世界観を意識したデザインでメディア出演
「なんでみんな、この想い分かってくれないんだろう」
ある経営者の方から、こんなご相談を受けたことがある。事業への情熱は人一倍。休みも削って、誰よりも長く働いて、この事業に全部を懸けている。なのに、スタッフが思うように動いてくれない。指示したことしかやらない。辞めていく方も出てくる。
「自分の想い、ちゃんと話してるんですけどね」
その方は、そう言って肩を落としていた。
「伝わってるはず」が、事業を壊す
これは、実によくあるお話だ。というより、想いが強い方ほど、その想いが伝わらなくなるという、少し意地悪な現象がある。
けれど一番の問題は、「伝わらない」の一言では終わらない。伝えたつもりの想いは、相手にとっては、存在しないのと同じということだ。
社長の頭の中には、事業への深い想いが、確かに存在している。けれど、それが言葉にならず、行動の理由として説明されないまま日々が過ぎていくと、スタッフにとってその想いは、「知らないこと」のまま止まる。知られていない想いは、どれだけ強くても、他人の行動を変える力を持てない。
話しすぎて、逆に何も残らない
もう一つ、よくあるすれ違いがある。それは、想いが強い方ほど、伝えようとする言葉の量が多くなってしまうということだ。
創業のきっかけ、事業への哲学、大切にしている価値観、将来のビジョン。全部がご本人にとって大事なことだから、全部話したくなる。朝礼で、面談で、飲みの席で、思いつくたびに、あれもこれもと言葉を重ねていく。
けれど、聞いている側からすると、情報量が多すぎて、結局どれが一番大事なのか分からなくなる。色々詰め込みすぎて、逆に何一つ印象に残らない。これは、看板やチラシのデザインでもまったく同じことが起きる。伝えたいことを全部載せたパンフレットほど、誰の記憶にも残らない。
絞られていない言葉は、届く前に薄まって消えていく。
広告でも、まったく同じことが起きている
これはスタッフだけの話ではない。広告でも、まったく同じ構造の失敗が起きている。
「うちのサービスは、機能もいい、価格もいい、対応もいい」。伝えたい強みが多いほど、広告のコピーに全部詰め込みたくなる。けれど、見る側の頭には、結局何も残らない。広告費をかけているのに効果が出ない時、多くの場合、商品やサービスが悪いのではなく、詰め込みすぎて、何一つ記憶に刺さっていないだけということが多い。クリック数や来店数の伸び悩みを、商品力のせいにする前に、一度、言葉の絞り込みを疑ってみてほしい。
想いも、広告も、スタッフへの指示も、根っこはすべて同じだ。伝える情報が多すぎると、受け取る側は何も受け取れなくなる。
知られていないと、何が起きるか
想いが知られていないまま時間が過ぎると、現場ではこんなことが起きる。
- 指示したことしかやらないスタッフが増える(想いの共有がないため、指示の先を自分で考えられない)
- 想いに共感して入ったはずの方ほど、早く辞めていく(熱量が語られないため「思っていたのと違った」となる)
- お客さまも同じ理由で離れていく(良さに気づかれないまま「なんとなく違う」で二度と戻らない)
皮肉なことに、一番想いを分かってほしかった方から離れていく。これは社内だけの話ではなく、お客さまとの関係にも、まったく同じ構造で起きている。
「言ったつもり」と「伝わった」の間にある溝
経営者の方はよくこうおっしゃる。「言ったのに」「話したのに」。
けれど、話したことと、伝わったことは、まったく別のものだ。想いを言葉にして口に出した瞬間、ご本人はもう「伝えた」という達成感を得てしまう。けれど、聞いた側の頭の中に、同じ映像が再生されていなければ、それはまだ、伝わってはいない。
想いが強い方ほど、この溝に気づきにくい。ご自身の中では、もう十分すぎるほど明確なことだからだ。
セルフチェック:その想い、本当に伝わっていますか?
以下、当てはまる項目をチェックしてみてほしい。
- スタッフに、事業への想いを最近1ヶ月話していない
- 想いを話す時、いつも同じ長い説明になってしまう
- 「言ったはずなのに」と感じることが、月に一度以上ある
- 広告や発信の中で、強みを箇条書きのように並べてしまっている
- スタッフやお客さまに、自社の理念を一言で聞かれたら、答えに詰まる自信がある
3つ以上当てはまったら、想いはまだ、翻訳される前の状態のまま止まっているかもしれない。
知られなければ、存在しないのと同じ
どれだけ深い想いがあっても、それが相手に知られていなければ、事業においては存在しないのと同じ扱いを受けてしまう。スタッフはついてこない。お客さまは選んでくれない。広告費をかけても、思うような効果が出ない。誰も悪くないのに、誰も報われない状態が続いていく。
この「伝わらない」という壁を、どう越えるのか。次回、その具体的な方法についてお話ししたい。


