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新・ブランディングのチカラ 第5回『想いを翻訳する、たった一つの技術』

渡邊リシア

渡邊リシア

テーマ:ブランディングデザイン


前回、「伝わってるはず」が、事業を壊すという話をした。

「なんでみんな、この想い分かってくれないんだろう」。そう肩を落としていた、あの経営者の方のお話には、実は続きがある。

想いを、そのまま渡さない


原因は、想いが弱いことではなかった。ただ、翻訳されていなかっただけだ。

外国語の翻訳と同じで、直訳しても意味が通じないことがある。想いも同じで、ご本人の言葉をそのまま相手に渡しても、正しく届くとは限らない。

その方が繰り返し伝えていたのは、「お客さんに寄り添った接客をしてほしい」という言葉だった。何度言っても変わらなかったのは、その言葉が、ご本人の頭の中にしかない映像のまま、渡されていたからだ。

翻訳の手順は、たった3つ


やることはシンプルだった。

  • 想いを、動詞にする(「寄り添う」を「会計の時、お客さんの目を見て一言添える」という具体的な動作に直した)
  • 一番伝えたいことを、一つに絞る(あれもこれも伝えたい気持ちをこらえて、まずは一つだけに絞った)
  • 相手が体験する場面で言葉にする(朝礼で話すのをやめて、実際に接客が始まる直前に、その場でひとこと伝えるようにした)


たったこれだけで、スタッフの動きが変わり始めた。「言われた通りにやってるつもり」だったスタッフが、初めて「なるほど、こういうことか」という顔をしたそうだ。

広告やPRにも、同じことが起きる


この翻訳という作業は、社内だけの話ではない。広告やPRの言葉も、まったく同じ理由で届かなくなる。


「品質にこだわっています」ではなく、「一つの商品を、職人が3日かけて仕上げています」。
「お客様第一主義です」ではなく、「注文から24時間以内に、必ず本人の声で電話をかけています」。


抽象的な理念のままでは、広告費をかけても、誰の記憶にも残らない。具体的な一つの動作にまで翻訳された言葉だけが、外の世界で一人歩きを始める。

想いは、正しく翻訳されると、一人で歩き出す


数ヶ月後、その方からこんなご報告をいただいた。


「最近、スタッフが自分から声をかけてくれるようになったんです」


一つの動作に翻訳された想いは、スタッフの中でお手本になり、それぞれの応用を生み始めていた。誰かに指示されなくても、自分の判断で動けるようになる。それは、想いが本当の意味で「伝わった」証拠だった。

伝わらなかったのは、想いが足りなかったからではない。ただ、翻訳する一手間が、抜けていただけだった。

もし今、「伝えているのに伝わらない」と感じているなら。その想い、一緒に翻訳してみませんか。

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渡邊リシア
専門家

渡邊リシア(デザイナー)

STUDIO16 

漠然とした想いを、センスよく"見える形"に変える。実現までの流れや仕組みまで設計し、事業の成長を後押しする。名刺一枚から街づくりまで、境界を作らない。

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