世界観を意識したデザインでメディア出演
ロゴをつくって、それで終わり?
正直に告白します。「ブランディングしてください」と言われて、おしゃれなロゴと綺麗な写真だけ用意して満足していた時期が、私にもありました。
でも、ある時気づいたんです。かっこいいロゴをつくっても、それだけでは何も起きない。むしろ、額縁に入れて飾った絵と同じで、綺麗なまま、誰にも語られずに終わっていく。
デザインの仕事を10年以上やってきて分かったのは、見た目の良さは"入り口"でしかないということです。本当に大事なのは、その入り口をくぐった先で、人・もの・情報がぐるぐる回り続ける仕組みがあるかどうか。
つまり、ブランディングとは「見た目をつくる仕事」ではなく、「循環をつくる仕事」なんです。
良いブランディングは、放っておいても勝手に働く
うまく循環がデザインされている場所や商品には、共通点があります。それは、お客さまが自分から動いてくれるということ。
商品を手に取る。感動する。誰かに話す。話を聞いた人がまた買いに来る。その人がまた話す——。
これがぐるぐる回り出したら、正直、私たちデザイナーがそのあと何もしなくても、勝手にブランドが育っていきます。逆に言えば、この循環が生まれない限り、どんなに広告費をかけても、砂に水をまいているのと同じです。
私がお客さまと最初に確認するのは「デザインの好み」より先に、「これ、放っておいたら回りますか?」ということ。回る設計図が描けて初めて、色や形の話に入ります。
山梨に来て、循環の"正体"が見えた
数年前、事務所を東京から山梨県北杜市の清里に移しました。都会にいた頃は「循環」という言葉を、どこか比喩として使っていた気がします。
けれどこの土地に来て、循環は比喩でも何でもなく、目の前にある具体的な現象なんだと知りました。畑があって、農家さんがいて、食材があって、料理する人がいて、食べる人がいて、その感想がまた次の畑仕事の励みになる。この土地では、それがそのまま風景として見えるんです。
正直に言うと、これに気づいた時、少し悔しくなりました。都会でどれだけ立派な理論を語っていても、ここではもう、当たり前に回っていたから。
だったら私にできることは一つです。この土地にすでにある循環を、もっと気持ちよく、もっと外の人にも伝わる形にデザインし直すこと。
今、まさに新しい会社と、八ヶ岳での飲食店の立ち上げに取り組んでいるのは、この気づきが原点になっています。畑の恵みが料理になり、食べた人の会話や発信がまた次の来訪を呼び、使い終えたものは土に還ってまた次の恵みになる——。この「めぐる仕組み」を、一つの店の中にぎゅっと詰め込もうとしています。
デザインは、希望に手触りを与える道具
デザインの仕事をしていて一番痺れる瞬間は、綺麗な仕上がりを見た瞬間ではありません。お客さま自身が、「これなら本当にできる気がする」と、目の色を変えた瞬間です。
漠然とした「こうなりたい」という願いは、多くの場合、本人の中でもまだぼんやりしています。それに輪郭を与え、色をつけ、実際に人が動き出す仕組みにまで落とし込む。それができて初めて、希望は"絵に描いた餅"から、"明日から動かせる計画"に変わります。
ブランディングとは、つまるところ、希望に手触りを与える仕事なのだと思っています。
「売り上げを伸ばしたい」「地域にちゃんと根を張った事業にしたい」「この想いを、ちゃんと伝わる形にしたい」——そんな声があれば、ぜひ聞かせてください。見た目の先にある、勝手に回り出す仕組みまで、一緒に描いていきます。
次回第2回は「『好かれる』より『思い出される』」というテーマで、記憶に残るブランドの条件についてお話しします。


