新・ブランディングのチカラ 第7回「失敗したブランディングに共通すること」
「ブランドは、自分がしっかり作り込まなければ」
そう考えて、お一人で頑張っていらっしゃる経営者の方は、少なくありません。
前回までは、ブランドの中心にあるのは「物語」だとお伝えしてまいりました。実はもう一つ、大切なことがあります。
その物語は、お一人で抱えているうちは、なかなか育たないのです。
今回は、読んですぐに実践していただける具体的なワークを、3つご用意しました。
抱え込むほど、ブランドは小さくなります
真面目な方ほど、言葉もデザインも発信も、すべてご自身で決めようとなさいます。スタッフには「お願いね」と任せるだけ。お客さまの声も、聞いているつもりで、実は聞き流してしまっている。そんなことはないでしょうか。
そうなると、ブランドはその方お一人分の大きさで止まってしまいます。
頭の中にあるうちは、どんなに素敵な想いも、まだ「想い」のままです。誰かの手に渡ってはじめて、ブランドになっていきます。
ブランドは、受け取った人の中で育ちます
私は、ブランドを「作るもの」というより「育っていくもの」だと考えています。
ロゴをつくる、言葉を整える。ここまでは、作る側の仕事です。けれども、そこから先は違います。
お客さまが「あのお店、いいですよ」と誰かに話してくださる。スタッフが、ご自身の言葉で想いを伝えてくださる。お取引先が「ここなら安心」と紹介してくださる。
そうして、さまざまな方の中に入り、少しずつ形を変えながら大きくなっていくのです。第1回でお話しした「循環をデザインする」とは、まさにこのことです。
八ツ祭りで、改めて感じたこと
私自身も、改めて実感した出来事があります。第三回を迎えた「八ツ祭り」です。
お祭りがなくなった小さな地域に、自分たちが子供の頃に見たお祭りの記憶を、今の子供たちにも。この祭りの始まりは、そんなシンプルな想いでした。
けれども、その想いを主催者だけで形にしたわけではありません。ビールや屋台を出してくださる方、演舞を披露してくださる方、特別なセールを用意してくださるお店、浴衣姿で遊びに来てくださる方。それぞれの形で関わってくださり、祭りは少しずつ大きくなっています。
想いをお一人で握りしめていたら、ここまで育つことはなかったと思います。「みんなで作る」というより、「みんなが育ててくださる」。その感覚が、とても大きいのです。
ひとりで作らないための、3つのワーク
難しいことは何もありません。紙とペンがあれば、今日、15分でできます。
ワーク(1):物語を、3行で書く(5分)
次の3つを、短くて構いませんので書き出してみてください。
- 誰のために、この仕事をしているか
- なぜ、それを始めたのか
- お客さまに、どんな時間を過ごしていただきたいか
八ツ祭りであれば、「お祭りがなくなった地域の子供たちのために」「自分たちが子供の頃に見た記憶があるから」「夜空を見上げる時間を、みんなで」。これくらいの短さで十分です。長く書こうとしないことがコツです。
ワーク(2):信頼できる一人に話し、「どう受け取った?」と聞く(5分)
ご家族でも、スタッフでも、常連のお客さまでも構いません。書いた3行をそのまま読み、説明は足さずに、こうお尋ねください。
これを聞いて、どんなお店(お仕事)だと思いましたか?
返ってきた言葉を、そのままメモします。ご自身では当たり前すぎて書かなかった言葉や、思いもよらなかった言葉が、きっと混ざっています。自分の魅力は、自分が一番見えていないもの。誰かの言葉を借りて、はじめて見えてくるのです。
ワーク(3):その方に、感謝と小さな役割をお渡しする(5分)
お話を聞いてくださった方に、まず「ありがとうございます」をお伝えします。そのうえで、こう続けてみてください。
今の言葉、うちのお客さまにも伝えていただけませんか?
この部分だけ、あなたの言葉で書いてみていただけませんか?
余白を残し、役割をお渡しし、感謝をお返しする。この3つが、一度に揃います。役割を受け取った方は、そのブランドをご自身のものとして語ってくださるようになります。ブランドが「想い」から「みんなのもの」へと変わる瞬間です。
そのメモと、その方の言葉が、ブランドの種になります。一度やってみると、「お一人で作らなくていいのだ」と実感していただけるはずです。
完璧でなくて、いいのです
お一人で抱え込む方は、完璧にしたい方でもあります。
けれども、完璧に作り込まれたブランドよりも、少し隙があって「お手伝いしたい」と思わせるブランドのほうが、結局、長く愛されます。
もし今、お一人で頑張りすぎていらっしゃるなら、まずは今日のワークから。そこから、ブランドは動き出します。
その物語、一緒に育てていきましょう。
次回は、「完成させない」からこそ愛されるブランドについて、お話しします。



