競争力の源泉は、教育
東京都で、2025年4月から、「東京都カスタマーハラスメント条例」が全国で初めて施行される予定です。
罰則規定がない理念型の条例と言われていますが、正当なクレームとカスハラの違いや、顧客、就業者、事業者のそれぞれ果たすべき責務が定められており、カスハラは違法であるとの啓蒙・防止に繋がる事が期待されています。
航空会社でも、クレームと迷惑行為は、明確に線を引き、対応のガイドラインを定め対応してきました。
理不尽な迷惑行為への毅然とした対応は、スタッフの保護の為でもありますし、周囲のお客様にとっても、長引くクレーム、理不尽な物言いなど、これほど不快なことはありません。
また、正当なご意見やクレームについては、貴重なご意見としてしっかり分析し振り返り、同じ事が起こらないように注意喚起する、手順を見直す、教育を徹底するなど、その後のサービス向上に反映していました。
今回の条例化は、顧客や消費者への責務が盛り込まれることで、広くカスハラの抑止に繋がるのではないかと思います。
さて、カスタマーハラスメント(カスハラ)が増加した背景には、何が有るでしょうか。複数の社会的要因や技術の進展が絡んでいると言われています。
1.社会的ストレスの増加
長引く不況や、経済的格差、働き方の変化、そして新型コロナウイルスによる環境の変化の影響などでストレスが増しています。このような背景から、一部の顧客が自身のストレスや不満を従業員にぶつけることが増え、カスハラ行為が発生しやすくなっています。
2.「お客様は神様」という文化の影響
日本の接客業では、古くから「お客様は神様」という考え方があります。これが一部の顧客にとって過剰な権利意識を助長する原因になっています。顧客や消費者が自分の要求を絶対視した場合、不当な要求や理不尽なクレームが増える結果に繋がっているとされています。
欧米では、お客様とスタッフは対等で有ると考えられています。海外旅行などで、レストランやホテルでフランクな対応に驚かれた経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。海外のホテルでは、ラグジュアリーなホテルではもちろん手厚い対応がされますが、ビジネスホテルなどでは何か部屋で不具合があると、「残念ながら施設管理スタッフが出勤していないから今日は対応出来ない。」などという回答がされたりして、日本ならその場でなんとか対応しようとしてくれるのにな、と違いを感じることがあります。これは良い悪いではなくて文化の違いなのですが、インバウンドのお客様で、何度も日本を訪れる方は、この親身な日本的なサービスが心地良いと感じていらっしゃる場合も実は多いです。大切なのは、日本的な良いところは失わずに、しっかり線引きをすることですね。
3.SNSとインターネットの普及
SNSの拡大により、顧客が不満を匿名で簡単に拡散できるようになったことも、カスハラを増加させた要因です。顧客は動画や写真をSNSにアップロードして企業に圧力をかけることができ、これにより従業員や企業に対するハラスメントがエスカレートしやすくなっています。これは、企業にとっては脅威です。機内でも、CAの対応をビデオに撮ったり録音したりして公開される、ということが起きたりします。
これらの要因が相まって、深刻な状況が増加し、カスハラが単なるクレームや苦情の範囲を超えて、従業員に多大な負担をかける深刻な問題として加速度的に浮上しているのが、現状です。
まず大切なことは、いたずらにカスハラを恐れることなく、冷静に対応出来る様に、対応のガイドラインやマニュアルを職場で共有しておくことと言えます。