傷みがあると、尿にたんぱく質が漏れることがあります。糖尿病のある人では、より早い変化を調べるために尿アルブミン検査を行うこともあります。
2.eGFR
血液中のクレアチニン、年齢、性別などから推定した「腎臓が血液をろ過する力」の目安です。一般に、eGFRが60未満の状態、または尿たんぱくなどの腎障害が3か月を超えて続くとCKDと診断されます。
一度の結果だけで決めつけるのではなく、再検査で持続しているかを確認することが大切です。尿たんぱくが陽性、eGFRが低い、以前より急に数値が下がった場合は、放置せず医療機関へ相談しましょう。
■透析治療とは?「腎臓が悪い=すぐ透析」ではありません
透析は、腎臓の働きが大きく低下し、体内の老廃物や水分を十分に排出できなくなったときに、その働きの一部を補う治療です。主に血液透析と腹膜透析があり、腎移植も腎代替療法の一つです。
透析を始めるかどうかは、eGFRの数字だけでは決まりません。むくみ、息苦しさ、食欲低下、高カリウム血症、酸性に傾く状態など、症状や検査結果、生活への影響を総合して医師が判断します。
日本透析医学会の2024年末の集計では、慢性透析患者は約32万4,000人でした。原疾患では糖尿病性腎症が約39%を占めています。だからこそ、糖尿病やCKDを早く見つけ、治療を中断しないことが大切です。
なお、透析は「自己管理に失敗した人が受ける治療」ではありません。原因や進み方には個人差があり、遺伝性疾患や炎症性疾患など生活習慣以外の原因もあります。必要になったときに命と生活を支える大切な治療です。
■痩せることは腎臓に良い?大切なのは方法です
体重が多い人では、無理のない減量が血糖や血圧を改善し、腎臓への負担を減らす助けになることがあります。しかし、「早く痩せるほど健康になる」わけではありません。
特に注意したいのが、次のような自己流ダイエットです。
・主食を完全に抜き、肉やプロテインを大量に摂る
・食事を抜いて必要なエネルギーまで不足させる
・水分を減らして体重を落とそうとする
・「デトックス」を目的に利尿作用のある食品やサプリメントを多用する
・腎機能を確認せず、市販薬や健康食品を追加する
体重が急に減っても、それが体脂肪ではなく水分や筋肉の減少ということがあります。脱水は腎臓への血流を減らし、急性腎障害を起こす原因にもなります。また、CKDがある人のたんぱく質、カリウム、リン、水分の適量は、病期や検査値によって異なります。全員が同じ制限をするものではありません。
■腎臓を守りながら体重を整える5つの基本
1.「抜く」より、食事の組み合わせを整える
主食、主菜、副菜を基本にし、甘い飲料、菓子、夜遅い大量の食事を見直します。糖質だけを悪者にせず、量と選び方を調整しましょう。
2.塩分を摂りすぎない
塩分が多い食事は血圧を上げ、腎臓に負担をかけます。麺類の汁を残す、漬物や加工食品を毎食重ねない、香辛料や酸味を使うなど、小さな工夫が役立ちます。
3.たんぱく質は「多ければ多いほど良い」ではない
筋肉維持に必要な栄養素ですが、CKDの病期によっては量の調整が必要です。プロテインや高たんぱく食を始める前に、尿たんぱくやeGFRを確認しましょう。すでにCKDがある人は、医師や管理栄養士に相談してください。
4.続けられる運動と睡眠を味方にする
歩く、階段を使う、短時間の筋力トレーニングなどを無理のない範囲で続けます。睡眠不足は食欲や血糖管理にも影響するため、体重管理は食事だけで考えないことが大切です。
5.体重だけでなく、血圧と検査値を見る
体重が減っていても、血圧、HbA1c、尿たんぱく、eGFRが悪化していれば方法の見直しが必要です。「何kg減ったか」だけでなく、「体を守りながら続けられているか」を成功の基準にしましょう。
■忙しい女性が健診結果で確認したい項目
健康診断の結果が届いたら、体重や腹囲だけでなく、次の項目も確認してください。
・血圧
・空腹時血糖
・HbA1c
・尿糖
・尿たんぱく
・血清クレアチニン
・eGFR
・LDLコレステロール、中性脂肪
月経中、発熱、激しい運動、脱水などで尿検査や腎機能の値が一時的に変わる場合もあります。自己判断で安心したり怖がったりせず、再検査や受診の指示があれば必ず確認しましょう。
■中医学は「治療の代わり」ではなく、生活を整える補助として
中医学では、腎は成長、加齢、水分代謝などに関わる働きとして捉えます。ただし、中医学の「腎」と、現代医学の臓器としての腎臓は同じ意味ではありません。
冷え、疲労、睡眠、食欲などを含めて体全体を見る考え方は、日々の養生を考えるヒントになります。一方、糖尿病やCKDの診断、薬の調整、透析の判断には、血液・尿検査と医療機関での治療が欠かせません。漢方薬や健康食品も、腎機能によっては成分が蓄積したり、処方薬と相互作用したりする可能性があります。使用前に主治医、薬剤師、漢方に詳しい専門家へ相談してください。
■まとめ――痩せることより先に、腎臓の現在地を知る
糖尿病は、腎臓の細い血管を傷つけ、CKDを進める大きな要因の一つです。しかし、早期に見つけて血糖、血圧、体重、食事、服薬を適切に管理すれば、進行を遅らせられる可能性があります。
大切なのは、極端な食事制限で短期間の数字を追うことではありません。
・健診で尿たんぱくとeGFRを確認する
・体重だけでなく血糖と血圧も見る
・高たんぱく食やサプリメントを自己判断で続けない
・異常を指摘されたら、症状がなくても受診する
この四つが、糖尿病とCKD、そして将来の透析リスクを考える第一歩です。
「痩せたい」という気持ちは、健康を見直すよいきっかけになります。腎臓を守りながら続けられる方法を選び、体重だけではなく、これからの生活を軽くするダイエットを目指しましょう。
※本記事は一般的な情報を提供するもので、診断や治療に代わるものではありません。糖尿病、CKD、高血圧の治療中の方、妊娠・授乳中の方は、食事制限や健康食品を始める前に必ず医療専門職へご相談ください。
参考情報
・厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査」
・厚生労働省 e-ヘルスネット「CKD/慢性腎臓病」
・日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」「患者さんとご家族のためのCKD療養ガイド2024」
・日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
・日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」
・日本糖尿病学会「2型糖尿病はどのように治療するのか?」


