新・ブランディングのチカラ 第8回「ひとりで作らない、ブランドの育て方」

デザインや制作を依頼する立場になったとき、こんなふうに感じたことはないでしょうか。
「こんなことを言っても、いいのだろうか」
「おまかせしたほうが、楽かもしれない」
その気持ちは、とても自然です。
けれども、つくる側として、はっきりお伝えできることがあります。
クリエイターは、「きちんと頼んでくれる方」が大好きです。
今回は、依頼する側の皆さまへ。
つくる側が思わずうなずく、仕事をスムーズに進めるための「頼み方」をお話しします。
実は、同じ予算、同じクリエイターであっても、仕上がりに大きな差が出ることがあります。
その差をつくるのは、センスでも運でもありません。クリエイターと、話したかどうかです。
同じクリエイターでも、結果に大きな差が出ます
ここで、ひとつ、本当のことをお伝えします。
同じクリエイターに、同じ予算でご依頼いただいても、頼み方によって、仕上がりは大きく変わります。
目的が見えているご依頼は、つくる側が迷わず動けるため、提案も深くなります。
反対に、目的も、決める方も曖昧なままだと、確認と手探りに時間を使ってしまいます。本来であれば、その時間を「もっといいもの」のために使いたいのです。
クリエイターの力は、依頼する方が引き出すものでもあります。その差は、思っているより、ずっと大きなものです。
最初に伝えていただきたい、三つのこと
この三つで、仕事の8割が決まります。
① 目的
② 予算と期限
③ 決める人
① 目的
何のために、誰に向けて、何が変わったらうれしいか。
一文で十分です。たとえば、「新しいお店を、30代の女性に知っていただきたい」。
目的が見えると、クリエイターの手は一気に動き出します。
② 予算と期限
これは、つくる側にとって、本当に助かる情報です。
金額を言いにくいときは、幅でも構いません。「このくらいで、できることを教えてください」とお伝えいただければ、最も合う提案を選ぶことができます。
③ 決める人
最終的に決めるのは誰か。その方にも、最初から加わっていただきます。
「社長に確認してから」「ご家族に聞いてから」と、あとから出てくると、仕事は最初に戻ってしまいます。
そして、クリエイターと話してください
メールや依頼書だけで済ませず、30分で構いませんので、顔を見て、声で、お話しください。
話すことで、文字には表れなかったものが見えてきます。
- 言葉にならなかった、好みや温度
- 口には出さなかった、不安
- 本当の目的は、別のところにあったという気づき
クリエイターは、質問をしながら、それらを引き出すことを仕事にしています。
ですから、上手に話そうとする必要はありません。
- 「まだ、迷っています」と伝えて構いません
- 質問されて、「わからない」とお答えいただいて構いません
- 結論から話さなくて構いません
話し合って進めた仕事は、提案がその方の「らしさ」に近づきます。やり直しが減り、予算の中で何を優先するかも、決まります。
最初の30分が、最後の仕上がりを、最も大きく変えます。
進めている間の、ちいさなコツ
- 「いい感じに」より、「好き」と「苦手」を伝える
- 素材(写真・文章・ロゴ)は、早めに用意する
- 連絡の窓口を、ひとつにする
- 確認の返事は、期限を守る
とくに、「好き」と「苦手」は、画像が一枚あるだけで、十分に伝わります。
また、返事のないまま待つ時間は、つくる側にとって、最もつらい時間のひとつです。
「途中で、やっぱり変えます」について
ここは、少しだけ、正直にお話しします。
気持ちが変わることは、悪いことではありません。進めてみて、はじめて気づくこともあります。
つらいのは、変わること自体ではなく、決めていない状態で進んでしまうことです。
もし、変えたくなったときは、次の三つを心がけてみてください。
- できるだけ早く、伝える
- 何が、どう変わったのかを、言葉にする
- 「修正」ではなく、「追加のご相談」として話す
この三つがあれば、クリエイターは前向きに、いっしょに考えてくれます。
そして、最初の三つが決まっていれば、「やっぱり変える」は、ほとんど起こりません。
いちばん効く、ひとこと
仕上がったものをご覧になったとき、「ありがとうございます」に、ひとつだけ足してみてください。
「ここが、とても好きです」
具体的なひとことは、つくる側の心に、ずっと残ります。そして、次の仕事の力になります。
今日からできること
これから依頼しようと考えていることを、ひとつ思い浮かべてください。
そして、メモに三行、書いてみてください。
- 目的:
- 予算と期限:
- 決める人:
このメモを持って相談にいらっしゃるだけで、仕事の進み方は、きっと変わります。
次回は、少し先にお伝えしたい、新しいはじまりについてお話しします。
渡邊リシア


