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新・ブランディングのチカラ 第4回「伝えたつもりは、存在しないのと同じ」『伝わってるはず』が、事業を壊す

渡邊リシア

渡邊リシア

テーマ:ブランディングデザイン


「なんでみんな、この想い分かってくれないんだろう」

ある経営者の方から、こんなご相談を受けたことがある。事業への情熱は人一倍。休みも削って、誰よりも長く働いて、この事業に全部を懸けている。なのに、スタッフが思うように動いてくれない。指示したことしかやらない。辞めていく方も出てくる。

「自分の想い、ちゃんと話してるんですけどね」

その方は、そう言って肩を落としていた。

「伝わってるはず」が、事業を壊す


これは、実によくあるお話だ。というより、想いが強い方ほど、その想いが伝わらなくなるという、少し意地悪な現象がある。

けれど一番の問題は、「伝わらない」の一言では終わらない。伝えたつもりの想いは、相手にとっては、存在しないのと同じということだ。

社長の頭の中には、事業への深い想いが、確かに存在している。けれど、それが言葉にならず、行動の理由として説明されないまま日々が過ぎていくと、スタッフにとってその想いは、「知らないこと」のまま止まる。知られていない想いは、どれだけ強くても、他人の行動を変える力を持てない。

話しすぎて、逆に何も残らない


もう一つ、よくあるすれ違いがある。それは、想いが強い方ほど、伝えようとする言葉の量が多くなってしまうということだ。

創業のきっかけ、事業への哲学、大切にしている価値観、将来のビジョン。全部がご本人にとって大事なことだから、全部話したくなる。朝礼で、面談で、飲みの席で、思いつくたびに、あれもこれもと言葉を重ねていく。

けれど、聞いている側からすると、情報量が多すぎて、結局どれが一番大事なのか分からなくなる。色々詰め込みすぎて、逆に何一つ印象に残らない。これは、看板やチラシのデザインでもまったく同じことが起きる。伝えたいことを全部載せたパンフレットほど、誰の記憶にも残らない。


絞られていない言葉は、届く前に薄まって消えていく。


広告でも、まったく同じことが起きている


これはスタッフだけの話ではない。広告でも、まったく同じ構造の失敗が起きている。

「うちのサービスは、機能もいい、価格もいい、対応もいい」。伝えたい強みが多いほど、広告のコピーに全部詰め込みたくなる。けれど、見る側の頭には、結局何も残らない。広告費をかけているのに効果が出ない時、多くの場合、商品やサービスが悪いのではなく、詰め込みすぎて、何一つ記憶に刺さっていないだけということが多い。クリック数や来店数の伸び悩みを、商品力のせいにする前に、一度、言葉の絞り込みを疑ってみてほしい。

想いも、広告も、スタッフへの指示も、根っこはすべて同じだ。伝える情報が多すぎると、受け取る側は何も受け取れなくなる。

知られていないと、何が起きるか


想いが知られていないまま時間が過ぎると、現場ではこんなことが起きる。

  • 指示したことしかやらないスタッフが増える(想いの共有がないため、指示の先を自分で考えられない)
  • 想いに共感して入ったはずの方ほど、早く辞めていく(熱量が語られないため「思っていたのと違った」となる)
  • お客さまも同じ理由で離れていく(良さに気づかれないまま「なんとなく違う」で二度と戻らない)


皮肉なことに、一番想いを分かってほしかった方から離れていく。これは社内だけの話ではなく、お客さまとの関係にも、まったく同じ構造で起きている。

「言ったつもり」と「伝わった」の間にある溝


経営者の方はよくこうおっしゃる。「言ったのに」「話したのに」。

けれど、話したことと、伝わったことは、まったく別のものだ。想いを言葉にして口に出した瞬間、ご本人はもう「伝えた」という達成感を得てしまう。けれど、聞いた側の頭の中に、同じ映像が再生されていなければ、それはまだ、伝わってはいない。

想いが強い方ほど、この溝に気づきにくい。ご自身の中では、もう十分すぎるほど明確なことだからだ。

セルフチェック:その想い、本当に伝わっていますか?


以下、当てはまる項目をチェックしてみてほしい。

  • スタッフに、事業への想いを最近1ヶ月話していない
  • 想いを話す時、いつも同じ長い説明になってしまう
  • 「言ったはずなのに」と感じることが、月に一度以上ある
  • 広告や発信の中で、強みを箇条書きのように並べてしまっている
  • スタッフやお客さまに、自社の理念を一言で聞かれたら、答えに詰まる自信がある


3つ以上当てはまったら、想いはまだ、翻訳される前の状態のまま止まっているかもしれない。

知られなければ、存在しないのと同じ


どれだけ深い想いがあっても、それが相手に知られていなければ、事業においては存在しないのと同じ扱いを受けてしまう。スタッフはついてこない。お客さまは選んでくれない。広告費をかけても、思うような効果が出ない。誰も悪くないのに、誰も報われない状態が続いていく。

この「伝わらない」という壁を、どう越えるのか。次回、その具体的な方法についてお話ししたい。

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渡邊リシア
専門家

渡邊リシア(デザイナー)

STUDIO16 

漠然とした想いを、センスよく"見える形"に変える。実現までの流れや仕組みまで設計し、事業の成長を後押しする。名刺一枚から街づくりまで、境界を作らない。

渡邊リシアプロは山梨日日新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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